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┗1878.PATH(8-12/41)

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12 :山田三郎
2020/09/22(火) 19:16



探索4日目?って書くのも野暮だな、
長くなったら2ページに分けるし。っていうか長くなったから早速2ページに分けるけど途中で疲れたから続きはまた今度書くよ。そもそもアイツのとこに行かなくても通話はしてるから、探索しなくても交流してるんだよね。まぁいいか、雰囲気で。
雨が上がったから連休最終日の今日、十分な準備をして向かったんだ。アイツのところに。

今日はベースキャンプにちゃんと居たし、「道がぬかるんでいて大変だっただろう」って靴の泥を落としてくれたりアイツ特製のラベンダードリンクとやらを出してくれたり(この特製ドリンクは巷でも好評らしい)、何だか色々ともてなしてくれた。普段から分かってるけど、基本的にお客さんをもてなすのが好きなんだよな、コイツ。だから一文無しで迷い込んできたシブヤのギャンブラーとか道に迷ったシンジュクのサラリーマンなんかを招き入れたりするんだ。別に妬いてないけど。僕も招き入れられた側の人間だし。全然妬いてない。そもそも惚れてないから。
でもそのうち、水を汲みに行くって出て行ったんだよね。ここから一番近い沢まで結構あるって知ってるから、つまり、ベースキャンプはもぬけの殻になる時間ができたってこと。
分かる? やっぱり毒島は油断してるんだよ。僕に金庫が見つかったとは夢にも思ってないんだろう。千載一遇のチャンスってことだ。

アイツの背中が見えなくなった瞬間、テントの奥に戻って前回見つけた収納台の奥から小型の手提げ金庫を引っ張り出して、持ってきた荷物の中から鍵を取り出して。
これでアイツの大事なものとやらの中身が見られる。そう思って鍵を差し込んだ。予想通り奥まで入った。ビンゴだ。




そこまでだった。
奥まで差し込めた鍵が、回らなかった。



間違いなく金庫の鍵だけど、この金庫の鍵じゃないみたいだ。
同じ型の金庫の鍵だって、そこまで読みは当たっていたのに。
力任せにガチャガチャ回しても全然開く気配がない。
失敗だ。
すぐに悟った。
僕の見込みが外れた。
確信に近い予想が外れたんだ。


どうして?
次に疑問符が湧き上がってきた。
おかしい。こんな金庫を何個も持ってるなんて普通思わない。同じ型の手提げ金庫じゃ鍵の管理が大変だ。今みたいに間違えるから。
ならどうして?
よく似た金庫をもう一つ用意してあった、その理由は?
手のひらに汗が滲んだ。
頭がうまく回らない。


その上まずいことになった。
ガチャガチャ回し過ぎたせいか、鍵が抜けない。
まずい。
鍵が外れない。
力任せに引っ張っても駄目だ。
抜けない。
回収できない。
このままじゃ。



すぐ背後から毒島の声が聞こえた瞬間、賢い僕は全部悟った。
コイツは油断してたんじゃない。
僕を侮ってたわけでもない。

僕を泳がせていたんだ。


(next.→>>13




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11 :山田三郎
2020/09/20(日) 22:11



連休半ば、今日は生憎の雨。
つまり土砂崩れの危険を冒してはげ山を登るわけに行かないってこと。一兄に叱られるからね。
別に残念じゃないけどちょっと退屈だな、休みの間の宿題は初日に全部済ませちゃったし。別に残念じゃないけど本当なら泊まりに行く予定だったのにな。別に残念じゃないけど。

って時に役立つのが文明の利器、時代の進歩の象徴だ。
数コールで通話に出てくれるアイツは元々マメな性格なのか、それとも僕の為にそうしてくれてるのか読めない。とにかく、夕飯を終えて部屋に戻ってコールしたら少しして出てくれた。
頼んだら映像をオンにしてくれて、アイツのベースキャンプの中が映った。予想通り外の雨音が結構響いてて、大丈夫か?ってちょっとだけ心配になる。コイツ、台風が来た時とかどうしてるんだろう? いくら頑丈な軍用キャンプでも飛ぶよな? 飛ばないのか? まぁいいや。

