「今はちゃんと見て。帰りは上着貸して。丹恒のだから、ちゃんと隠して」

開拓の旅の同行者としての三月なのかの我儘には、呆れさせられることも少なくはないが。
…恋人としての我儘になると、途端にどれもこれもが愛らしいと感じる。恋は盲目だとはあまりに使い古された表現だが、最早そうとしか言い様がない。そんな俺の心境を知ってか知らずか、おねだりの三段重ねとは恐れ入った。
甘やかし過ぎているのだろうか。…俺がそうしたいと思ってしまうのだから、もう、どうしようもない。


「丹恒の為にしたおめかしだもん、崩すのも丹恒の役目だから」

とんだ殺し文句だ、と思う。
唇に乗った色も、綺麗なドレスも、勿体無くて触れるのに躊躇した。なのにお前ときたら…本当に、毎度あっさりと俺の理性を揺さぶって来る。

…性的嗜好とは、その殆どが後天的なものだ。持明族の俺からすれば尚のこと。だと言うのに。
お前が俺に植え付けた劣情は、欲は、こんなにも形を変えて肥大してしまったぞ、三月。
責任を、取ってくれ。

丹恒が甘やかしてくれるのがいつも嬉しいし、殺し文句はわかんないけど思ったことを言ってるだけだよ。責任は取るから任せて！だってずっと一緒って約束してるし、丹恒がそんな風になるのウチにだけって知ってるから。もっと夢中になっていいよ、その分たくさん幸せにしてあげる！


Dan Heng

今日は丹恒とピノコニーでデートの日！約束してたアルバムを買いに行ったんだけど、入ったお店にすごく可愛い限定コフレがあって、店員のお姉さんに説明されてる内に欲しくなって、試させて貰ったんだ。大人っぽいメイクをして貰って、その姿がいつもと違うウチって感じでそわそわしちゃった。丹恒も見惚れてくれて、それでクリスマスプレゼントとして買ってくれることになったんだけど、丹恒ってば自分の前だけでつけて欲しいって言うんだもん。店員さんもいたから恥ずかしかったけどそういう独占欲もやっぱり嬉しい。丹恒がプレゼントしてくれた化粧品でますます美少女になっちゃう！

アルバムもウチと丹恒の色をした新しいのが増えて、早速撮った写真を入れたんだ。これからまた増えていくのが楽しみ！

▽

そのあとは夢境ショップに遊びに行ったよ。おすすめの夢を見たんだけど、すごく不思議な体験だった。記憶を失くした、というかウチと出逢う前の小さな丹恒とクレープを一緒に食べる夢。これは書くと丹恒が恥ずかしがっちゃうから大事な思い出として胸にしまっておく。クレープ食べに行く約束、忘れないでね！
ああ、今ならもっと上手に食べられる。

それから今日のメインイベント！夜になってからシヴォーンのお店に行ったんだ〜。いつ来てもおしゃれでなんかちょっとだけ大人の気分を味わえるお店。丹恒と約束してたから目一杯おめかしをして、バーで待ち合わせたんだ。つい気持ちが逸って早く着き過ぎたけど、後から来た丹恒が固まってどうしたのかと思ったらまた見惚れてくれたの！今日2回目だけどめちゃ嬉しい。普段の丹恒は外ではちょっとすんってしてるけど今日は二人きりのときにだけ見せる特別な顔をしてた。
すん……？
ウチに夢中になってくれてるのがわかって幸せ。グラスが空になるとチークダンスに誘われて、丹恒のリードで踊るのも楽しかったよ。ウチってばダンスも筋も良かったよね、褒めて褒めて！

また忘れられない思い出が増えたね。今日はね、丹恒とずっと手を繋いでるの幸せだったし、ダンスのときの横顔が綺麗でね、思わず見惚れちゃった。 ずっとこの先も何回でも丹恒に恋するんだろうなってそんな気がする。大好きだから仕方ないよね！

そういえば、以前は外で手を繋ぐのも憚っていたような気がする。いつの間にかお前と二人の時は当たり前になっているな。…今夜の三月は特に綺麗だが、こうしてお前に見惚れるのももう何度目か分からない。未だ、もう少し、…もっと。俺の為だけの、特別なお前を独り占めさせてくれ。


March 7th

「丹恒の為におめかししたんだよ」

無防備な寝顔、口許の涎。
よだれは書かなくていいのに〜！
寝惚け眼でまだ眠いと駄々を捏ねる姿。
拗ねた顔。
”可愛いもの”に目を輝かせる横顔。
化粧を乗せて、大人びたかんばせ。
はにかんだ表情。

