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┗付箋と栞だらけのネタ帳(196-205/234)

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205 :織/田/信/長(DRIFTERS)
2016/04/01(金) 23:50

――は。……は、は。

燃える、よぅ燃えよるわ。
何も知らん敵の兵達は本陣へまっしぐら。乗り込んだと思っても、そこは既にもぬけの空よ。
押し寄せた満員御礼の場所の奥、歓待は腹ならぬ樽一杯の油。

そこに火矢を掛けたら――あとは広がるだけ。

周り一面の劫火に逃げ出そうと思うても出口はひとつ。そこを塞ぎゃあ、袋の鼠。
ああ、窓から抜け出そうとした奴らが居よるわ。ほら撃て、出て来るものに向かって撃つだけの猿でも出来る簡単な事であろ。
止まらぬ火矢であっという間に火は回り、此処からでもよぅく見える。

愉快、なぁ、楽しいなぁ。取り籠めて燃やす。
お前も俺を見て、そう思ったのであろ。

……なぁ、みつひでめが。

>(ぶぇーっくしぇい!あー、クシャミ止まらんあの金柑頭ゆるさん)

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204 :エレン・イェーガー(進撃の巨人)
2016/01/11(月) 23:17

空を見ていた。
見上げた先に在る空は、青くて広くて――白い雲が流れていく中を、鳥が飛んで行く。

あの鳥は何処まで飛んで行くのだろう。きっとオレの知らねぇ世界の何処かなんだろう。
炎の水、氷の大地、砂の雪原。それがどんな所かなんて、アルミンが見せてくれた本の中でしか知らない。
知らねぇのは、何でだ?

壁。世界。巨人。王政。
そして、「あの日」。

ぐるぐると断片的に言葉と映像が頭の中を廻る。
――オレ達は、何て不自由なんだ。

行き場の足りねぇ憤りの腹の底から沸いて来る。それなのに、オレ達は今何も出来ねぇなんて。
届きなんざしないって分かってるのに、思わず天に伸ばした手。
その指に、風に揺られて白と黒の羽根が掠めていった。

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203 :斎/藤/一(薄桜鬼)
2015/01/25(日) 23:52

組の一人として、己の剣技を磨く事は重要だ。だが、それだけでは成り立たない。扱う獲物――刀の扱いについても決して軽んじてはならない。日頃の鍛練と同様に刀の具合にも気に掛け、時に手入れに出す。今日は、手入れが必要な刀を集めて研ぎに出す日だった。

勿論手空きの時間に手入れはするものの、やはり自分でやるだけでは限界がある。万全の状態で日々の職務に励む為にも、定期的に刀を研ぎに出す事になっていた。

当番、ではないが、各々が常に持つ刀を纏められている機会など無く、集められた刀達を研ぎ師に出す前についつい眺め見てしまう。そうしていると、そこへ偶々通り掛かったらしい総司が部屋の中を覗き込んで来た。

>「あ、もう研ぎに出す日?僕のも出しておいてよ」
#「総司……何故それを俺に言う」
>「ちょうど良いじゃない」

呆れて溜め息混じりに窘めるが、まともに聞く気配は無い。
仕方無しに総司から二本、手持ちの刀を受け取って他と並べる前に刃の具合を確かめてみる。

#「……また随分と無茶をさせたな。難儀ではなかったのか」

受け取った二本の打刀。俺は刀鍛冶ではないが、それでもこの双方ともが随分な状態だと直ぐに分かった。

刃は毀れているとも言って良いのではないかと思える程の小刻みな鋸状。振るう内に元よりも反った刀身は、通常なら鞘から抜くのも支障があるのではないかと思うくらいだ。更によく見ると、切っ先もほんの少し欠けていた。