会わない日にもたまに電話はしてる。
一兄や二郎にバレないようにイヤホンして、画面の向こうにいるアイツといろいろ他愛無い話をするんだ。いわゆる暇電ってやつだね。
毒島は手が空いてる時はちゃんと電話に出てくれるし、こっちが学校であったことや依頼の話(勿論当たり障りない範囲で)、つまり毒島自身に何も関係ない話をしても嫌な顔一つせず聞いてくれる。そして、自分のことも話してくれる。最近受けた取材の話とか、捕まえた獲物の話とか、またシブヤのギャンブラーがご飯を食べに来た話とか。
うん。こういうの、友人っぽくて良いだろ。友人ってこういうものだよな。多分。あんまり経験ないから分からないけど。きっと。
ただ画面の向こうにいる毒島が「狩猟の為の簡易的な罠を作っている」って見せてくれた罠が明らかに小動物を捕まえる系の簡易的な罠じゃなくて僕が引っ掛かったらどてっ腹に風穴が開く系の罠だった時は、流石に反応に困った。困ったけど(強いなぁ)ってグッと来ちゃったから今日の僕は本当におかしいと思う。惚れた弱味みたいでイヤだ。いや惚れてないけど。全然惚れてるとかじゃないけど。


色々話したけど、勿論ゲームの話もしたよ。スイッチで別の対戦ゲームをしながら。
毒島は「戦略を練っている」って言ってたけどそこまで本気じゃなさそうだった。だから、一応「あのって何の鍵なの?」ってチラッと聞いてみたんだ。ごくさり気なく、ね。探りを入れちゃダメってルールは無いし、毒島もあっさり答えてくれた。

金庫の鍵だ」って。

これはもう確定だ。内心ガッツポーズを決めてたらまたマンカラで負けた。また勝率が下がったけど取り敢えず良いんだ、大局で勝ってさえいれば個々のゲームの勝敗なんて大したことじゃない。
雨が上がったら、またこっそり毒島のベースキャンプを訪れようと思う。当人が油断してる間にね。





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10 :山田三郎
2020/09/19(土) 21:34



前回の日記、大して文字数無いつもりだったのに10回以上「長過ぎて投稿できません」ってエラーが出たんだけどこういうものなの?
仕方ないから半分くらい削ったんだぞ、MTCの奴らに取材が行くのってメンバーの職業的にどうなんだ?とかメディア露出が多いの羨ましいな?とか個人的な所感を書いてたとこ全部消したんだからな。いや別に羨ましくなんてないけど。僕らのメディア露出が控えめなのは学業を優先できるよう一兄が調整してくれてるって知ってるけど。別に全然羨ましくないけど。
っていうか長いバトンに答えてる人なんかどうしてるんだろう? まさか追記機能とかあるの? 折り畳んだ部分だけ総文字数から除外されるとか? いや文字色のタグが多過ぎて引っ掛かったのか? 小細工し過ぎかな? 一応読み手の目が滑らないようユーザーフレンドリーを意識して作ってるんだけど逆に見辛いかな? ちゃんと読めてる? 分かり辛くない? もう少し弄ろうかな。

まぁそんなことはどうでも良いんだよ、本筋とは何の関係もない。問題は前回ちょっとカッコつけて言った「さて、どうしようか?」から考えに考え抜いて意思を固めたってことだ。




を持ち出そうと思う。

理由その1。
まず前提として、大事なものの隠し場所をゲーム期間中に変えちゃダメってルールは無い。相手が探している最中にわざわざ対象物を持ち出して運ぶのはとてもリスキーだからね。
だから、向こうだって僕がこのタイミングでを持ち出すとは夢にも思わないだろう。

理由その2。
探索初日〜3日目まで、僕が訪れた時にはベースキャンプは常に不在だった。あの慎重で用心深い軍人が、だ。
考えてみたけど2つの可能性がある。アイツが僕にすっかり気を許しているか、アイツが僕をすっかり見くびっているか。いずれにしろ、今後も不在が続くならむしろ動きやすい。

理由その3。
見たい。
中を見てみたい。
気になる。
どうせ僕が勝つゲームなんだから、一足先にアイツの大事な物とやらの内容を知りたい。知りたくてたまらない。

当然だろ? アイツのことをもっと沢山知りたくて始めたゲームなんだから。
気になる相手のことは何でも知りたい。何でも把握したい。何でも共有したい。もう、これは理由もないしどうかしてる。病気だ。分かってる。でも止められないんだ。



───次にアイツの元へ行く時にを持って行って、あの小型の手提げ金庫を開ける。
勿論本人がいたら取り止めるし、無理はしない。危険な橋は極力渡らないように中身を確かめる。
……もう少し慎重になった方が良いかな? いや、良いよね?




