──今回は。そうだなァ、あいつのことを「向日葵ちゃん」だなんて気障ったらしい呼びかたするようになった切欠でも振り返るかあ。

俺たちが一冊借りる前。あいつが見つけた──ここに並んだとある日記が、どうにも俺っぽかったらしい。
そんでそこには、前の恋人を想う言葉が認められていた、と。
謎かけ合戦みてぇなやりとりを経て、俺は日記ってもんの存在を知って、あいつの誤解を解いた…かのように見えたが、たぶんまだ勘繰ってただろ。あの時はなあ…違うってアピールするのに必死で、さながら浮気バレした男の気分だったよ。
経緯はさておき、理性的かつ理知的、くわえて文学的に嫉妬してくる姿が可愛かったとだけ言っておく。


ともあれ、その時あいつが俺だと思った日記のタイトルが──外国語で＂君は僕の太陽＂みてぇな感じだった。
そこで俺はこう返したわけよ。「そりゃ俺のキャラじゃない。それとも、＂俺のかわいい向日葵ちゃん＂とでも訳したのか？」ってな。

おあつらえ向きにあいつの頭、向日葵色だしなァ。…なあんて冗談から始まった呼びかただが、太陽に向かってまっすぐ伸びる一途で素直な向日葵ちゃんは、いつのまにか俺の太陽になってたって話さ。十三ヶ月目も愛してる。

#ヒヨス、月光、つるぎ──俺も色々と呼び方を考えてみたが、どれもいまいちしっくりこない。
#いっそお前も向日葵にしてしまおうか。たまに見せる笑顔など、それらしい。
#ずっと明るい方へと手を引いてくれ。俺の導べ。唯一無二。

赤い髪だ。知人のゲルトルートや忌々しいハーフエルフの男のものとは異なる、くすんだ、紫を帯びた赤。あるいは淡金か。砂丘を構成するごく微細な粒の、どこか白んだ黄金色。
瞳はグリーン。絞りたての絵具のビリジアン、熟れきらない果実の黄緑だったかも知れない。兎にも角にも、虹彩から湧くような鮮烈な色に輝いていた。

8年前。美しい男に出会い、実らずとも強く惹かれた。──…なあ？アラヒト。

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婚姻とは紙きれ一枚のあえかな契約に過ぎないが、それによって、俺はお前の全てを改めて預かったと思っている。幸不幸を分かち合い、転機あらば見届け、終いまで側にいるということだ。だから安心して、したい時にしたい事をしてほしい。いつも自由でいてくれ。俺が願うはそれきりなんだ。

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13か月目も変わらぬ愛を。8年越しの俺の初恋の君へ。

生命力に溢れた黄色い大輪は、どうにもイメージではないが。お前の太陽に似た笑顔に生かされているという意味では、俺は向日葵に違いない。

#自由にさせたい。でも縛りたい、だろ？
#いいぜ。アンタになら、縛られんのさえ魅力的だ。たまには叱ってくれたって。アンタから貰うもんなら、なんだって極甘口のご褒美さ。