あらゆる状況下で斬り合う事など日常茶飯事な組では、斬り合う中で刀の状態をいちいち気にする事など出来るものではない。故に、どうしても刀に無理を強いてしまう事も多い。特に総司などは実力が際立っているが、同時に斬る者の数や立ち回る場数も多くなるが故に刀の損耗も激しくなるのは道理だろう。

しかしこれでよく、あれだけ戦えるものだ。鞘に刃を戻して問うと、総司は小さな空咳の後に肩を竦めた。

>「んー……まぁ、ね。でもまだ、使えるから。そうでしょ?」

折れてはいないから。まるでそう続くように言う。

……確かに、使えぬ訳ではない。総司の性格から言って、単に懐の都合で買い替えぬという事でもないのだろう。総司なりに気に入って、いや、思い入れがあるのかもしれない。

刀は己の心を映すとも言う。
確かにまるで持ち主のようだな、と思う。副長の刀も研ぎに出す事になっていた為に見させて貰ったが、外面の美しさと内面の実用性を兼ね備えた様はあの人らしい。
そして総司の使う刀は、扱い難い刀だ。しかし反面、よく切れる良い刀でもある。それを今の、ここまで消耗させる程に使い込んでいる。

……それはまるで、今の総司そのものを表しているかのようだ。扱い難く、だが誰よりも敵を斬り、己の命を削るその様に。

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202 :エルヴィン・スミス(進撃の巨人)
2015/01/05(月) 23:53

問われて、思い出す。

今は遠く、自分でも忘れ掛けていたくらいにずっと彼方にあった。同時に今も近く、自分でも気付いていなかったくらいにずっと胸の内にあった。
そのくらいに遠くて近い、自分自身の事を。

心臓は人類の為に捧げた筈だった。そう皆にも言い続けて、そうさせて来た。
その目的の全てが間違っていた訳ではないのだろうとは思う。だが、それよりも強く突き動かしていた衝動は違う。
自分自身ですら、とんだ勘違いをしていたのだ。

英雄か聖者のような、尊さのあるものからではない。そんな綺麗なものになど元からなる気は無かったが、恐らく告げられた「悪党」よりも性質が悪い。

他の全てよりも、ただ自分の為に。

その為に父を見殺しにした。
数え切れない部下や同僚を犠牲にした。
多くの壁の中の人間を混迷と狂乱へ招いた。
必要だと言って彼を地下よりも酷い地獄へ引き上げた。
希望だと言ってまだ若い者達に残酷な決断を強いらせた。

それは全て、ただひたすらに在り続けていたものの為だった。
何を言われても。どんな他のものを切り捨てても。

私には。……いや。
俺は、抱いた夢を見続けていた。

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201 :リヴァイ(進撃の巨人)
2014/12/13(土) 23:39

(外伝「悔いなき選択」漫画版の内容諸々がっつりネタバレにつき、注意)
(回避)>>200


ずっと、この世界はドブみてぇなクソッタレなもんだと思っていた。

恐らく、それが今もそう変わっちゃいねぇのだろう。狭い壁に囲まれ、汚水に満たされて死んでいくだけの。
普通だと思った異常。何処から生まれたかも知らねぇ内から、見て、触れて、吸って来た世界はそのハズだった。

そう思い込んでいた事が引っ繰り返されたのは、あの日。少なくとも俺にとっては、忘れもしない日だ。

眩しくて目を細めた。その後に、見入って目を見開いた。
何処までも蒼く、何処までも広く。この先に何があるのか、今の地獄のような状態と同じく分からないものであっても。
そしてあいつ越しに見上げた空の色と、駆け抜けた風の匂い。壁の外の、自由たる世界の色彩を。

何も知らなかった。何を知っているのか、知らないかを思い知った。

そうして、今。
俺にとっては、ではなく、人類全体……いいや、世界にとって、全てが変わろうとしている。
委ねられているのは迷う暇すら与えられねぇ一人のガキで、そうしたのは俺達だ。
人類の希望、と――何とも身勝手な御題目を引っ被せて。