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9 :山田三郎
2020/09/18(金) 13:01



探索3日目、今日もベースキャンプは空。
といっても、今日の不在は予定通りだ。
昼過ぎから夕方頃までMTCの取材で出掛けるらしい。

つまり今日の不在はアイツの意向じゃないから、小細工も出来ないだろうと思って潜入しに来たんだ。勝敗の行方はともかく、事前に僕の重要アイテムの在り処は把握しておかないと、ゲームを思い通りに進められないからね。
あらかじめ勝利に必要なアイテムの場所を把握しておいて、それからゆっくり向こうの出方を窺いながら長くゲームの応酬を楽しむ。それが賢いやり方だろ?


で、収納台の更に奥に隠されてたこれを見つけた。

普段ならまず覗かないだろう場所に大事そうに仕舞ってあったこれ。
小型の手提げ金庫。
こんな奥に隠してあったってことは確実に重要アイテムだろ? つまり、考えられる可能性は以下の2つだ。

1.この中に僕の通帳が隠してある。
2.これを開けるアイテムが毒島の大事なだ。


あの、何の鍵か気になってたんだ。車のキーじゃないし家の鍵でもない。もっと小さくて持ち手が丸くて簡単に複製出来そうなくらいシンプルだ。
これの鍵だとしたら説明がつく。

この1と2の合わせ技で、僕のを金庫の中に隠してを掛けた、って可能性も考えたけど、お互いの重要アイテムは手渡しで交換したからこのセンは無い。

それから、1の可能性も低い。僕の通帳がこの中にあって鍵は別に存在するとなると、今までの探索で見つからなかった以上は、更に

・毒島が肌身離さず持っている
・見つからない場所に隠してある
・捨てた


の3つの可能性が浮上する。
まず「毒島が肌身離さず持っている」だけど、持ち歩くことで紛失するリスクを考えると割に合わない。それなら通帳を直接持ち歩けば良い話だ。
次に「見つからない場所に隠してある」、つまり金庫と鍵の2つを探す二重トラップってこと。これは……うーん……まぁ、無いこともないだろうけど、今までの探索でそれらしい物は見つからなかったから可能性は低いんだよな。
最後に「捨てた」、これは下策だ。力技でこじ開けるのはスタイリッシュじゃない、そういう方法を僕が嫌うってアイツは分かってる筈だ。

従って、

2.これを開けるアイテムが毒島の大事なだ。

こっちの可能性が高い。つまり、毒島の大事にしている物がこの中に入ってるってこと。
僕の持ってるで、この金庫が開く可能性が高いってこと。

………さて、どうしようか。



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8 :山田三郎
2020/09/17(木) 18:07



無理、キツい。疲れた。持久走なんて前時代的過ぎる。絶対に100年先には存在してない。効率を考えたら真っ先に切り捨てられるカリキュラムだ。疲れた。今日はもう何も出来ない。帰って自宅のベッドに倒れ込もう。




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13 :山田三郎
2020/09/23(水) 12:45


(prev.→>>12

蹲って金庫を抱えてた僕のすぐ後ろから手が伸びてきて、その持ち手を掴んだ。
ほぼ背中に密着してきてたけど喜ぶ余裕もなかった。
一瞬で悟った通りのことを説明されたから、それを聞くのに必死だったんだ。


僕がテントの中を家探しして見つけることを想定し、同じ型のダミーの金庫を用意したこと。
すぐ見つかる場所じゃなくテントの奥、普段ならまず覗かない場所へ隠すことで信憑性を高めたこと。そして、さり気なくヒントを与えて僕に例の鍵金庫の鍵であることを印象付けたこと。
僕が好奇心からを持ち出して毒島の大事なものとやらの中身を確かめようとする事まで、全部見透かされてたってわけ。
後は僕が鍵を差し込んだのを見計らってダミー金庫を回収すれば、何も苦労せずを回収出来て、何も苦労せず毒島の勝ちってわけだ。


勝ち確どころか完敗だ、全部読まれてた。
まさか、このゲームを侮ってるとばかり思ってたコイツが、ここまで周到に用意していたなんて。
僕とのゲームにここまで本気を出すなんて、と考えて思い直した。そうだ、コイツはそういう奴だった。子供相手に手加減を一切しない恐ろしい奴だった。だから気に入ってるんだ、コイツのこと。



振り返ると相変わらず何を考えてるか分からない顔をした毒島がいた。
涼しい顔で金庫を抱えた毒島は、言葉もなく見上げる僕の目の前で刺さったままの鍵をあっさり抜き取って、手に入れた。