…もう全て俺のものなのに、そのどれもを、それ以外も、叶うことなら全て独占したいと思ってしまう。我ながら強欲で呆れる。


特別なドレスに身を包んだ三月と、シヴォーンのバーで待ち合わせをした。店に着いた時、先にいた三月が……あまりに綺麗で。…一目見た時から、もう酔わされている。

夜はまだ、これから。

あとでウチも書きたいことあるからそっちで書くけど、丹恒が見惚れてくれるのが嬉しい。もっと夢中にさせるから覚悟しててね！


Dan Heng

どうも～皆さんお待ちかね、優良商人あなたの心の友、サンポですよ～。コールドフットマートでのお買い物はお楽しみ頂けてますか？当店で商品ご購入の際は是非是非レビューの投稿を宜しくお願い致します。勿論出来れば高評価で！
サンポちゃんってばまた面白そうなこと始めちゃって、花火を混ぜないなんてひどいから低評価！

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…と、勢い任せに筆を執ったはいいものの。何を書きましょうか…僕の悩みでも聞いてくれます？実は近頃ベロブルグの地下に怪しい人物が紛れ込んだようでして。どーーーも僕の商売の邪魔ばっかりして来るんですよ。どう思います？酷いと思いませんか！？あぁ、僕はこんなにも真面目に働いているというのに！

その不審者は地下で暮らす方々に僕の悪評をばらまいているようなんですが、そのどれもが突拍子も無さ過ぎて…曰く、「シノビでラッパー」ですとか、「実は虚無の使令」ですとか、「仙舟を追放された龍尊が姿を変えている」等々……あ～困ります、困りますお客様！幾ら宇宙広しと言えどそんな人が本当に存在するはずがないでしょう！…ねえ？

ですが、なんと、今回に限り！その不審者の有益な情報を入手したんですよ！と、言う訳でそいつを見付け出してとっちめて下さいませんか？ええ、はい、それはもう、報酬は弾みますとも！

【不審者情報】
長身の男／緑の瞳／青い髪に白い襟足

えーー！サンポちゃんってば、色んな人から恨み買ってない？サンポちゃんの悪評を流すなんて何処の誰なんだろうね、「ツガンニヤの生き残り」だとか「妹溺愛の手羽男」だったり、ほんと嫌になっちゃう！え、なんでそんなこと知ってるかって。そんなのもうサンポちゃんならわかってるんじゃない？“答え”見つけてごらん。ねえ、サンポちゃん。花火が言いたいこと、わかるでしょ？早く花火のこと楽しませてよ、そうじゃないと…ふふ、どうなっちゃうのかなぁ、楽しいね！花火のこともっと楽しませて、退屈なんてつまんない。楽しませてくれないとエメラルドみたいに綺麗なその瞳を貰うのも悪くないかも。なーんて！



Sampo

湯浴みを済ませ部屋に戻ると、丹楓がいつものように尻尾の手入れをしてくれた。最早日課であるこの時間が心地良くて、丹楓の膝に頭を預けて手入れをして貰う贅沢なひととき。手入れが終わって眠りに就こうとすれば、容易く組み敷かれてしまい、それを拒まないあたしも同罪だと思いながらも肌を重ねた。一度だけですよ、と言えば「二度は嫌か？」と何処で覚えたのか渾身のおねだりをしてきた。明日の診療に影響が出るのではと懸念したけれど、我が背の君はそんなことお構いなしらしく、「余が満足するまで」なんて言うんですよ。本当に仕方のない人。それを受け入れるあたしも彼のことは言えないけれど、眠る前のこの時間がより一層愛おしくなる。

あなたの呼吸が、肌に触れる。あなたの熱が、あたしに伝染る。あなたの瞳に映るあたしは、他の誰にも見せない顔をしている。あなただけが知るあたしの表情、あなたのものである証。

あなたの腕の中、あなたに満たされて眠りに就く。幸甚の至りとは、きっとこういうことを指すのだろう。

寝所のつくりも、お前のにおいも変わらぬと云うのに、如何してか恋しくて仕方がない。たった一夜の独り寝と、たった半日の儀にそれ程の効果があったとは…余は未だ”魔法”に掛かったままであろうか。
一度、と限られるのが気に食わん。お前を愛するのに際限を予め決めるなど面白くない。余を拗ねさせても良いことはないだろう、白珠。明日万一睡魔に襲われたら……何時もの場所で昼寝をすればよい。

未だお前を愛し足りぬ。我らの命はかくも永いと云うのに、お前を抱くには夜があまりに短過ぎる。



Bai Heng