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スレ一覧
┗284.酔い花かしずく(9-13/18)

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13 :榎木津礼二郎
2024/11/22(金) 00:06

※半の色が強い為、閲覧注意。



 改めて指折り数えてみると五年になるらしい。出会った日から数え直せば凡そ七年の付き合いだと京極に云われて殊更驚いた。
 あれは初めて交わした手紙を未だに保管しているそうだ。僕も大切に持っていた筈だが、何処に仕舞ったのか分からなくなってしまった。……それはそれとして落ち込む僕を暫く観察してからしたり顔で笑っていたのは一寸可愛かったぞ。

 数年前、或る者から「飽きないのか?」と問われた事がある。生憎『飽きる』という発想すらなかった僕はその問いかけに大層驚いたものだが、京極は平然とした顔で「いっそ飽きたいくらいだったよ」と云っていた。あとで問い質したら自分なりの盛大な惚気だったと説明されてとても気分が良くなった。

 犬も食わない喧嘩の延長で仮に別れ話が持ち上がったとしても離れなければならない理由が無いと一蹴するのは僕で、あいつはいつも真正面から向き合っては折り合いをつけてくれる。
 そして、飽きもせずに云うのだ。
 榎さんに付き合えるのは僕だけだろうね、と。
 ……ん?待て待て。反論する気はないがこれじゃまるで僕だけが骨抜きにされているみたいじゃないか!!中禅寺は本馬鹿だが僕の事が大好きだ!!当たり前だ!!好きでもない男にあんたが綴った言葉を読みたいなんて強請らないだろう!!ああそうだ、この日記を始めた切っ掛けはあいつが珍しくぼやいたからだ!!思惑通りじゃない!!僕があいつを喜ばせたかったのだ!!

 好き放題に書き散らした御蔭で何を書こうとしたのかも忘れてしまったが、五年の節目を迎えた今日この日にそれらしいものを遺しておきたかった。


 中禅寺。──秋彦。
 僕はこれからだってなあんにも変わらないぞ!!

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12 :榎木津礼二郎
2024/11/19(火) 01:14

 手紙を書くぞ!!認めたら先ずは京極堂に読ませる!言葉には煩いアイツの事だから彼是と添削される未来を見越して一足先に場所取りをしておく!

>読んでみろと差し出された手紙の書き出しが『わはははははは!!僕だ!!』だった。お察しの通り手紙は暫く仕上がりそうにはない。断じて僕が厳しい訳じゃないと此処に主張しておこう。

>何が駄目だったのか皆目検討もつかない!!僕は僕だ!!



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11 :榎木津礼二郎
2024/11/17(日) 05:05

 今夜は満月だと聞いたから月見に誘った。同意も得ないままにあいつが管理する神社の境内へ向かう道すがら小言を並べられたような気もするが、まるで耳には入らなかった。
 階段を登り切ってから朧月だねと呟いた中禅寺の方を見ると、僕が視えた。少しだけ目を瞠って、考える。
 あれは──そうだ、僕が出征する前日の夜。慥かあの時も月を見ようと誘って、今より青く若かったこの男が平生を装いながら痛々しい程に握り締めていた細い手を取った。
 その肌が暖かさを取り戻すまで、ずっとずっと握っていた。

「石地蔵が素直に腰を上げた理由が分かったぞ」
「何を視たのかは知らないが野暮な事は云うもんじゃないよ」
「僕が視えた」
「……そりゃあ、そうだろうね」

 それっきり口を噤んでしまう中禅寺の冷えた手を握ってみる。振り払われはしなかったが、こちらを振り向こうともしない。
 薄曇りの夜空を仰いでいたらふと思いついて、朧月は尻子玉のようだなと呟いたら人体に尻子玉なんてものは存在しないと肘で背中を小突かれた。
 それから秋の夜風に体が悲鳴を上げるまで尻子玉と河童の話を聞く羽目にはなったが、妙に満たされた夜だった。

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10 :榎木津礼二郎
2024/11/14(木) 23:52

 あれは悋気だったのだと知って心底驚いた。陰気な猿が陽気にサンバを踊り出したとしてもここまでは驚かないだろう。
 何だか無性に可笑しくなって腹を抱えて笑ってしまった。
 案の定鬼も裸足で逃げ出すだろう恐ろしい形相で睨まれたが、こっちも誰かのせいでそれどころじゃない。
 お前でも妬く事があるのか。この僕を唯一好きに出来ると云うのに、それでもまだ──。そうかそうか。どうしてくれよう。

>翌日昼八つ頃 加筆
 感極まるまま力任せに抱き締めたら迷いなく頬を張られそうになった。僕にそのような仕打ちが出来るのは世界中を探したってこの男だけだろう。如何なる時も決して揺らがないその矜持すら気に入っているのだから文句は無い。
 儘ならない感情を精査出来ず、消化も出来ず、僕にも自分にも苛々して仕様が無いのだと語りながら、苦虫を噛み潰したような苦々しい顔で口付けを受け止める情人の不器用さが愛おしい。
 僕にとってはお前こそがこの世で唯一の真実なのになあ。

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9 :榎木津礼二郎
2024/11/13(水) 14:29

[書架]
 を設けようと思ったのだが、中禅寺から「そもそも知らない者も多く居るだろうに、相手方を困らせるだけじゃないのか?」と言われてそれはそうかと思い直した! やめだ、やめ!!
 僕は面白いものが好きだ。君たちが綴る日々や懸想する相手に手向けた想いを、時に楽しく、時に感銘深く読ませて貰っているよ。いつもありがとう。書架を設けようと考えたのはこうやって感謝を伝えたかったからに他ならない!!
 君たちの豊かな日々が永く永く続く事を心から願っている。


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