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┗付箋と栞だらけのネタ帳(191-200/234)

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200 :土/方/歳/三(薄桜鬼)
2014/11/09(日) 23:36

……恐らく切っ掛けは、そう大したものではなかった。
それがいつの間にか降り積もって溜まり募って、溢れるようになった。

言った自分の言葉は忘れちまっていても、聞いた言葉は覚えているものだから不思議だ。
何もかも言葉通りで、欲しているものですら見通されちまってるようで。それがまた申し訳なくも、嫌じゃねぇと思う辺りもう、手遅れなのだろう。

どうにもならねぇのだ、と告げた時とは違う意味で今は思う。
変える事も変わる事も容易になんざ出来ねぇ。抱えたものですら、恐らくは。口にする言葉は大事な時ほど支離滅裂で、みっともねぇ事この上ねぇ。……ただ、それでも、だからこそ。

見つめる空色が俺だけを見て、俺もまたそれを見続けていてぇと思う。……多分これから、この先もと――思えるのは、お前だからなのだろうか。

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199 :主人公(奏(騒)楽都市OSAKA)
2014/11/07(金) 23:36

また帰るのが遅くなったな……編集の時はいつも遅くなるし、今回のリンク先は悩んだから余計にか。ただいまーっと、誰も居ないけど。
部室は掃除してるけど、自分の部屋もそろそろ掃除しないとなぁ……。溜まった清掃チップ使えねぇかな。
あーあ、洗濯物も何処のハリウッド的な何段バーガーになってるしな……食う時ならぬ着る時は積み木崩しだけど。さて、取り敢えず引っ繰り返して……ん?何か落ちたな。

――スティックな一口羊羹×2。

え、何だこれ。
しかもコンビニとかスーパーに売ってる奴じゃなくて、すげぇ地方の土産物屋的な所にありそうな箱入りとか。一体誰が――

>「ああ、それな。土産や」

あの、文音先輩?アンタ行ったの思いっきり反対方向ですよね?何で全然関係無い物をってか勝手に洗濯物の中に入れ……いや、その前にどうして部屋に入……って聞いてねぇ!

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198 :エレン・イェーガー(進撃の巨人)
2014/10/27(月) 23:32

(外伝「悔いなき選択」漫画版のネタバレ含む為、注意)
(回避)>>194



口の中に、甘い味が広がる。
バカみてぇにぼんやりと甘さを味わっていたから、背後からの突然の強襲に咄嗟に反応出来なかった。

#「エッレーン!」
>「ぶはっ!?」

倒れる事だけは何とか回避したものの、思わずよろめいて前へつんのめる。
背中やら頭やらがぶつかった所為で痛むのを耐えながら振り返るとそこに居たのは、やっぱりと言うべきか、ハンジさんだった。

#「何、なにどうしたの?って、それ……」
>「え、あ……リヴァイ兵長が」

手に持っていた袋に気付いて、ハンジさんが問う。その中身を改めて見ながら、オレは少しもたつきながら頷いた。

貰ったというか、押し付けられたというか。いや、押し付けられたとか流石に失礼だろ、オレ。

……けど、甘いものなんざ、いつぐらい振りだろうか。壁が破られる前でも、資源の限られた壁内では甘い菓子は嗜好品であり貴重品だ。そうそう気軽に口に入れられるようなものじゃねぇ。そりゃ中央の店では扱ってるだろうし、オレみたいな新兵よりは兵長の方がずっと手に入れやすいといえばそうなるかもしれねぇけれど。

そんな思考がぐるぐると頭の中を廻ると何となく言葉が続き難くなっちまって、口の中に入った物を齧る。

ポリ、と軽い音が耳の奥を響かせる。ふと気付くと、ハンジさんがやたらと近い位置でオレを覗き込んでいた。

#「リヴァイが、か……。ねぇ、美味しい?」

それ、と袋を示す。
緩く首を傾げて問い掛けるその姿に、どうしても重なる面影があった。

……オレにくれたこの袋の中身。
てっきり誰か……兵団の人達に貰ったと思ってたけど、兵長は街に行く用事があった時に買ったのだと言われた。そう、わざわざ買ったんだ。兵長自身は紅茶とか掃除道具とか自分の物はそれくらいで、甘いものを買うなんて想像出来ねぇのに。それもきっと、自分が食べる為じゃねぇのだろう。

だったら、何で。
疑問を持て余したまま頷きだけを返したオレに、ハンジさんが目を細める。

#「……そっか。良かったね」

ああ、同じだ、と思う。オレを見る眼差しが、この袋を受け取ったオレを見る兵長の目と。言葉すらも、重なっていた。
普通、買うハズのねぇ物。それを一体、どういう思いで、どんな顔をして買ったのだろうか。

