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┗130.BLUE LAGOON

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1 :二人の冒/険/者(F/F/X/I/V)
2024/07/08(月) 23:03

BLUE LAGOON 誠実な愛


冒険者2人の日常や非日常を綴る日記。

※捏造多め、閲覧は自己責任で。
 詳しくは諸注意を。



諸注意 書き手



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29 :弦月
2024/11/15(金) 02:41

髪色と髪型を変えた。

……また?って思うかもしれないけど、これでも最近は落ち着いた方なんだよ。自覚あるんだけど俺って飽き性で、ずっと同じ髪型とか髪色のままだと自分で見飽きちゃうんだよね。だからこれは気分転換の一種。思えば彼に出会ってからは長い間黒髪だったから、他の色は久し振りかもしれない。

反応が見たくて何も言わずに待ち合わせ場所に行ったんだけど、翠縹の彼といったら俺に気付かず素通りしてさ。おかしいなぁ居ないなぁって顔してるから、服の裾掴んで引っ張ってあげた。「おまたせ」って言ったら目をぱちぱちして固まってた。「どう?」って聞いたらようやく「可愛い、似合ってる」って反応が返ってきた。俺が欲しかったのは『格好良い』なんだけど、うーん……まぁいっか……

「どうりで君の匂いがすると思った」って言ってたけど、俺の判断基準って匂いなの……?え、臭くないよね?

いつもいい匂いがしてる。
新しい髪型は本当に似合ってたよ。5000ギル用意しておくから撫でさせて欲しい。

もう、それ忘れて良いから!
その程度で金取るわけないじゃん。
……臭いわけじゃないなら……まあ、いっか……


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28 :弦月
2024/10/22(火) 12:03

クルザスにオーロラを見に行った。そういえば前にここでそんな話をしたんだったなって思い出して、天気予報確認して彼を連れてったんだ。

クルザスは酷い吹雪で、これ本当に晴れるのかっていう心配より何よりとにかく頭が痛くて、来たことをちょっとだけ後悔した。どうにかならないのかなぁこれ。そんなことしなくたって俺はあの日のことを忘れたりしないのに、余計なお世話だよね。

天辺を超えた頃にぱったりと雪が止んで星が見えてきた。久々に見るクルザスの夜空は広くて、星が沢山あって……緑色のオーロラが見えてきたとき、初めて見るわけじゃないのに「きれい」って言っちゃった。これが俺の忘れかけてたふるさとの空なんだなって思ったら何だか切なくなって彼に話しかけて誤魔化した。オーロラはやっぱり彼みたいで、優しくて穏やかな光だった。

少しだけ、幸せかもしれないって思った。少しだけ。


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27 :弦月
2024/10/11(金) 12:25

「あ、俺余計なこと言っちゃったかな」って思ったんだよね、正直。そこに故郷があるんだし、帰ろうとすればいつでも帰れるでしょって簡単に考えてたから。

ボロボロの姿を見てぎょっとしたのと同時に上手く行かなかったんだろうなってのは察しがついたし、彼の絶体絶命の状況を前に体は勝手に動いてた。射た矢は狙い通り大熊へ突き刺さってその巨体を仕留めるに至った。普段俺を見たら途端に綻ぶ顔にあからさまに翳りが見えて、咄嗟に手を差し伸べた。

「帰ろ」なんてありきたりな言葉しか出なかった。もっと格好良いことが言いたかったな……。前に兄貴だったか兄さんだったか……んー、こういうことを言うのは兄さんかな?「帰る場所なんて何個あったって良い」って言ってた。まあ、兄さんの言う帰る場所って多分みんな女のとこだろうけど。

だからさ、良いよ。たまには俺のところへ帰って来ても。


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26 :翠縹
2024/10/10(木) 13:58

結局、あのクヌギの木を離れた後もまた森に迷わされて暫くさ迷い続ける羽目になった。

空を覆う様に茂る木々が鬱陶しくて、ずっと胸の辺りが重苦しくて、野宿続きで疲労も溜まっていて、泥で汚れた装備に身を包んで歩く自分は険しい顔をしていたと思う。一刻でも早く森から出たくて仕方がなかった。

どれくらいさ迷っているのかも分からなくなってきた時にふと周囲に獣臭が漂っていることに気が付き、背負っていた槍を手に取って辺りを見回すと少し離れた場所から大熊がこちらの様子を伺っていたのが目に入った。黒衣森にはあんな大熊はいないはずだし、逃げる素振りを見せるどころか鋭くこちらを睨み付けながら一歩一歩近付いてくる大熊に緊張が走り、槍を握る手に力が籠った。

こちらを全く恐れずに距離を詰めてくる大熊に思わず一歩下がる。運悪く落ちていた小枝を踏んでしまい、不気味な程に静まり返った森に乾いた音が響いたのが合図だった。

唸り声を上げてこちらに突進してくる大熊に向かって、こちらも槍を構え地面を強く蹴る。体の大きさの割に反応が早く、鋭い爪で槍を叩かれ初手をかわされた次の瞬間に左側からカウンターが入り咄嗟にかわしたが服が引き裂かれた。

一人で、それも疲れ切った体で戦う相手では無いことはわかっていたが、あの時の自分は自暴自棄になっていて冷静ではなかったのだと思う。逃げるという選択肢を選ばなかった俺は、ただただ胸の中の重苦しく淀んだ感情を晴らしたいが為に槍を握って再び地面を蹴り上げていた。

…………自分の帰郷に気が付いた兄が駆けつけてくれるかもしれないと、どこかでまだ淡い期待を抱いていたのかもしれない。



大熊に致命傷を与えることもできず、軽く爪が掠めた脇腹に血を滲ませ返り血で顔や衣服を汚す泥仕合を暫く繰り広げていたが、結果的に助けが来ることはなかった。

漸くのことで諦めが付いたのと同時に体が限界を迎えたのか木の根に足を取られてバランスを崩し、それを見逃さなかった大熊が左腕を大きく振り上げる。鋭い爪が振り下ろされる光景がスローモーションで瞳に映った。ああ、これはまずいな……と思った瞬間、大熊の左胸に矢が刺さり、寸のところで動きを止めた大熊が地面に倒れた。


「遅いから迎えに来た」

大熊の心臓を一発で射抜き、地面に膝を着く俺に手を差し伸べてくれたのは戻りが遅いことを心配して探しに来てくれた弦月の彼だった。何もかもが上手くいかず情けないところを見られて何も言えないでいたが、全てを悟った彼は汚れた手を握ってただ一言「帰ろ」と言ってくれた。

その言葉がじんわりと胸に染み込んでいくような心地になって、息苦しい程に重く胸の中でつっかえていたものが消えていく気がして、それでも悲しいという感情は無くなってはくれなくて。色んな感情でいっぱいいっぱいになってしまって、彼の言葉にただ頷いて手を握り返すことしかできなかった。

あの時は言葉に出来なかったが、君が迎えに来てくれたことが嬉しかったし、泣けてくるくらいに安心したんだ。

迎えに来てくれてありがとう、__。


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