キメラと草原を駆け回ってみたいと云う。その程度、直ぐに叶うだろうと話したことがあった。…だが彼女は頑なに首を横に振り続けた。
”万が一があったらと思うと”…と、そればかりを繰り返す。
俺でなくとも、あの救世主、トリスビアス、アグライア──皆、”普通”に接しているように見える。お前は気に負い過ぎだと説得を試みたが……俺の考えが甘かった。
一千年。それほどの時間を孤独に過ごす中で積もり続けた雪は、そう簡単に解けないのも必然というもの。
…だが、それでも、お前の願いを叶えたかった。
青々とした草を踏みしめ、花に囲まれる場所で、あの小さく愛らしい生き物に囲まれて笑うお前が見たかった。
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結果として、少し離れた場所で自由に遊ばせるキメラを眺めることとなった。お前の言う”万が一”からお前自身を守るために
(という大義名分のもと)、俺の膝に
(やや強引に)乗せる形で座らせ、俺が手折った花で冠を編ませ……器用にかたちを造って行くその細指を眺めるだけの時間が、ひどく愛おしい。
今気が付いたが、俺はお前が何かをつくっている仕草を見ているのが好きなのかもしれん。
少しばかり悪戯を仕掛けた結果、茹でた蛸のようになってしまったお前がキメラたちに不思議がられ、必死に誤魔化すさまは中々に愉快だったな。思わず笑えば眼差しで文句を言って来る、その顔がまた愛らしくてたまらない。
外であのようなことをなさるとは思いませんでした…。あの日以降、あのキメラさん達が声を掛けてくれるようになり、生命の花園を訪れる度にお話をしています。時折モーディス様のことも教えてくださいます。モーディス様はあの子達にも好かれているのですね。…私も好きな食べ物を教えていただいたので今度差し入れをします。また出掛けられる日を楽しみにしています。Mydei