セイバー。セイバー、セイバー、セイバー。わたしのセイバー。好きよ、大好きだわ。
わたしのすべてをあなたにあげる。
だから、なにも思い悩む必要はないの。
あなたはその望みをわたしに教えてくれるだけでいいのよ？そうしたら、なにもかもわたしがどうにかしてあげられると思うから。
大丈夫、たくさん殺すときはあなたの目につかないようにするわ。悲しそうなその顔も好きなのだけれど、ずっと見ていたい程なのだけれど——ううん、やっぱりあなたには笑っていてほしいもの。

なにかをつくるのは苦手なの。終わらせるほうが余程簡単だわ。
たとえば誰かと手を繋ぐより、誰かの手を離すほうが。

当然、その手ごと潰してしまうのがいちばん得意なんだけど。

「次は静かに沈んでいられるところがいいわ、と言っていたように思いますが」
「別に一言一句ちゃんと引用してこなくてもいいんだよお姉ちゃん」
「もしかして沈んだままでいられる機能をご存知でない」
「今日のお姉ちゃんは刺があるね？なんだかいちいち書いたり消したりしなきゃいけないのが面倒になっちゃって」
「面倒な話しかしない貴方が面倒がるとは」
「ねえもしかして私を罵りに来ただけ？」
「そうとも言う」
「はーあ。こんな姉だから妹が心を閉ざすのよ」
「それはそれは、勿体ないことを」
「そう言えるのほんとにお姉ちゃんくらいだからね。流石自己評価11点の女」
「貴方の心が読めれば12点なのだけれど」
「えっとね、今はそろそろ会話を打ち切りたいなって思ってる」
「今日の夕飯は如何しましょうか」
「読めたところで聞く気がないんだよねお姉ちゃんって」
「読んだものに振り回されるようでは心を病みますよ」
「私みたいにね」
「確かに」
「今のはフォローしてほしかったかなあ」
「すみませんね。読めないもので」
「夜ごはんをあったかいおでんにしてくれたら許す」
「はんぺんをたくさん入れましょう」
「やったあ」

もしもあなたが悲しい顔をしたり、涙を流したりしてしまうことがあるのなら——そう、きっと誇り高き騎士であり王であるあなたは、滅多にそんな表情をしないのだろうけれど——わたしは、そのときあなたの隣にいたいわ、セイバー。
そうすれば、あなたの輝きを曇らせるなにもかもをわたしが排してあげられるもの。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

……ね、セイバー。もっとわがままを言ってもいい？
ひとりごとならいいわよね？

わたしのセイバー。わたしの王子さま。あなたの笑顔、とっても素敵よ。でも、だからこそ、少し意地悪したくなってしまうの。
もしも、もしもね？あなたが、わたしの意地悪にその表情を歪めることがあったなら——わたしはそれを、きっと心から喜んでしまうわ。