口の中は甘いハズなのに、じわりとよく分からねぇ胸の奥から苦いものが滲んで来る。

分からねぇ、と思うのは多分――二人が向けた言葉も瞳も、オレじゃねぇ誰かを見ていたからなのだろう。



#「そういえば私、最初の頃はリヴァイの事を『君』って呼んでたんだよね。今でも偶に呼ぶけどさ」
>「え?」
#「だって、あの見た目だよ?分かんないじゃん!後で聞いたんだけどさー、今思い出してもクッソ笑える!」
>>「……ほぅ、そうか」

あ。今すげぇ後ろ振り向きたくねぇ。




(回避)>>194

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197 :リヴァイ(進撃の巨人)
2014/10/14(火) 23:38

今でも思う。こうしていたら、と覆しようもねぇクソみてぇな事を。

後悔は、と呟き掛けて浮かび上がる感情を抑え付けるように口を噤んだ。
仮の事なんざ言ったり思ったりした所でどうにもなりなんざしないってのに、忘れる事を厭うように何度も沈んでは浮かび上がる。……負ったものすら、確かめて慈しむ為だと思えはしないが。

風待ちの鳥は、行く風に追い付けねぇまま空を見上げる。その空を破ったのは空を飛ぶ為でも、目指す先は何処なのか。

……なぁ、俺は。
お前と同じ景色を、見られたのだろうか。

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196 :エルヴィン・スミス(進撃の巨人)
2014/10/09(木) 23:39

(外伝「悔いなき選択」漫画版の内容諸々がっつりネタバレにつき、注意)
(回避)>>194




……まるで泣いているようだ、と。

見上げた先に在る顔を見つめて思う。
降り出した雨が頭上から額を、顔を伝い、頬から顎まで止め処なく流れている。冷たい雨とは正反対の熱さが突き付けられた刃よりも、今は私にしか据えられていない瞳から伝わるようだった。

証拠の書類などブラフ。証拠を掴む為の演出。
そうして手に入れた「本物の」証拠は今頃ザックレー総統の手に渡り、ロヴォフの汚職は白日の下に晒されるだろう。そうなったら、もうロヴォフは終わりだ。

そう言って地面に放り投げた何も書かれていない紙と同じくらいに白く煌めく、振るわれた刃を迷いなく掴んだ。
刃を握った右の掌から血が流れ広がりながらも、構う事は無く。ただ強く握り締めるように掴んで力が籠もる。

……彼が。
本当に殺すつもりなら、巨人の肉すら断つこのブレードは受け止めた手ごと首をいとも容易く跳ね飛ばすだろう。そうならなかったのは、躊躇いがあったからだ。

それは一体、誰の、何の為なのか。

少しずつ刃を押し退け問い掛ける一方で、歯を食い縛った彼へ反駁を許さず言葉を畳み掛ける。

何処も、何も、誰も。
分からない。そうだ、何も知らない。あまりにも無知で、故にこそ無力だ。
強大過ぎる巨人という脅威に。それに怯えて壁を築き阻む者達に。障害は多過ぎるだろう。

だが、だから何もしないのか?違う。そうではないだろう、分からないなら知る為に。いつの間にか壁の中の者達は忘れてしまった、この広大な世界とその果てを見る為に。

泥濘に付いた膝や足に力を込め、確実に立ち上がりながら彼に迫った。

腕と刃程に離れていた距離と見上げていた位置は逆転し、鼻先が触れ合う程に近く彼が見上げる方となる。当の彼は立ち竦んだまま、ブレードを持った手もそのままに目を見開いていた。そんな彼の鈍色に閃きを宿す両眼を逸らさず見据えて、私を、俺を映し出させる。

――お前には、何が見える?

そうして数歩先すら見えなかった暗い雨雲も雨もいつしか止んで払われていき、代わりに晴れやかな空と陽が顔を覗かせる。
背から受ける太陽の光は、きっと眩む程に目映いだろう。同時に風も泥土混じりから、若葉のような爽やかで快いものへ匂いを変えて頬を撫で髪や外套をたなびかせて駆けていく。

それはさながら、蒼穹舞う翼を持った鳥のように。



(回避)>>194

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195 :リヴァイ(進撃の巨人)
2014/09/15(月) 23:51

(外伝「悔いなき選択」漫画版の内容諸々がっつりネタバレにつき、注意)
(回避)>>194




何の為に、此処に居るのか。
刃を突き付けながら吐く言葉が酷く白々しく、自分でも吐き気がした。

空から降り注ぐものは冷てぇハズなのに、どうしてか頭も眼前もこの心臓も身体の何処もかしこも熱い。
何故、こうなった。それはあまりにも呆気無く、それこそ巨人どもが人間をその口に放り込むくらいの簡単さで。だが、それによって払われた――失ったものは、安易でもなく。
何て割に合わねぇ……いいや、無意味な事なのだろうか。
俺がして来たのは……ファーランもイザベルも、名前すら知らねぇ奴らも。そして、俺もてめぇも。

