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┗130.BLUE LAGOON(23-27/31)
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27 :弦月
2024/10/11(金) 12:25
「あ、俺余計なこと言っちゃったかな」って思ったんだよね、正直。そこに故郷があるんだし、帰ろうとすればいつでも帰れるでしょって簡単に考えてたから。
ボロボロの姿を見てぎょっとしたのと同時に上手く行かなかったんだろうなってのは察しがついたし、彼の絶体絶命の状況を前に体は勝手に動いてた。射た矢は狙い通り大熊へ突き刺さってその巨体を仕留めるに至った。普段俺を見たら途端に綻ぶ顔にあからさまに翳りが見えて、咄嗟に手を差し伸べた。
「帰ろ」なんてありきたりな言葉しか出なかった。もっと格好良いことが言いたかったな……。前に兄貴だったか兄さんだったか……んー、こういうことを言うのは兄さんかな?「帰る場所なんて何個あったって良い」って言ってた。まあ、兄さんの言う帰る場所って多分みんな女のとこだろうけど。
だからさ、良いよ。たまには俺のところへ帰って来ても。
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26 :翠縹
2024/10/10(木) 13:58
結局、あのクヌギの木を離れた後もまた森に迷わされて暫くさ迷い続ける羽目になった。
空を覆う様に茂る木々が鬱陶しくて、ずっと胸の辺りが重苦しくて、野宿続きで疲労も溜まっていて、泥で汚れた装備に身を包んで歩く自分は険しい顔をしていたと思う。一刻でも早く森から出たくて仕方がなかった。
どれくらいさ迷っているのかも分からなくなってきた時にふと周囲に獣臭が漂っていることに気が付き、背負っていた槍を手に取って辺りを見回すと少し離れた場所から大熊がこちらの様子を伺っていたのが目に入った。黒衣森にはあんな大熊はいないはずだし、逃げる素振りを見せるどころか鋭くこちらを睨み付けながら一歩一歩近付いてくる大熊に緊張が走り、槍を握る手に力が籠った。
こちらを全く恐れずに距離を詰めてくる大熊に思わず一歩下がる。運悪く落ちていた小枝を踏んでしまい、不気味な程に静まり返った森に乾いた音が響いたのが合図だった。
唸り声を上げてこちらに突進してくる大熊に向かって、こちらも槍を構え地面を強く蹴る。体の大きさの割に反応が早く、鋭い爪で槍を叩かれ初手をかわされた次の瞬間に左側からカウンターが入り咄嗟にかわしたが服が引き裂かれた。
一人で、それも疲れ切った体で戦う相手では無いことはわかっていたが、あの時の自分は自暴自棄になっていて冷静ではなかったのだと思う。逃げるという選択肢を選ばなかった俺は、ただただ胸の中の重苦しく淀んだ感情を晴らしたいが為に槍を握って再び地面を蹴り上げていた。
…………自分の帰郷に気が付いた兄が駆けつけてくれるかもしれないと、どこかでまだ淡い期待を抱いていたのかもしれない。
大熊に致命傷を与えることもできず、軽く爪が掠めた脇腹に血を滲ませ返り血で顔や衣服を汚す泥仕合を暫く繰り広げていたが、結果的に助けが来ることはなかった。
漸くのことで諦めが付いたのと同時に体が限界を迎えたのか木の根に足を取られてバランスを崩し、それを見逃さなかった大熊が左腕を大きく振り上げる。鋭い爪が振り下ろされる光景がスローモーションで瞳に映った。ああ、これはまずいな……と思った瞬間、大熊の左胸に矢が刺さり、寸のところで動きを止めた大熊が地面に倒れた。
「遅いから迎えに来た」
大熊の心臓を一発で射抜き、地面に膝を着く俺に手を差し伸べてくれたのは戻りが遅いことを心配して探しに来てくれた弦月の彼だった。何もかもが上手くいかず情けないところを見られて何も言えないでいたが、全てを悟った彼は汚れた手を握ってただ一言「帰ろ」と言ってくれた。
その言葉がじんわりと胸に染み込んでいくような心地になって、息苦しい程に重く胸の中でつっかえていたものが消えていく気がして、それでも悲しいという感情は無くなってはくれなくて。色んな感情でいっぱいいっぱいになってしまって、彼の言葉にただ頷いて手を握り返すことしかできなかった。
あの時は言葉に出来なかったが、君が迎えに来てくれたことが嬉しかったし、泣けてくるくらいに安心したんだ。
迎えに来てくれてありがとう、__。
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25 :翠縹
2024/10/08(火) 17:00
先日、ラザハンとトライヨラで買った土産を持って故郷を訪れてみた。
