ようやく穹が自分の部屋を整えることになった。三月に聞かされるまであの部屋の現状を知らなかったから、ずっとダンボールで寝ていたとは驚いたな。俺の布団にどうこう言える立場ではなかっただろうに。
……そういえば以前、列車のバスルームに三月と二人で云々…という旨をここに記したことがある。よく考えてみればおかしなことだ、
三月の部屋にはちゃんとバスルームがあり、”列車のバスルーム”なんてものは存在しない。恐らくアスデナ星系の憶質の影響だろう。そう、この列車の各個人の部屋には元々隠しバスルームが存在する。
始めからそうだった、当たり前のことだ。▼
一日掛けて片付けを手伝って…三人でああでもないこうでもないと話しながらリフォームの準備を進めて行く。そうしているとなんだか、あの頃…三月と交際するより以前と何も変わらないような気さえして来る。そこに寂寥感は無く、どちらかと言えば、温かな安心感を覚える。
…だが、夜になり眠る時間が近付くと、俺は資料室ではなく三月のベッドに入るのが今では当たり前になった。そうして傍に寄れば、三月が俺の名を少し柔らかい声で呼んで、ふわりと笑う。その笑顔が昼間に見せていたものと違うことを知っているのは…この宇宙で俺だけのはずだ。
寝るまでのこのひとときの間、お前は俺だけのものになる。今ではその時間が何より愛おしく、何ものにも代え難い。
目まぐるしい一日だったね、でも丹恒と当番するのも楽しかったかも。あの子の部屋が豪華になってめちゃくちゃいい冷蔵庫もあったからアイスキャンディー作らせて貰わないとね!
寝る前の丹恒と二人きりの時間が好き、ウチだけが知ってる丹恒の特別な顔と声はずっとずっと特別だもん。大好きだよ、ほんとに。我儘も全部愛おしいんだ〜。だからね、今夜もくっついて一緒に寝ようね!※メタ注意
そちらばかりはでなく、俺のことをもっと良く見てくれ、他の何にも目をくれず、俺だけを見ろ──と、とんでもない我儘が胸に芽吹いて、己の傲慢さに驚いてしまった。……どちらも、俺なんだが。この身を二つに分かつ事が叶えばどんなにか。(それはそれで、別の問題が浮上するのは目に見えている…)
Dan Heng