可愛い。
という言葉のよく飛び交う二振りだと思う。 今までに交わした言葉の中で、互いの呼称の次に多いのはそれかも知れないな…?何せその呼称にすら枕詞のように〝可愛い〟がつくもので。 人にしろ刀にしろ、価値観と好みはそれぞれだとは思うがねぇ。ごく一般的なニーズとバリューを勘案するに、道誉一文字という刀に可愛いを求める者はそう多くないのでは…というのが俺の見立てだ。 では、あなたは。──可愛いを構成する重要な要素のひとつにギャップがあるらしい。黙っていればビスクドールと見紛う顔立ちにあの性分だ、可愛いと称されるのも分かる。とは言え、誰かから撫で回され愛でられる類の可愛らしさか、と言うとどうかな。若いのを撫で回して愛でる側に回るばかりで、そうした態度を取られる事には不慣れだ。まあ、軽々にあなたを撫で回せる輩などそうは居ないでしょうからね。 だからこそ、なのか。最初は俺に可愛いと言われる度に考えていたように思う。可愛いのか?そうか、お前さんがそう思うならそうなんだろう。そんな思考のラグがあった。それはあなたばかりの話でなく、可愛い道誉と告げられる俺も同様に。 慣れ始めてからは双方、可愛いに込められた愛おしさも慈しみも感じられるようになったのではないかな。これは愛しているの言い換えでもあると。 そんなあなたが可愛い僕を甘やかせ、と言うようになった。これは快挙では?自覚があって結構、じわじわと毒のようにあなたが一番可愛いと仕込んだ甲斐もある。実に素晴らしいな!
꧁꧂ それでも一番可愛いのは俺だと譲らないものだから、試しに「可愛い俺が言っているのに?」と口にしてみたら最善の結果が得られた。ハッハァ、やってみるものだ。
|