突然と湧き出す毒は、外からではなく内からこの身を蝕んでいく。厄介なこれを捨ててしまいたいと思えば思う程、まるでそれを嘲笑うように。 ジワジワと遅効性である癖にその威力は容赦が無い。だからといってオレはまだこの場から退く訳にはいかないのだ。見据えてやると、決めているのだから。 けれどこれは強さなんかじゃねえ。 最後の悪足掻き。藻掻いて、藻掻いて。 |
不意に伸ばされる掌、その意味をオレはまだ知らない。知ったところでどうなるものでもないけれど…正直な話、今は目を閉じていたい。 縛られるのは苦手だ、縛るのはもっといけない。お前が自らその身を縛らなければ何の意味もねぇんだよ。 |
猫を一匹預かった。毎晩と会っているあの黒猫とは違う、知り合いの猫。今月一杯俺の所で預かる事となった。 部屋で寛いでいる時、そいつは自然と俺の傍へ寄ってくる。そうして何をするでもなくただ温もりを伝えてくるのだ。 そっと頭を撫でると瞳を細めて小さく鳴く。嫌がる素振りを全く見せないのは、きっと人に慣れているからなのだろう。 ベッドへと横になると、それを合図にしてかするりと隣に潜り込む姿。 これで数日は俺も凍えなくて済む。指先から移る体温が、微睡む体に心地良い。 |
コツンと窓を叩く音に顔を上げると、そこには数ヶ月前までは毎日のように見ていた鳩の姿があった。けれどここひと月は、その影を見ていなかった気がする。 …原因は全て私にあるが。 あの子は純粋な想いなのだろう、ずっと真っ直ぐそこにいた。目を逸らしたのは私。逃げたのも私。 それなら最後のあの子の願いを、聞くのは当然であって。 断ち切ったのは自分自身。 けれど、縛っているのも私自身で間違い無い。 |
自身が今、貼り付けているのかそうでないのか…それすらも、曖昧で。 曖昧にした。 |