誰でもない誰かの夢を見た。誰でもない、アンタの夢だった。幸せそうに笑うあなたの顔と、それを見て笑えないオレ……つまりはそういう夢。 『病める時も、健やかなる時も──』 幸せを語るあなたの声を聴くオレは、ああ、これ以上無い程の……。 夢はそこで終わり。押し付けられたのは胸を締め付ける痛みと、寝起きに沁みる朝の陽射し。 そして、言いようも無い、喪失感。 オレの中に存在しない筈のアンタは、オレの中に存在する何かを一晩で奪っていった。 …夢見は、最悪。 (恋仲がいるわけでもねえのに、これは一体どういうことだ) |
お門違いも甚だしい。 誰でもねぇ、俺の事だ。 |
言葉の端を掴まえたと思っても、結局この手は空へと投げ出されてしまうのは。 言葉という形の無い物を得ようとしているからなのか。 それとも、そこに本当は何も無いからなのか。 追い掛ける、この両脚から悲鳴が聞こえようとも。立ち止まったら、そこでオレは、 |
夜に見上げる空と朝に見上げるそれのどちらが綺麗なのかと己に問うなら、間違いなく後者なのだ。この時期の早朝は本当に空が澄んでいて、浮かぶ星の瞬きすらも肌身に感じ取れる。 あそこに煌めく星達は、実はもう其処には無い物かもしれないと何時か聞いた事がある。そうすると私達は今はもう存在しない物にこうも焦がれている訳で。 もしかしたら今目にしている私や君も、とうの昔に燃え尽きている存在だとでも言うなら……ああ、だから触れられないのかもしれないと。 こんなにも、眩しいのかもしれないと。 どんなに指先を伸ばしても届かない、美しく綺麗なそれを…身の程も弁えず、欲しいと、願わずにはいられない。 思わずあれをくれと星を指差してお前へと強請ると、甘ったれるなと拳骨を食らってしまった。 ちかりと脳髄に瞬いたそれも、確かに星屑だったけれども。 (ああ、しかしそれは見えてはいても、あまりにも此処からは──) |
いつだってオレは、何も知らない。何一つ知らない、ただのクソガキなんだ。 |