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どうしようもない私へ
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100 :
氷
11/30-23:37
100.
一つの物語に、終止符を打とう。
満月の夜に始まった、僕と、あなたの物語。ねえ、覚えているかな。ああ、そうか、あなたは、過去を振り返る事を嫌っていたね。僕は案外、悪くなくてさ。振り返りをするのも、思い出に浸るのも、良いか悪いかは置いておいて、好きなんだよね。
違う世界を生きていたよ、僕は少なくとも愛されていた。僕らはきっと、確かに、世界に愛されていたはずだ。
なぞろう、僕とあなたの軌跡を。今日だけは許してくれるだろう、僕の我儘を。
氷のようだった、まるで。氷点下で息をしていた僕は、波に流されているだけだった。僕の氷を溶かしてくれたのはあなただったんだ。
嘘じゃあなかった、僕は綴った、重ねた、想いを、パフィンに託した。書き直しを重ねに重ねたラブレターは、あなたの元に届いたのだろうか。僕は満足だった、月を見ていた、不思議と、寒さは感じなかった。僕はもう、寒さに怯えなくても良いんだと知った。
言葉で遊んでいた。世界で遊んでいた、僕が好きな世界をあなたが好きだと言った、僕の世界を僕らしいと認めてくれた、透明な水のようなあなたはとても暖かかった。僕は毎日暖かかった。時折、綴ってくれる想いに、嬉しさを感じていたのは嘘ではなかった。
水色の、花をもらった。僕はそれを大切にしている、あなたはもう忘れたかもしれない其れを、僕はまだ覚えている。
桜色の世界を歩いた、数多の世界への夢を語った、たくさんの言葉を紡いだ。僕とあなたの世界がそこにあった、僕はもう氷点下へと帰ることは、無かった。
一つの関係が終わったんだ。
僕とあなたはもう縛られる存在ではない。同じ世界で共存しながら、互いに自由なんだ。其れを望んだのはあなただ、僕も其れを望んだ。だけれども、どうにも、渡り歩いた世界が多すぎたようで。
手を離した、それを実感すると、どうにも泣けて来るようだった。果たしていつ振りの涙なんだろう、僕が最後に泣いたのは、まだノーレを、お兄ちゃんと呼んでいた、遥か昔の事だったように思う。
この物語は、バットエンドではない。
だからと言ってハッピーエンドですらない、僕もあなたも、物語をまだ終わらす気はない。これから先を、僕とあなたはきっと、新しい形で歩くことになるのだと思う。隣に居て、話をしながら、物語の続きを紡ぐのだと思う。手を繋ぐ事は、もう無いのかもしれないけれども、それでもあなたは僕の隣で、この先も笑ってくれるのかな。
今日までの、僕とあなたの物語に終止符を。
そして新しい物語を綴って行こう、僕が好きな、他の誰でも無いあなたの言葉と共に。
(それでは また、次の世界で)
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