バカげていると思う反面、ただ、と少しだけ数年前を思い出す。
突き付けた代わりに、突き返された言葉。
あの日刃を掴んだあいつの右手は今、腕ごと無く傷跡があるかどうか確かめる術は無い。同じように、あの日言われた言葉が果たして今も変わらないのか、確かめる方法を俺は知らない。

だが、そうだとしても。
あいつが選択し、進む道に。俺はそれに従い、信じるまでだ。今までも、これからも。静かに滲む感情を、冷たく底に押し込んで――たとえ、あいつの思いが分からなくとも。
それが、俺の選択だ。



(回避)>>200

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200 :土/方/歳/三(薄桜鬼)
2014/11/09(日) 23:36

……恐らく切っ掛けは、そう大したものではなかった。
それがいつの間にか降り積もって溜まり募って、溢れるようになった。

言った自分の言葉は忘れちまっていても、聞いた言葉は覚えているものだから不思議だ。
何もかも言葉通りで、欲しているものですら見通されちまってるようで。それがまた申し訳なくも、嫌じゃねぇと思う辺りもう、手遅れなのだろう。

どうにもならねぇのだ、と告げた時とは違う意味で今は思う。
変える事も変わる事も容易になんざ出来ねぇ。抱えたものですら、恐らくは。口にする言葉は大事な時ほど支離滅裂で、みっともねぇ事この上ねぇ。……ただ、それでも、だからこそ。

見つめる空色が俺だけを見て、俺もまたそれを見続けていてぇと思う。……多分これから、この先もと――思えるのは、お前だからなのだろうか。

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199 :主人公(奏(騒)楽都市OSAKA)
2014/11/07(金) 23:36

また帰るのが遅くなったな……編集の時はいつも遅くなるし、今回のリンク先は悩んだから余計にか。ただいまーっと、誰も居ないけど。
部室は掃除してるけど、自分の部屋もそろそろ掃除しないとなぁ……。溜まった清掃チップ使えねぇかな。
あーあ、洗濯物も何処のハリウッド的な何段バーガーになってるしな……食う時ならぬ着る時は積み木崩しだけど。さて、取り敢えず引っ繰り返して……ん?何か落ちたな。

――スティックな一口羊羹×2。

え、何だこれ。
しかもコンビニとかスーパーに売ってる奴じゃなくて、すげぇ地方の土産物屋的な所にありそうな箱入りとか。一体誰が――

>「ああ、それな。土産や」

あの、文音先輩?アンタ行ったの思いっきり反対方向ですよね?何で全然関係無い物をってか勝手に洗濯物の中に入れ……いや、その前にどうして部屋に入……って聞いてねぇ!

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198 :エレン・イェーガー(進撃の巨人)
2014/10/27(月) 23:32

(外伝「悔いなき選択」漫画版のネタバレ含む為、注意)
(回避)>>194



口の中に、甘い味が広がる。
バカみてぇにぼんやりと甘さを味わっていたから、背後からの突然の強襲に咄嗟に反応出来なかった。

#「エッレーン!」
>「ぶはっ!?」

倒れる事だけは何とか回避したものの、思わずよろめいて前へつんのめる。
背中やら頭やらがぶつかった所為で痛むのを耐えながら振り返るとそこに居たのは、やっぱりと言うべきか、ハンジさんだった。

#「何、なにどうしたの?って、それ……」
>「え、あ……リヴァイ兵長が」

手に持っていた袋に気付いて、ハンジさんが問う。その中身を改めて見ながら、オレは少しもたつきながら頷いた。

貰ったというか、押し付けられたというか。いや、押し付けられたとか流石に失礼だろ、オレ。

……けど、甘いものなんざ、いつぐらい振りだろうか。壁が破られる前でも、資源の限られた壁内では甘い菓子は嗜好品であり貴重品だ。そうそう気軽に口に入れられるようなものじゃねぇ。そりゃ中央の店では扱ってるだろうし、オレみたいな新兵よりは兵長の方がずっと手に入れやすいといえばそうなるかもしれねぇけれど。

