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┗611.夢のうつつの(11-15/66)

|||1-||||リロ
11 :阿近
2006/12/30(土)22:05:12

触るなと叫んでいるのは俺じゃねぇ。



夜明けの夢の中で
誰も俺に触んな畜生と吐くまで泣き喚いている
あんなものが俺である訳がねぇ。




実際の俺は随分とお安い男なので
あったけぇ手で触れられりゃ、たちまち悦くなって腹の奥が熱くなる。
少し優しくされりゃすぐに良い気分で付け上がる。

いつもそれで満足だ。
誰だっていい。
触れるななんて、我儘を言う筈もねぇ。

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12 :阿近
2006/12/31(日)08:10:50

誰かと並んで朝焼けを見ている。
いちいち横なんざ見やしねぇが、多分局長じゃねぇかと気配で思う。

煙草の煙よりも、刺すような光の方が目に染みる。
喉の奥で微かに血の味がするのは、多分此処が寒過ぎる所為だ。
朝の太陽は大嫌いだが
夜明けに吸う煙草は何故だか美味い。

「俺はこうやって、仕事の合間の一服の煙草さえ許してくれりゃ喜んで飼い馴らされるんですよ。分不相応の贅沢なんて言いませんからご安心を」

隣で空気が揺れて、其処に居る人が笑っているのだと解る。


まァ、こんなもんだ。
今も来年も何時でも、こんなもんで諾々と過ぎて行けばそれでいい。




覚醒。

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13 :阿近
2007/01/09(火)08:31:36

局の屋根にのしかかる豪雪が綺麗に溶けて、
空が晴れ渡っている夢を見た。

実際起きてみりゃ、まだ雪雲は重く垂れ込めたままらしい。
俺の部屋には窓が無ぇから、外から来る連中の恰好で大体を知る。
水気の多い雪で足元は最悪、滑るわ濡れるわで犬も喜ばねぇ天気だと、鵯州が愚痴った。

なのに眼鏡女から手渡されたのは、よりにもよって二番隊への書類。

「見なかったことにしていいか」
そろりと呟いてはみたが、返って来るのは勿論、晴れやかな笑顔での否。

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14 :阿近
2007/01/09(火)08:35:46

気付かねぇとは思うが、知りてぇなら答を。


機械蝶なら、ぶち壊れた。

鉄と電線の塊の残骸なら、今も机に放ってある。
欲しけりゃくれてやるぜ。
どうせ、もう飛ばねぇガラクタだ。

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15 :阿近
2007/01/18(木)02:09:54

手の甲に透ける血管が、矢鱈くっきりと浮かんで青々と見える。
その周り、指の峰や付け根に幾つかの紅の擦り傷が散らばって不調和極まり無い。
傷が塞がるまでは、術式の間は手袋をしないとならねぇな、と、少しうんざりする。
指先には紫と緑と黄色と茶色の色素が沈着している。
爪に染み付いた蒼色の試薬は、ケラチン質の成長と共に大分押し出されている。あと数ヶ月もしない内に、蒼色は俺の手から消えるだろう。

何故か自分の手を凝視していることに気付いて、手を引こうとする。
だが、動かない。
感覚も無い。
作業台に投げ出された自分の手を他人の気分で眺めながら、

手が動かねぇと、仕事が出来ねぇ
仕事が出来なくなるのは、怖ぇな

そう言っている割に冷静な声で呟く俺が居る。



覚醒。
右腕は身体の下敷きにしていたらしい。
痺れと共に、ものの数分で小汚ぇ手の機能は回復。

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