スレ一覧
┗317.ポートレイト・レター(11-15/24)

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11 :リヴァイ
2014/09/05(金) 20:47

 全てを見透かすように細まるその瞳が、苛立ちを募らせた。言い得て妙だ。確かにその通りだろう。反論出来る程の舌は残念ながら持ち合わせちゃいねえ。それがたった一つ、俺を理解するに足る全てだと。

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 彼女の気を引ける自信。そんな大層なモンを持っていたとは知らなかった、相変わらず自信家な野郎だと思う。だが確かに、彼奴とあの女は馬が合うに違いない。纏う空気こそ違えど、住む世界は違えない。人間性に欠けた女と、ある意味で人間性に溢れた男。嗚呼、彼奴は人間性に溢れてる。根本で見捨て切れずに足掻く。見苦しい程の情。表立って窺える冷酷さはいっそ清々しい。そうやって切り捨てた幾人、選ばなかった幾人。まあ、俺には関係のねえ話だ。

 俺の知る彼奴は、情に絡み取られる男であり、それは今後も変わらねえだろう。そんな男を女は気に入った。納得出来る。彼奴は頭が可笑しい、全く以て理解出来ない、そう愉快に笑う女の記憶が鮮明に蘇る。
 何故俺を引き込んだ。

 彼女の気を引ける自信なんざ、俺には皆無だった。そもそも住む世界が違う。所詮俺は地下街のゴロツキだ、腐った空気で生きて来た。何も持っちゃいねえ。この両手に在るのはひとつ、巨人を削るブレードのみだ。空に愛はなかった。

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>「貴方は不幸の底が好きなのよ」
 そんなモンは御免だ、クソ喰らえ。

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12 :リヴァイ
2014/09/10(水) 21:00

 女は新たな道を歩み出している。元々移り気な奴だ、数年に渡って俺宛ての手紙を綴り続けた事が最早奇跡に近いだろう。だから、構わない。それで良い。そうして好きに歩んでくれ。俺は何も変わらず、黙ってその背を眺めるに違いねえ。零れる言葉なんざ有りはしねえ、それこそがあの女であるからだ。嗚呼、本当に。クソみてえな世界だな。

 悠々自適に、どうか生きてくれ。狂った侭で。

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 剥がれ落ちていく感覚を味わう。内側から一枚一枚、無理に剥がされた其処が疼く。甘さも苦みも無い。嗚呼そうかと、無機質に。乾いた紙面を撫でる。指先が震える事もねえ。それでも深く根付いている。クソ野郎のしたり顔が浮かぶ。確かにお前は、俺に必要なモンを差し出したんだろうよ。余りに重い。切り替わる視界に眩暈がした、決して望んじゃあいなかった。なあ、それが毒だとお前は知っていたか。毒だと知って、差し出したのか。嗚呼、だろうな。

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13 :リヴァイ
2014/09/10(水) 21:28

 数年前。調査兵団に馴染んだ頃、良く知る瞳と出逢った。既視感だ。それは他でもない、俺の瞳と同じだった。纏う雰囲気は恐らく同じかそれに近く、けれど内面を知れば知る程、異なる性質に興味を抱いた。それだけ俺と似通った瞳をしていながら、何ともまあ、優しい奴だと。親しくなるに時間は掛からなかった。二人で連む事が増えた。至極穏やかで、何より気が合う奴と話す事は堪らなく愉快だ。
 彼女をあの女に紹介したのは、俺だったか、それとも別の奴だったか。あの女について話す時間が、多少なりとも増えた。故に彼女は知っていた。俺と女の関係性を。

 彼女が兵団を辞めたのは、俺と知り合う以前から付き合っていた男と結婚する為だった。調査兵団を辞め、駐屯兵団に移籍する。それは彼女の幸せの為であり、友人である俺にとっても喜ばしかった事を覚えている。そんな彼女と、先日久々に食事をした。言葉を交わす事が何ヶ月振りだろうと、自然と馴染む空気に「やはり此奴だな」と感じる。

>「貴方とあの人は、昔からずっと、平等なんかじゃなかったでしょう」
>「少なくとも、私が知り合った頃にはそうでしたよ。私には、そう見えましたよ」
>「いつだって貴方が必死で、あの人は貴方を下に見ている。私から見れば、でしたけど」

 それはエルヴィンからは絶対に出ない感想だった。あの男は必ず否定するだろう感想だった。けれどエルヴィンの否定に、何一つ証拠も根拠も無い。それは俺が一番良く理解している。所詮、奴が語るのは想像だ。そして理想だ。俺はそんな奴の性格を好ましく思っているが、彼女に関してのみ、此奴の脳内はどれだけ花が咲き乱れているのだろうかと、心配する事さえあった。そうだ。誰が見たところで、答えはそれだ。俺にしろ、彼女にしろ。

>「別に良いんじゃないですか、縁を切っても」

 平等になりたかったのかも知れない。願うはそれだけだったのかも知れない。もう忘れちまった。

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14 :リヴァイ
2014/09/10(水) 21:30

>「あんな人の顔なんて、もう見たくもないわ」

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15 :リヴァイ
2014/09/15(月) 22:21

 唯燃やして片付けるにしては、その数は余りに膨大だった。パンドラの箱は、開くと同時に災厄や不幸が飛び出して、最後に希望だけが残ったんだろう。此奴は全くの逆だ。希望も期待も幸福も、封を開くと同時に飛んで行っちまって、最後には空虚しか残らない。その事を、俺は知っていた。詰め込まれた無機質な文字達、冷たいインク。何も、何一つとして。燃やすだけで終いに出来る程、ちっぽけじゃなかった。

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 何喰わぬ顔で笑う女を眺める。なあ。お前も、変わったのか。俺と同様に、お前自身でさえも、変化には勝てなかったのか。

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