そんな思考がぐるぐると頭の中を廻ると何となく言葉が続き難くなっちまって、口の中に入った物を齧る。

ポリ、と軽い音が耳の奥を響かせる。ふと気付くと、ハンジさんがやたらと近い位置でオレを覗き込んでいた。

#「リヴァイが、か……。ねぇ、美味しい?」

それ、と袋を示す。
緩く首を傾げて問い掛けるその姿に、どうしても重なる面影があった。

……オレにくれたこの袋の中身。
てっきり誰か……兵団の人達に貰ったと思ってたけど、兵長は街に行く用事があった時に買ったのだと言われた。そう、わざわざ買ったんだ。兵長自身は紅茶とか掃除道具とか自分の物はそれくらいで、甘いものを買うなんて想像出来ねぇのに。それもきっと、自分が食べる為じゃねぇのだろう。

だったら、何で。
疑問を持て余したまま頷きだけを返したオレに、ハンジさんが目を細める。

#「……そっか。良かったね」

ああ、同じだ、と思う。オレを見る眼差しが、この袋を受け取ったオレを見る兵長の目と。言葉すらも、重なっていた。
普通、買うハズのねぇ物。それを一体、どういう思いで、どんな顔をして買ったのだろうか。

口の中は甘いハズなのに、じわりとよく分からねぇ胸の奥から苦いものが滲んで来る。

分からねぇ、と思うのは多分――二人が向けた言葉も瞳も、オレじゃねぇ誰かを見ていたからなのだろう。



#「そういえば私、最初の頃はリヴァイの事を『君』って呼んでたんだよね。今でも偶に呼ぶけどさ」
>「え?」
#「だって、あの見た目だよ?分かんないじゃん!後で聞いたんだけどさー、今思い出してもクッソ笑える!」
>>「……ほぅ、そうか」

あ。今すげぇ後ろ振り向きたくねぇ。




(回避)>>194

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197 :リヴァイ(進撃の巨人)
2014/10/14(火) 23:38

今でも思う。こうしていたら、と覆しようもねぇクソみてぇな事を。

後悔は、と呟き掛けて浮かび上がる感情を抑え付けるように口を噤んだ。
仮の事なんざ言ったり思ったりした所でどうにもなりなんざしないってのに、忘れる事を厭うように何度も沈んでは浮かび上がる。……負ったものすら、確かめて慈しむ為だと思えはしないが。

風待ちの鳥は、行く風に追い付けねぇまま空を見上げる。その空を破ったのは空を飛ぶ為でも、目指す先は何処なのか。

……なぁ、俺は。
お前と同じ景色を、見られたのだろうか。

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196 :エルヴィン・スミス(進撃の巨人)
2014/10/09(木) 23:39

(外伝「悔いなき選択」漫画版の内容諸々がっつりネタバレにつき、注意)
(回避)>>194




……まるで泣いているようだ、と。

見上げた先に在る顔を見つめて思う。
降り出した雨が頭上から額を、顔を伝い、頬から顎まで止め処なく流れている。冷たい雨とは正反対の熱さが突き付けられた刃よりも、今は私にしか据えられていない瞳から伝わるようだった。

証拠の書類などブラフ。証拠を掴む為の演出。
そうして手に入れた「本物の」証拠は今頃ザックレー総統の手に渡り、ロヴォフの汚職は白日の下に晒されるだろう。そうなったら、もうロヴォフは終わりだ。

そう言って地面に放り投げた何も書かれていない紙と同じくらいに白く煌めく、振るわれた刃を迷いなく掴んだ。
刃を握った右の掌から血が流れ広がりながらも、構う事は無く。ただ強く握り締めるように掴んで力が籠もる。

