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┗448.そのひともじを(6-10/19)

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10 :道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/04/19(土) 22:19



嶺の花。

そう呼ばれるに相応しい刀だと思っている。
惹かれたのは、恐らく姿を見たその日から。よく他の刀を見ている方だと感心した記憶がある。一度そう思えば知らず意識を向けてしまうもので、あなたが言うところの〝見どころのある若いの〟を中心とした余所の連中へ掛けるうつくしい言葉を他人事のように……実際他人事ではあったが。聞くともなしに聞いていた。
線引きをされていたように思う。同派であるからこそ、必要以上の気安さを出さないよう。あなたはその辺りの距離感を測るのがやけに上手い、意図は理解出来たから俺もそうした。その振る舞いも含め、これは﨟長ける高嶺の花だと思った時には欲しいなと自覚していたのだから笑ってしまう。そんな中でも時折交わす軽口は実に愉快だったし、暫くはこのまま利口で居るかと思ってはいたんですがね。……踏み出すにはまだ早いと、そう腹の底で飢える何かを宥めながら。

手を伸ばしたのは俺だ。ほんの些細な切っ掛けで、我慢が利かなくなった。管理はビジネスの基本、とは言え感情ばかりはそうも行かない。待てもお預けも苦手な犬だというのは御存知でしょうがね。
伸ばした手は果たして見事にあなたの袖を掴んだ。俺の手の及ばぬ所へ逃げられてしまっては困る、と敢えて囲い込み続けられるだけの逃げ道を残した口説き文句が言葉遊びとして転がされた時の、清々しいまでの敗北感と来たら!ええ、勿論その瞬間に落ちましたとも。
あなたに手を伸ばそうとして届かず終えた者が居るのも、手を伸ばす事すら躊躇った者が多く居たのも知っている。それらと俺の何が違うか、と問われれば言葉を尽くしたか否かの一点に尽きる。言葉は尽くすために、愛のためにある。そうあなたが口にしたから、今日まで俺はずっとそうして生きている。この日記もそのひとつという事だ。

꧁꧂

馴れ初めをね、残しておきたくなったんですよ。手折った花を愛でるのに忙しいもので、凛と咲いていた頃のあなたに抱いていた感情を覚えているうちに。
そうだな、…約束の日にでも渡す事にしよう。それまでに俺は何枚の頁を記しておけるか、あなたと離れているうちも焦がれていると示せる程度には増えるでしょう。



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9 :道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/04/17(木) 10:33



想夜夢。

夢、というのは人の身に与えられた特権だ。
先の未来に描くタイプのそれではなく、夜…に限らず睡眠をとっているうちに見る方のものの話さ。どうも脳が蓄積した記憶の整理として行う処理の過程で発生する事象らしい。当然、本来ならば肉体を持ち得ない俺達が経験するものではない。
本丸にも数振り居る、眠るのが苦手な個体だと言う訳ではないとは思っている。寝付きは良いし、眠る事それそのものは嫌いではない。ただ、時折見る夢。その夢見だけが頗る悪い。
眠る前に考えていた事、気懸かりな何か。反省点、その日犯した失態。それらが覿面に反映されて出ていると気付いたのはいつだったか、分かった所で対処出来るものでもないがねえ。
だから、夢というものは好まなかった。
内容によっては寝覚めが悪く、疲れが取れた気がしない。目覚めて最初に思うのが夢で良かった、という安堵になるのも些か癪だ。人の身を得て一番面倒なのはこれかも知れないとすら思っていたものが、あなたと過ごすようになってぴたりと止んだ。
毎晩抱えて眠っている体温のお陰か、寝入るほんの間際まで言葉を交わし、あなたの事ばかりが頭にある状態で寝入るからか。どちらにせよ、魘されるような事が無くなった。本当に、一度も。

あなたは俺の寝顔を稚いと言う。険が取れて幼い印象になるのだ、 と。
勿論俺に自覚は無いし、実の所どんな顔なのか…というのも知りたいような知りたくないような心情ではあるな。…ただ、そんな無防備な顔を晒して寝ているのだとすれば。その顔はそれを可愛いと告げるあなた自身が作り出したものだ。
夢渡りの逸話など無くとも、俺の愛しいひとは悪夢すら斬り払ってしまう。奪われた悪夢の代わりにあなたが夢に出てくれれば、とは思わなくもないが…お互い夢の中の自分にも妬くだろうから、これで良いのかも知れないな。



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8 :道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/04/15(火) 21:25



