ふと目覚めた無意識と無意識の狭間、永遠に続くような夜の底、散らばるに任せた行き場のない思考、眠る貴方の命の重み、それを終わらせてしまえば完結する一種の幸福について。

この地底で、枯れてしまうのを待つ一輪の薔薇。不可能を冠する薄青。
外の世界ではね、これを奇跡と呼ぶのですよ。そう言って落とすように笑って、また私の手を握る。

私がとうに見限った花を、いずれは枯れるその花を、お姉ちゃんがまだそんなふうに笑って語るから。もうなにもかもに耐えられなくなりそうで、花弁を手の中でぐしゃぐしゃに握り潰した。
——ほら、私の心臓こいを貫いたって、私は終わらない。
噎せ返る芳香。平衡感覚を喪う程に深く香る、薔薇の死臭。
眼を閉じる。
きっとこの匂いはいつまでも消えない。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

残骸を抱いていられたら幸せだった。色褪せた写真を指でなぞるように好きでい続けるつもりだった。いつか貴方の言葉にこの恋を殺されてしまうのが怖かったから。それなのに。

「ねえ、貴方の部屋はまだ残してありますよ、こいし」
私の姿なんて見えやしない癖に、こっそり姿を見に行くと決まってお姉ちゃんはそう呟いた。
残酷なひと。

そんなことされたら寝れないんですけどー？
裕太のばーか。私も大好きだよ。

うそうそ、ちゃんと寝るってば。

実はまともに付き合ってた頃でさえ暗い内容ばかり書いて呆れられていたタイプだぜ。ここに引越してからは本人に見られる心配がないから余計はっちゃけてるしな、主に負の方向に。
つまり今後も劇的に明るくなるとは限らない……んだが、まあ、そのうち普通に惚気てみるのもいいかもな。ところで普通に惚気るってどうやるんだったか。
なにはともあれ、祝ってくれて嬉しかったぜ。ありがとな！

あとまるで間に合ってないが誕生日おめでとさん。記念に美味いキノコ料理を振る舞ってやろう。なあに、副作用なんて次の日ちょっと景色が虹色になるくらいのもんだ。——あー？キノコネタはもういいって？お前の反応が面白くてついな。

ちょっとまだ現実味がないし長瀬なりの上げて落とす作戦かもしれない。そうだったら長瀬も頭を使うようになったなあという感動とかそれ以外とかで涙腺が緩む可能性もある。間違いなく嘘だけど。
……あー、あーあー。柄にもなく若干浮かれそうなので僕を殴ってくれ湯女。嘘だ。
そんなわけで、復縁しました。恐らく。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

何発も殴れとは言ってないし増して蹴れとは一切言ってない。そもそも嘘だって言っただろ。