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┗611.夢のうつつの(6-10/66)
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リロ
6 :
阿近
2006/11/23(木)01:48:09
俺の部屋はいつも雑多なものや汚いものや意味のないものや目を覆いたくなるようなもので溢れていて。
大抵の奴は一目見て、見なければ良かったという後悔の表情を浮かべるか、
少しは片付けろという非難の表情で俺を見るかだ。
その気持ちは解らねぇでもないし、
俺だって例えば吸殻がうず高く積み上がった灰皿なんぞは、片付けてくれる奴が居るのなら本当に頼みたい。
何しろ、崩れないよう隙間を縫って吸殻を突っ込むのには中々骨が折れるので。
それでも、そんな雑多なものの隙間で身体を丸めて瞼を閉じるのが、俺の得られる一番深い眠りだと、気付いちまったのは仕方ねぇことで。
例えば馴染みの店に行けば、良い侍従の香が薫き染められた袂を揺らして、やわらかな女という生き物が俺の寝付くまで髪を撫でてくれるのかも知れねぇが。
いつも結局俺はおんなの手を振り払ってこのがらくた塗れの部屋に戻る。
ひとの前で眠るのは得意じゃねぇ。
黒革の長椅子は俺独りが座っただけで軋む。
足許の方には書類が山積みになっているので脚は伸ばせやしねぇ。
なので、膝を抱えるように身体を折り曲げて右の肩を左手で、左の肩を右手で、きつく抱いて身体を縮める。
目の前の卓の上の蟲籠の中で、のろのろ蠢く蟲の影なんぞを眺めている内に、それなりに眠くなって来るもんだ。
そんなことを考えながら今日も少しの仮眠に。
沈没。
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7 :
阿近
2006/12/02(土)04:49:50
舌の裏がざらつくので排水溝に唾を吐いてみたら、
鈍色の流しの底に弾けて広がった唾液の中に、見覚えのある蟲の卵が山程うごめいていた。
「てめぇら、誰の許可を得て俺の口ん中に棲んでんだ。」
とまあ、それだけの夢。
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8 :
阿近
2006/12/22(金)23:02:03
雪の上を裸足で歩く夢を見て、
目が覚めると鼻も唇も指も、角の先まで冷え切っていた。
部屋に一つだけの、ささやかな暖房が湿気か霜辺りでぶち壊れたらしい。
見回ってみると、寒さに弱い蟲が何匹か籠の中で動かなくなっていた。
気に入りの蝶は、橙の羽根を畳んで腹を晒して、籠の底で脚を震わせている。
畜生。こいつの卵はもう残り少ねぇってのに。
水槽の魚はどうにか無事。意外と強ぇもんだ。
彼処の中庭の鯉も元気かどうかと、頭の隅に思い出す。
餌をよくやっていた副隊長殿が居たが、そいつも此処の所は顔を出してねぇらしい。で、もう来ねぇかも知れねぇらしい。
チーズタラ、だったか。食ってみたかったんだがな。共食いをさせるよりも俺に寄越せと言ってやりゃあ良かった。
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9 :
阿近
2006/12/24(日)02:26:26
局長の曲がった背中に声を掛けたら綺麗に無視された。
術式中はよくあることだ。この職場には、集中すると周囲の一切を知覚から排除する奴が多い。
仕方が無いので、隣の部屋に居た眼鏡女に伝言を頼もうとしたが、こいつからも返事が無かった。
作業台に喰い付くように俯いたまま、時間が止まったみてぇに小さな背中が動かねぇ。まぁ、多分俺も仕事中はこんなもんだろう。
改めて周りを見てみると、周りに居る局員の誰も、俺の方を向いている奴が居なかった。
一瞬莫迦な考えが頭を過って、自分の手を見る。
特に透けては見えねぇが、俺を今見ている奴が俺しか居ねぇなら、幽霊と同じだ。
誰かの手が空くのを待とうと、壁に凭れて座り込んで、煙草を吸い始める。
その内に眼鏡女辺りが気付いて、ヤニ臭いの何だのと文句を付け始めるだろう。
これを伝えねぇと俺の仕事が進まねぇから待つんだ、と、いつの間にか自分に言い訳をしている。
別に誰かと話したいなんて訳じゃねぇ。
覚醒。
甘ったれた夢を見せる脳に嫌悪。
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10 :
阿近
2006/12/26(火)04:01:29
池の辺に置き去りにされた紙袋の、中身の処理方法を考える。
前に貰った分は、珍しがって大事にしてる内に食い損ねた。
申し訳程度に鯉に撒いてやってから、封の開いてねぇ残りはこっそり懐に仕舞い込むことにした。
拾い食いとか言われそうだが、これは元々人間様の食いモンだ、鯉共。
チーズタラとチーカマは違うもんらしいが、取り敢えずはチーズは合っていた。似たようなもんじゃねぇのか。
食ってみての感想は、出戻った時にでも。
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