明り。

「あるじさまへの報告はわたくしが。叔父さまは花を愛でに行かれるのでしょう?今宵はどちらの花が主役なのかしら」
「気を遣わせてしまったかな。……おや、それはどの花の話だい?」
「ふふ、わたくしではない二つ」

꧁꧂

出先の桜が若い緑を混じらせ始めていた。部屋から見える桜は八重の品種で遅咲きだが、花見をするならそろそろ頃合か…と誘いを掛ける前に、向こうから声が掛かって少しばかり笑う。
明日は珍しく二振り共に非番で、花を愛でながらゆっくりと過ごせそうだ。となれば気は急くものでね、予定よりも早く行軍を終えて主への報告に向かおうとした俺に薔薇から手向けられた言葉がこれだ。
散る前に夜桜でも愛でようか、とは出陣の合間、雑談程度に話しはしたがね。したり顔で紡いだそれには明らかに含む所があるな?全く、俺を揶揄って愉しむのだから困る。

どちらが、か。さて、どちらだろうな。勿論この夜を照らすに相応しく咲き誇る方を主役と定めている……とでも返しておくかい?
俺の花は膝上に抱え込まれての観桜を御所望だ、戻られるまでにブランケットでも用意して来ようか。



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7 :道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/04/15(火) 04:36



を食らう。

あなたが寝入るまでの少しの間に、そう言えばひと月前は何をしていたのだったかと思い立って記憶を辿ってみている。俺がまだあなたをご隠居、と呼んでいた頃だな。
初めてあなたを則宗様と呼んだ時の事を覚えている。恋仲になったのにご隠居と呼ぶのもどうか、と言い訳のように考えたのだったか。実の所はそれまでとは違う形を俺が欲しがっただけの話ですがね。伺いを立てるのも違うかと自然に、紛れ込ませるように紡いだそれを咎められなかった事に胸を撫で下ろしたものだ。
それから半月程経って、今度は敬称すら付けなくなりましたが……実の所、あなたをそう呼ぶのは今もまだ緊張する。以前同じ事を告げた時には「そう呼ばせて貰える幸福と愛しさが溢れそうで」と言った気がするが、名をなぞるだけで愛しくなるなど誰が予想した?我ながらトチ狂っているな、とは思いますとも。
あなたに道誉の坊主と呼ばれなくなって随分経つ。それがあなたの特別の示し方と知っているから、俺はあなたが俺を道誉、と呼ぶ度に堪らない気分になる。紡ぐ唇ごとその声を食ってしまいたいと幾度思ったか知れない、…今その唇は穏やかな寝息を立てているが。
お休みなさい、可愛い則宗。明日その唇が紡ぐ最初の言葉が、俺の名であればいいと思う。



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6 :道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/04/14(月) 15:18



色の目をした、

自覚のあるヤキモチ妬き……などと言えば可愛気があるようで聞こえは良いがね。要は嫉妬深いタチだ。
そもそも独占欲が頗る強い。元来何かを所有する立場にはなく、誰かに所有される側である刀が何を…と言う話だな。分かっているとも。おまけに俺は可愛いあの刀のように鷹揚な精神性も持ち合わせてはいない心の狭い男でねえ。やれやれ、困ったものだ。
こんな気質を持った男を伴侶に持つと、相手によっては相当な苦痛を味わう羽目になる。同じ行動ひとつ取っても受け取り方は様々だ。自由を害されたと感じるか、過保護と思うか、大事に囲われていると考えるか──こればかりは相性次第、と言う他ない。独占欲の強さも心の狭さも大いに自覚はあるとも。ゆえに、ネガティブな悋気は起こさない事にしている。理想論だと思うかい?ハッハァ、経験上のライフハックだとも。
俺とあの方はよく似ている。価値観、積んだ経験、向けられて喜べる嫉妬とそうでない嫉妬がある所。だからこそ俺の悋気を許してくれるのだろうと思っているし、許される範囲で留めたいとも思う。それは我慢すると言う意味ではなく、伝え方や許容の妥協点を探ろうと心掛ける意味で。…まあ、俺が心配になるような真似を全くしないのがあの方でもあるがねえ。何せ人誑しで刀誑しだ、向こうが勝手に来る事もあるのさ。

そんな事を夜中につらつらと綴っていたのは、思う所があったからには違いないが……少し水を向けたらあっさりと宥められてしまった。俺があなた以外に価値を置いていない事も、あなたはよく理解している。敵わないな!
俺に御しきれない怪物も、あなたは上手に躾けるだろう。飼い慣らしてくれればいい。



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