そこで鍵の違和感に気付いたらしい。
例の鍵と持ち手の形が微妙に違うことに気付いたんだと思う。ちょっと驚いたみたいに目を見開いた顔は初めて見た気がする。意外に幼くて可愛い。
その可愛い顔のまま戸惑うみたいにこっちを見たから、ちゃんと答えてやった。



合鍵を作っておいて正解だった。



毒島の計算されたダミー金庫と違って、僕の合鍵は何が起こるか分からないから一応念のため、っていうぼんやりした理由だったけど。
それでも最悪の事態は免れた。本物のは、鍵屋に持ち出した後はちゃんと僕の部屋のキャビネットに仕舞ってある。
僕だって手加減する気はないし、本気で挑んでるつもりだ。他でもないコイツとのゲームなんだから当然だ。
僕の返事を聞いて、詰めの部分で当てが外れたことを察した毒島は、また珍しい表情をした。
勝ち確のつもりが引き分けに戻ったのに、自分の目論見が外れたっていうのに、毒島は目を細めて、やたら嬉しそうに笑ったんだ。



たぶん僕も同じ表情をしてた。
背筋がゾクゾクした。
最高に興奮してた。
この瞬間がすごく好きだと思った。
子供相手に容赦ない、いや、子供相手に全力で相手をしてくれるコイツが、僕を対等な存在だと見做しているコイツが、堪らなく好きだと思った。

認めるしかない。
もう分かってる。
コイツとのゲームが好きだ。
コイツとの駆け引きが好きだ。
コイツのことが、誤魔化しようもなく、例えようもなく、好きで堪らないんだ。




12 :山田三郎
2020/09/22(火) 19:16



探索4日目?って書くのも野暮だな、
長くなったら2ページに分けるし。っていうか長くなったから早速2ページに分けるけど途中で疲れたから続きはまた今度書くよ。そもそもアイツのとこに行かなくても通話はしてるから、探索しなくても交流してるんだよね。まぁいいか、雰囲気で。
雨が上がったから連休最終日の今日、十分な準備をして向かったんだ。アイツのところに。

今日はベースキャンプにちゃんと居たし、「道がぬかるんでいて大変だっただろう」って靴の泥を落としてくれたりアイツ特製のラベンダードリンクとやらを出してくれたり(この特製ドリンクは巷でも好評らしい)、何だか色々ともてなしてくれた。普段から分かってるけど、基本的にお客さんをもてなすのが好きなんだよな、コイツ。だから一文無しで迷い込んできたシブヤのギャンブラーとか道に迷ったシンジュクのサラリーマンなんかを招き入れたりするんだ。別に妬いてないけど。僕も招き入れられた側の人間だし。全然妬いてない。そもそも惚れてないから。
でもそのうち、水を汲みに行くって出て行ったんだよね。ここから一番近い沢まで結構あるって知ってるから、つまり、ベースキャンプはもぬけの殻になる時間ができたってこと。
分かる? やっぱり毒島は油断してるんだよ。僕に金庫が見つかったとは夢にも思ってないんだろう。千載一遇のチャンスってことだ。

アイツの背中が見えなくなった瞬間、テントの奥に戻って前回見つけた収納台の奥から小型の手提げ金庫を引っ張り出して、持ってきた荷物の中から鍵を取り出して。
これでアイツの大事なものとやらの中身が見られる。そう思って鍵を差し込んだ。予想通り奥まで入った。ビンゴだ。




そこまでだった。
奥まで差し込めた鍵が、回らなかった。



間違いなく金庫の鍵だけど、この金庫の鍵じゃないみたいだ。
同じ型の金庫の鍵だって、そこまで読みは当たっていたのに。
力任せにガチャガチャ回しても全然開く気配がない。
失敗だ。
すぐに悟った。
僕の見込みが外れた。
確信に近い予想が外れたんだ。


どうして?
次に疑問符が湧き上がってきた。
おかしい。こんな金庫を何個も持ってるなんて普通思わない。同じ型の手提げ金庫じゃ鍵の管理が大変だ。今みたいに間違えるから。
ならどうして?
よく似た金庫をもう一つ用意してあった、その理由は?
手のひらに汗が滲んだ。
頭がうまく回らない。


その上まずいことになった。
ガチャガチャ回し過ぎたせいか、鍵が抜けない。
まずい。
鍵が外れない。
力任せに引っ張っても駄目だ。
抜けない。
回収できない。
このままじゃ。



すぐ背後から毒島の声が聞こえた瞬間、賢い僕は全部悟った。
コイツは油断してたんじゃない。
僕を侮ってたわけでもない。

僕を泳がせていたんだ。


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