もうお前など要らないって言ってよ。終わりにしようよ。こんな機能不全の姉妹なんてさ。
お姉ちゃんはそうしたところでいつか前を向けるでしょ？無数のペットたちのお墓の中に私の墓標が混ざるだけでしょ？そうやって、いつまでだって動物たちと家族ごっこを続けられるでしょ？
そんなつまらない現実が不快で堪らないわ。
お姉ちゃんを閉じ込めて縛りつけて、その眼を潰してしまいたい。
それが叶わないのなら、もう私のこの眼を抉り取ってしまってよ。二度とお姉ちゃんのことなんか想起できないように。

有り得ない夢想に、そうと知って溺れている。
——わかってるの。お姉様は私を特別に愛してくれているわけじゃない。たったひとつのその席は咲夜のもの。とうとう覆せなかった運命は、未だ壊せもしないままで貴方と私を隔てている。
だからせめて、もしもの話を愛していたい。
そうやって、貴方によく似た人形が擦り切れるまで遊んで。何百年だってここにいる。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

愛す、愛すって＊＊＊＊＊＊？

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

握り潰すまでもなくずたずたの恋心。『目』が多すぎて捉えきれない程の、澱み濁った私の心。
どこをきゅっとしてやったって簡単に砕け散るそれの前、蹲って壊せないと泣いていた。誰かが迎えに来る優しい結末"He got married and then there were none"を夢見ていた。いつまでだってこの恋を延命させてしまいたかった。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

こわれものを扱うように。そうだったかも。
でも、そうしていたのは——手酷く扱ったら壊れてしまうって、私がそう思っていたかったから。それだけよ。
お姉様は私の手なんかじゃ壊れない。そう思い知るのが怖かった。私の手は届かないんだって理解するのが、どうしようもなく。

「御用でしょうか、お嬢様」
「うん。パチェが闇鍋したいらしい」
「パチュリー様の小規模な自殺ですか」
「小規模というか直接的に自殺だよ」
「でしたらそのように手配致しますわ」
「あら、止めないの？」
「お嬢様が止めないのであれば」
「まあね。面白そうだから」

「ところで、フラン様はいらっしゃるのですか？」
「いらっしゃろうとはしなかろうよ、引き摺り込むけど」
「成る程。では3人分ですね」
「なにを言っている？お前もやるんだよ咲夜」
「まあ。ニンニクと銀粉どちらがよろしいでしょう」
「お前以外全員死ぬじゃん勘弁して」
「完全犯罪です」
「今まさに被害者予定に計画が漏れてるわけだけど」
「それに、美鈴も死にませんよ」
「ああそう……あいつなに食べさせたら死ぬかな。殺したいとかじゃないけど」
「小籠包は如何でしょう」
「小籠包怖いみたいな話？」
「小籠包に青酸カリみたいな話ですわ」
「咲夜が先に死ぬんじゃないのそれ」
「流出しないよう中に包みますから、食べなければ問題ないかと」
「いやいやいや」

「And then there were none」
「まだ呼んでないよ。引き篭ってなよ」
「フォーオブアカインドのひとりに挑ませた私の勝ち」
「安楽椅子犯罪ですね」
「一人四役だから十戒にも引っ掛からないわ」
「二倍引っ掛かってるんだよ馬鹿野郎」
「ふふ。探偵おねえさま諸共壊してあげる——こんなちゃちな闇鍋クローズド・サークル、具材は迷宮だけで充分よ」
「……は。犯人いもうと如きが笑わせるわね。お前の運命はいま定まった——御都合主義デウス・エクス・マキナのハッピーエンドにな」
「お嬢様、僭越ながら……ここだけ急に格好つけても仕方がないのでは」
「私が犯人なの？咲夜でしょ？」
「なんでふたりして梯子外してくるわけ？」

本気で来てよ、陽滝姉。なあなあじゃ嫌。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

とか言ってたら……ひっさびさに、死にかけたあ……。
ひ、ひひっ。でも今回も生きてるよー、陽滝姉っ。かなりぎりぎりだったけど！

あ、師匠のことほったらかしにしちゃった。この何日かで新しい女の子引っ掛けてたりしないかなー？