もしも、と幾つもの可能性が浮かんでは無意味に流れていく。思った所で何も変わりなどしない。そう出来なかった今では。
滅茶苦茶になった頭の中は、浮沈も定まらない感情と失った奴らの顔ばかりが浮かんで溢れる。同じように、熱を持った何処かからも何かが零れていく。

雷鳴さえありそうなどしゃ降りの音も、クソみてぇな巨人どもが蒸発していく熱の音も、今は耳には入らねぇ。ただやたらと響くのは、俺が見下ろす膝を付いた男の声だけだ。

瞬きなんざ忘れた目の前が滲む。暈けて、見え辛くなる。
それでもこちらを見る双眸の色は変わらずに、一寸ですら揺らがねぇ。

……ああ、何処かでは分かっていたのだろう。だが認められなかったのは、その時はあまりにも失い感じたものが受け止められずに多過ぎた。
癇癪を起こしたガキのみっともねぇ我が侭のように、大人げのねぇ八つ当たりをするように。

分からない、と。
幾ら考えても、問うても、結局行き着くのは同じで。恐らく、今もこの先も。

――俺は一体、どうしたら良かった?




(回避)>>194

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194 :那/須/与/一(DRIFTERS)
2014/08/28(木) 23:51

人みたいなボロ雑巾……じゃない、ボロ雑巾みたいになっている人を見下ろす。

初めて会った時も、こんな風だった。
傷だらけで、ボロボロで。よく生きてると思う。きっとそれは、いつだって死んでもおかしくないような生き方をしているから。

それしか知らない、とこの人は答えた。そして多分、それ以外も出来ないのだろう。
いつだってそう在り続ける。それがこの人で在る証みたいなものだと思う。 

戦しか知らない。僕と同じだ。戦う事しか出来なくて、だけど僕よりも歪みは無く馬鹿みたいに、違った。馬鹿と同じで真っ直ぐで。危なっかしい……寧ろ、危ない。
そんなんじゃ、ぜんぶ、壊れてしまう。思われている事も、重ねられている事も。でもこの人は馬鹿だからそんな事なんて分からないし、知らない。

ただ関係無いと言って、前へと戦い続けるのだろう。
だけど、そんな人だからこそ付いて行きたいと思うのだろう。僕も――あの方がちらつく頭を振り、思う。
前しか向かない、戦う事しか知らないその背中に。

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193 :エレン・イェーガー(進撃の巨人)
2014/08/09(土) 23:38

戦えと警鐘が鳴る。
煩く頭に響く。

今がその時なのだと、湧き上がった衝動を行動へ変える。

爪を研ぎ、牙を剥け。
刃を突き立て、肉を抉れ。
ヤツらが獲物だ、オレ達が狩人だ。

忘れるな、ただ生かされて殺される家畜なんかじゃねぇ。

抗えと身体が動く。
たとえ残酷な世界を眼前に突き付けられても、最後の一矢になるまで、この翼が折れるまで。
脈打つ左胸に誓った思いと共に。

それは一体、何の為だ?
そんな事、問われなくたって答えは決まってる。

閉ざされた壁の向こう、憧れていた何もかもをこの目で見て。
今でもねぇ、それこそ2000年後くらいにずっと先。
その時に、ああ悪くねぇって言って死ぬ為に。

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192 :土/方/歳/三(DRIFTERS)
2014/06/01(日) 23:32

こいつは、この男は。
めちゃくちゃだ。狂ってやがる、とんだ「いかれ」だ。理解など出来ん。
一体どちらが言う台詞だと思っていやがる。まるで手前がした事など知らんとばかりに吼える。

何て奴だ。
そう思うと同時、憎い敵が、許せる筈も無い丸の十字が放つ言葉に別の意味で言葉を失う。そして「それ」を、風に煽られながら言葉を口の中で反芻する。

まさか、こんな所で、こんな奴に言われるとは思わなかった。
田舎の百姓上がりと言われて来た俺が、俺達が欲しくて求めて堪らなかったもの。そう在ろうとしたもの。……必要とされなくなっちまったものだ。

知らぬ内に口許が動いて、久しく――いつだったからかしなくなった形を作る。

――「武士」という唯一つの言葉に。

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191 :エルヴィン・スミス(進撃の巨人)
2014/04/27(日) 23:56

昼下がりの執務室。
今はまだ内々のみの「作戦」とまでも言えない単なる「案」の段階にしか過ぎない事項を書いた書面を手渡し、今後の展望を話す。何という事は無い、壁外調査の無い時の日常だ。