手紙を書いたらどうか、と弦月の彼に言われたが何を書いたらいいかわからなくて時間だけが過ぎてしまっていたし、決して家族ことが嫌いになった訳でも無く、故郷を出てからもずっと家族のことは気になっていたから。
受け取ってもらえるかは分からなかったが、父と兄にはラザハンで見かけた彫刻が綺麗で使い勝手の良さそうなナイフを、母にはトライヨラのアルパカの毛で編まれた色鮮やかで暖かそうな膝掛けを選んだ。
結論から言えば、受け取ってもらうどころか、故郷に帰ることすらできなかった。
外部との関わりを絶っている故郷の村は周辺の森に人祓いの類いの幻術が掛けられていて、外部の人が踏み入れると方向が分からなくなって迷子になり村に近付けないようになっている。
狩りで駆け周り熟知していた故郷の森で、生まれて初めて迷子になった。
どれだけ歩いても村の入り口に辿り着けなくて、それでも三日三晩さ迷い続けたが自分の目に映る森は自分の知っている故郷の森とはまるで異なっていた。
ああ、自分はもう外部の人間なのか。
反対を押し切り故郷を出て冒険者になることを自分が選んだ癖に今更になってそれを理解して、勝手に傷付いたことがあまりにも滑稽で少し笑えてきてしまった。「二度と戻るな」と、そう父に言われていたのにな。
鬱蒼とした森に気分を落としながらまた出口を探してさ迷っていた時、ふと見覚えのあるクヌギの木が目に入った。クヌギの木なんてどこにでも生えているが木のうろの位置と形が自分の記憶しているもの全く同じだったし、近付いてよくよく木を見てみればその幹の下の方に自分の名前が下手くそな文字が刻まれていた。9歳頃だっただろうか。危ないからと持たせて貰えなかったナイフを漸く持たせて貰えるようになって、嬉しくて仕方がなかった頃にこっそりと彫った記憶がある。大きなどんぐりの実を沢山つける木でお気に入りだった。
この木のおかげで自分のいる位置と故郷の方角がわかったが、もう一度訪れてみることはしなかった。きっとまた村に辿り着くことができず、あの森をさ迷い歩くことになるだろうから。
渡すつもりだった物をクヌギの木の根元に置いて、木のうろの中に子供頃に貰ったナイフを置いてきた。
「帰るか」と思わず呟いてしまった時、情けなくも目頭が熱くなるのを感じた。故郷を捨てたのは自分なのにな。
本当に、情けない話だ。
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24 :翠縹
2024/10/04(金) 10:04
最後に髪を切ったのは何時だったか……随分と伸びてしまった。
戦闘の時に些か邪魔になるので紐で括ってみたが上手くまとめられなかった。思えば、肩に着くまで髪を伸ばしたのは生まれて初めてだったかもしれない。顔周りの片側をまとめると逆側が落ちてくる。それでもまぁ、取り敢えず纏まっていればいいかと思ったが、いつも身なりを綺麗に整えている弦月の彼の隣に立つことを考えるとそうもいかない。やっぱり直ぐに切りに行こうと思いながら柄にもなく鏡の前で奮闘していたら丁度彼が部屋に入ってきて、髪を少し濡らしたらいいと教えてくれながら髪を結ってくれた。顔周りの髪を無理にまとめることはせず、後ろの伸びた髪は三つ編みにしたらしい。
手際が良かったから短い時間だったが彼に髪を梳いてもらうのは気持ち良かったし、この日は何度も無意識に彼が結ってくれた髪を触ってしまっていた。……直ぐに短くしてしまおうと思ったんだがな。暫くはこのままでいようと思う。
自分でも綺麗にできるようにするが、また結ってくれないか。
仕方ないなぁ、結んであげる!
でもその後ろの毛、しっぽみたいで可愛いよ。
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23 :弦月
2024/09/18(水) 12:59
翠縹の彼は俺が何を着ても褒めてくれる。……多分。
そりゃね、俺も普段は突拍子もないような格好はあまりしてないつもりだけど……ちょっと揶揄うくらいの気持ちで面白半分に女装して「流石にキツいでしょ」って見せたら、「可愛いな」って言い出して俺ビックリしちゃって。俺、身長も80イルム近くあるし顔も別に女顔とかじゃないし我ながら笑えるくらいだったんだけど、「落ち着いて」って言ったら「正気だ」って言ってた。絶対正気じゃないよ。
でも本当に何着ても真剣に褒めてくれるから、つい色んな服を着て見せたくなっちゃうんだよね……「白が似合うな」なんて言うから、白い服ばっかになっちゃったよ。
いつだって正気だが?
君はいつもお洒落で可愛くて
会う度に好きだと実感している
……45万ギルの依頼は無いだろうか
その45万ギルの件なんだけど、解決したから期待してて。
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