……彼が。
本当に殺すつもりなら、巨人の肉すら断つこのブレードは受け止めた手ごと首をいとも容易く跳ね飛ばすだろう。そうならなかったのは、躊躇いがあったからだ。

それは一体、誰の、何の為なのか。

少しずつ刃を押し退け問い掛ける一方で、歯を食い縛った彼へ反駁を許さず言葉を畳み掛ける。

何処も、何も、誰も。
分からない。そうだ、何も知らない。あまりにも無知で、故にこそ無力だ。
強大過ぎる巨人という脅威に。それに怯えて壁を築き阻む者達に。障害は多過ぎるだろう。

だが、だから何もしないのか?違う。そうではないだろう、分からないなら知る為に。いつの間にか壁の中の者達は忘れてしまった、この広大な世界とその果てを見る為に。

泥濘に付いた膝や足に力を込め、確実に立ち上がりながら彼に迫った。

腕と刃程に離れていた距離と見上げていた位置は逆転し、鼻先が触れ合う程に近く彼が見上げる方となる。当の彼は立ち竦んだまま、ブレードを持った手もそのままに目を見開いていた。そんな彼の鈍色に閃きを宿す両眼を逸らさず見据えて、私を、俺を映し出させる。

――お前には、何が見える?

そうして数歩先すら見えなかった暗い雨雲も雨もいつしか止んで払われていき、代わりに晴れやかな空と陽が顔を覗かせる。
背から受ける太陽の光は、きっと眩む程に目映いだろう。同時に風も泥土混じりから、若葉のような爽やかで快いものへ匂いを変えて頬を撫で髪や外套をたなびかせて駆けていく。

それはさながら、蒼穹舞う翼を持った鳥のように。



(回避)>>194

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200 :土/方/歳/三(薄桜鬼)
2014/11/09(日) 23:36

……恐らく切っ掛けは、そう大したものではなかった。
それがいつの間にか降り積もって溜まり募って、溢れるようになった。

言った自分の言葉は忘れちまっていても、聞いた言葉は覚えているものだから不思議だ。
何もかも言葉通りで、欲しているものですら見通されちまってるようで。それがまた申し訳なくも、嫌じゃねぇと思う辺りもう、手遅れなのだろう。

どうにもならねぇのだ、と告げた時とは違う意味で今は思う。
変える事も変わる事も容易になんざ出来ねぇ。抱えたものですら、恐らくは。口にする言葉は大事な時ほど支離滅裂で、みっともねぇ事この上ねぇ。……ただ、それでも、だからこそ。

見つめる空色が俺だけを見て、俺もまたそれを見続けていてぇと思う。……多分これから、この先もと――思えるのは、お前だからなのだろうか。

194 :那/須/与/一(DRIFTERS)
2014/08/28(木) 23:51

人みたいなボロ雑巾……じゃない、ボロ雑巾みたいになっている人を見下ろす。

初めて会った時も、こんな風だった。
傷だらけで、ボロボロで。よく生きてると思う。きっとそれは、いつだって死んでもおかしくないような生き方をしているから。

それしか知らない、とこの人は答えた。そして多分、それ以外も出来ないのだろう。
いつだってそう在り続ける。それがこの人で在る証みたいなものだと思う。 

戦しか知らない。僕と同じだ。戦う事しか出来なくて、だけど僕よりも歪みは無く馬鹿みたいに、違った。馬鹿と同じで真っ直ぐで。危なっかしい……寧ろ、危ない。
そんなんじゃ、ぜんぶ、壊れてしまう。思われている事も、重ねられている事も。でもこの人は馬鹿だからそんな事なんて分からないし、知らない。

ただ関係無いと言って、前へと戦い続けるのだろう。
だけど、そんな人だからこそ付いて行きたいと思うのだろう。僕も――あの方がちらつく頭を振り、思う。
前しか向かない、戦う事しか知らないその背中に。