>「この提示した問題については――」

連なる文面を見ながら内容と共に淡々と説明していたが、ふと何気無く言葉を止めて見遣ると目の前の彼は書類は手にしつつも窓の外に目を向けていた。

>「……リヴァイ?」
#「いつも居るな、あの鴉」

話を聞いていたのか、いないのか。呼び掛けに視線を変えずに言われた言葉に、彼が向ける視線の先を見る。そこには一羽の鴉が木の枝に止まって羽を休めていた。

然したる特徴も無い黒羽の鴉だ。鴉の見分け方など分からないが、此処で鴉を見る事自体は私も何度かある。彼とて見分けは付いていないとは思うが、どうやら彼は鴉を此処でよく見掛けているようだ。

>「この辺りが縄張りなのだろう。……見るのは一羽だけか?」
#「……いちいち見てねぇ」

少しの間があった。日々の中で何気無く気になっただけなのだと、そんな響きを返答と共に額に刻まれた皺を見付けて汲み取る。
疑った所で然したる意味など無いが故に、確かにそうなのだろうと思っておく。深い意味も無い判断に横に置き、改めて見る先に居る鴉が一羽しか居ない事を確認する。

>「……鴉は、生涯で決まった一羽としか番にならないらしい」

リヴァイが視線だけ、訝しさを含ませて寄越して来た。

勿論例外はあるようだが、ほとんどはそうらしい。何処で知り得た知識だったのか、記憶が曖昧で思い出せない。それ程にいい加減なものではあるが、つい……と言うべきなのだろうか。これも何気無く、台詞が口に出ていた。

#「随分と楽しそうに喋るじゃねぇか、エルヴィンよ」
>「中央との実にもならない話し合いよりはな」

は、と吐息が短く零されて告げられる言葉に、事も無げに返す。

絶対の安寧の象徴だと思われていた壁が壊されたというのに、調査兵団の立場は危ういまま。変わらず、どころか悪くなる一方だと言っても差し支えないくらいだ。直接に巨人の脅威を知らぬ者達にとっては今の状況など対岸の火事にしか過ぎないのだろう。自らに火が燃え移らない限り、気付く事は無い。一歩踏み出さずとも目の前は暗闇、ならぬ巨人の口の中だというのに。

意識せずとも漏れそうになる嘆息の代わりに視線を戻そうとしたその時、不意に鴉の直ぐ横に一羽の鳥が降り立った。

白い鳥。私もそう鳥の種類に詳しい訳ではないが、あれは――

>「白鴉か」
#「……?」

白鴉。その字面が表すように、白い鴉だ。恐らく時折あるらしいという突然変異のものなのだろう、普通の鴉とは異なり全身が白い。

普通なら黒しか有り得ない中で生まれるという白い存在。
それはまるで幼い頃に読んだかもしれない黒い書物の中にあった、一枚だけ抜け落ちた頁のようだ。……ああ、そういえば――決して折れぬ意志のように、抗う一筋の矢のように、希望のように、それこそ「自由」のように喩えられてもいた、と思い出す。これも、何処かの何かの本で見掛けたものだっただろうか。

白い鴉は先に居た鴉の傍らに寄り添うように居る。あの二羽は番なのだろうか。分からないが、何故だか酷く似つかわしくも思える。

それぞれ違う、対照的なまでの翼の色。そのコントラストが澄み切った空の色にとても美しく映えて、重なり合う様は。

>「――まるで、私達のようだな」

短く呟き、私もまた彼を見据える。
交わる視線。こちらを見つめ、薄く開いた口は言葉を灯さず閉ざして沈黙を作り出す。

そうして落ちた静寂の中、窓外の鳥達の羽ばたく音が酷くよく聞こえていた。

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194 :那/須/与/一(DRIFTERS)
2014/08/28(木) 23:51

人みたいなボロ雑巾……じゃない、ボロ雑巾みたいになっている人を見下ろす。

初めて会った時も、こんな風だった。
傷だらけで、ボロボロで。よく生きてると思う。きっとそれは、いつだって死んでもおかしくないような生き方をしているから。

それしか知らない、とこの人は答えた。そして多分、それ以外も出来ないのだろう。
いつだってそう在り続ける。それがこの人で在る証みたいなものだと思う。 

戦しか知らない。僕と同じだ。戦う事しか出来なくて、だけど僕よりも歪みは無く馬鹿みたいに、違った。馬鹿と同じで真っ直ぐで。危なっかしい……寧ろ、危ない。
そんなんじゃ、ぜんぶ、壊れてしまう。思われている事も、重ねられている事も。でもこの人は馬鹿だからそんな事なんて分からないし、知らない。

ただ関係無いと言って、前へと戦い続けるのだろう。
だけど、そんな人だからこそ付いて行きたいと思うのだろう。僕も――あの方がちらつく頭を振り、思う。
前しか向かない、戦う事しか知らないその背中に。