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┗いつかの回顧録。(291-295/325)
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295 :
英
01/21-02:46
きっかけは、些細なことだ。
コップに一滴ずつ垂らした水が、その限界を越えて溢れるのも、ただ一滴のせいであるように。
どうにもならないものはゆっくりと、始めは貯まっていることさえ気付かせないくらいに、貯まってからもまだ大丈夫だと錯覚させるくらいに、限界にきてもあと少しくらいならと思ってしまうくらいに、そう、本当にゆっくりと。
溢れた後は、もう、取り返しがつかない。
だから、その日。
それはエスカレーターに乗った時だった。
たまたま、足をかけたところが段差の真ん中で。あるだろう?エスカレーターの始めは平らだから、うっかりしてしまうこと。何でもないこと。だから俺は半歩下がって、黄色い枠の中に足をいれた。
それだけ。
それで、もう、駄目だった。
駄目だったんだ。
もう何もかもが嫌になった。
本当に唐突に、全部嫌になった。
多分もっともらしく言うなら、そうやって、俺はいつも失敗しては取り繕って、そうやって生きているんだと気付いてしまったから、何もかもが嫌になったんだとか言えるけれど、それは部分点しか貰えない不正解だ。
それからたどり着いた駅のホームはやけに静かに見えて、なんだか雪の中で耳鳴りを聞いているくらいの静かさがあって、それからコンクリートの石の割れ目がやけにクリアに見えた。
あのクリアな石と石の間に落ちて死にたくなった。
明けない夜は無いと言うけれど、朝が来るからなんだと言うんだ。朝が来ても夜が来ても俺の手は相も変わらず無力で非力で空っぽだ。なんにもない。暗闇で誤魔化したその手を明るい朝日に照らして見付けて何度絶望しただろう。
お前のいない朝は、こんなにも苦しい。
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294 :
英
12/24-00:27
>菊のいない水曜日、
スコーンを焼いたらどうかなと、思ったんだ。あいつは、食い意地が張ってるから。
バターの良い匂いがしたら、小麦の焼ける匂いがしたら、つられてひょっこり帰ってくるんじゃないかな、なんて。
あいつの好きなクルミを入れて、柔らかく捏ねてカリカリに焼いて、マーマレードもそえて。
そんな風に思ったんだ。
こんな、真っ黒な失敗したやつじゃなくて、美味しそうなやつを作ることが出来るようになったら。
そしたら、そしたら。
菊はあの目を丸くして、キラキラさせて、ワクワクさせて、ほっぺた赤くして、褒めてくれて、それで俺の事を好きって言ってくれるんじゃないかと思ったんだ。
俺は駄目なスコーンしか作れないから、菊に会えないんだなぁ…。
菊に会いたい。
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293 :
英
12/22-23:58
>菊のいない火曜日、
靴下を履いた。インナーを重ねた。カーディガンを着た。ブランケットをかけた。スリッパをはいた。暖房をつけた。ホットカーペットをつけた。
それでもまだ寒い。
まだ、まだまだ寒い。
暖かいのみものをいれた。暖かい食べ物を食べた。熱い風呂に入った。
外から暖めても中から暖めてもどうにもならない。
寒い。
どうしようもなく、寒い。
菊に会いたい。
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292 :
英
12/22-00:02
>菊のいない月曜日、
菊に会いたい。
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291 :
英
12/20-23:48
>菊のいない日曜日、
ポチと散歩した。
近所の山中さんが庭でとれたと言って、柚子をくれた。もう少ししたら冬至だ。冬に至って瓜を煮つくし柚子浸かる。そう笑っていた菊を思い出す。
柚子の湯が、魔を払うと言っていた。
魔を払えば菊にまた会えるだろうか。
菊に会いたい。
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