過ぎ去ったものものを抱えるよりも潔く捨てた方が遥かに楽になると知りながら時折思い出して傷を抉る。そも捨てる気がねえのか。あるいは、捨てたくないのかもしれない。面影も、愚かな行為も、幼い憧憬も、触れた指先も、歪んだ声も。愛なんて知らなかった癖に愛してるだなんて、一体どの面下げて言ってんだ。
ただひたすら、愛いと愛でるだけでは駄目らしい。
明日を望むよりも、今、この手を取ってほしい。今、跪いて頭を垂れてほしい。そうして、俺を信仰しているのだと莫迦の一つ覚えのように叫んだあの瞬間のように、尊くも愚かで、救いようのない執着を向けてほしい。俺のこころがわからないと嘆きながら、俺を求める姿にどうしたって甘くなるのは仕方のないことだろう?
2/14 書簡箱より:野生の鶴丸国永へ(折りたたみ)
うはははは!いやぁ、すっかり遅くなったが、時期が時期だったんでな。せっかくだからこの日に返事をしようと思ってゆっくり筆を走らせることにした。まさかお前さんからちょこをもらうとは思っていなかったよ。しかも、ふぁんちょこと称されちゃあな、いくらじじぃといえど年甲斐もなくはしゃぎたくなるってもんだ。まさかこうして二度も驚かされると思わなんだ、ありがとうよ。しっかりと茶請けにした。律儀なお前さんからもらったものに対して見合っているのかわからないが、礼だけでも言わせてくれ。
春が近くても夜は冷え込む。お前さんこそ風邪ひくんじゃあないぞ。因みにじじぃはくしゃみが止まらなくてな。風邪じゃあないが"花粉症"とやらに見舞われている。人の身もままならんなぁ!ま、お互い大事に過ごそうじゃないか。では、重ねてになるが、ありがとう。
沈んで、浮いて、溺れて、流されて。
水中から見上げた先の太陽に眩しいなって目を眇めてさ。堕ちきる前に腕を掴まれて、引き上げられるのも慣れたもんだよねって呟けば威勢のいい声でキャンキャンと吠えてくる。
生きることに貪欲なお前が眩しいよ、いつだって。
気づけば二月が過ぎ去って前回の日記から半月経ってるっつうな。まだしばらく落ち着かねぇから不在がちになるが、忙しない中でも良い驚きはある。ちょっと目を離した隙に隣人の日記がもう終わることに愕然としたり、バレンタインに律儀にチョコを贈りに来てくれた野良の渡り鳥とかな。すぐに返事をしようと思ったが何をどうしてか時間を食われて何も出来ずに今に至る。……いっそホワイトデーにでも書くか。まぁ、書ける時に書くから気長に頼む。
ここは後で編集するかもしれないがしないかもしれない。