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┗272.白刃に消ゆ。【半完混合、時に背後透過/R18】(65-69/83)
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65 :
オルオ・ボザド
2014/03/14(金) 22:30
>そんな細い腕でよく壊れねぇもんだ。
ペトラと話す機会があった。
>「アンタも私も、もう四年生き残ってるんだね」
あいつの手首は俺より細く、全然頼りない。
でも俺より多くの巨人を倒すために、俺より多く巨人の腱を削ぎ落とし、沢山のチャンスを俺にくれた腕だ。
>「ねぇ、いつまで生き残ってられるかな。―――私も、アンタも」
俺はその言葉に何も返せなかった。
黙ってあいつの栗毛色の髪をかき混ぜるしか出来なかった。
ペトラは顔を伏せていた。
手元にもっていた色気のない金属で出来たカップに、雫がぽたぽたと落ちて水面を揺らしているのが、俺の視界には入っていた。
嗚呼。神様。
どっかにあんたが居るとして、さ。
俺は兎も角この細い腕と小さい背中を持った女に、何でそんなに重荷を背負わせやがるんだ。
折れそうじゃねぇか。
あいつだって成したい何かがあって、調査兵団に入り、華奢な心臓を人類に、公に捧げたんだろう。
俺にもそれくらいわかる。
同期だったし、仲だって悪いわけじゃねぇからな。
ただ、たまにあいつはこうして泣くんだ。
(そのたびに俺は何も出来ない)
(何も出来ないから、あいつの頭を撫でる)
(俺に何が出来る。たかが兵士で同期なだけの俺に)
>「オルオ。生き延びようね」
#「ああ。」
>「先に死んだら殺すから」
#「―――馬鹿野郎。俺は精鋭だぜ。簡単に死んで堪るかってんだ」
涙声の彼女を抱きしめることすら出来ない。
俺は、弱虫だ。
あいつを想いながら、あいつに手を伸ばそうとはしない。出来ない。
叶ったところで、―――、
―――違う。
死の影がいつだって俺の腕を掴んでやがるから。
そんな頼りない腕で、好きな女を抱きしめるなんて、出来るわけもねぇだろうが。
>「私はアンタやエルド、グンタ、皆に生きていて欲しいの。それだけなの」
#「解ってる。……俺はなペトラよ。巨人共の項を一撃で落とせるだけの実力がある。お前が補佐してくれるならな。誰も死なせやしねぇよ。………背中は任せたぜ、ペトラよ」
>「兵長の真似しないで、気持ち悪い」
栗毛の髪がゆっくり頷き、悪態をついた。
その声にはいつもの強さが戻ってる。
優しくて、細くて、それでも強い俺の同輩。…俺の好きな人。
お前が泣くのは嫌だ。
何にも出来ねぇ俺だが、お前を笑わせることくらい出来るだろう。
頭を撫でることくらい、してやれるだろう。
>「ペトラ。生き残るぞ」
解ってる。そう返された声に俺は笑った。
願わくば、俺よりも、長生きしてくれ。
誰か大切なヤツを見つけて、腹を大きくして、幸せになってくれ。
こんな血だらけの腕じゃ、
こんな殺すことしか知らん俺じゃ。
お前を抱きしめることすら、できねぇんだから。
ペトラ。
…お前をずっと、好きでいることくらい、神様だって許してくれるよな。
>(喩えこの片思いが、いつまでも叶わなくたって、俺はかまやしねぇんだ)
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66 :
オルオ・ボザド
2014/03/16(日) 13:02
>戦場で、同期に怯えられた。
いつの壁外遠征だか忘れたが、もう直ぐ壁に帰れる、という所で巨人に遭遇した。
大量の巨人。
陣形を崩そうとする奇行種。
俺の隊列に居た同期の引きつった顔を、俺は今でもよく覚えている。
>我武者羅に、生き残る為に、隊列を崩さない為に、俺は班の班員と白刃を振り、巨人に食われた同輩を見捨てながら、どうにか目に入る巨人は全て駆逐した。
>その頃には、一ダース以上居た俺の隊列の人間は、片手で数えられる程度に減っていた。
転がる死体。巨人も人間も。
死に切れなかった人間。
―――死にかけはいても、生存者なんて、いねぇ。
巨人の血で汚れた全身が鬱陶しい。
ああ、臭ぇ。
糞が。
>「オルオ、……たの、…」
俺の携えた超硬質ブレードを見てほっとした顔をした、中身のはみ出た先輩。
ああ。アンタもか。
解った。遺品は持ち帰る。必ず。
>斬、と。
巨人と違う匂いの血が吹き上がって、四肢が痙攣して、呆気なく事切れる。
その死体から遺品を捜していたが、遺品がねぇ。ワッペン。それと。無事な右腕を持って帰ろう。
せめて、こいつの家族が縋れるものを。
空っぽじゃねぇ墓を建ててやれるように。
右肩に狙いを定めて白刃を振り切った。勢いづいて飛んでいく腕を拾っていたとき、向かいから声を掛けられる。
>「お前…なんで、なんでそんな顔で戦友の遺体を切れるんだよ?!ワケわかんねーよ!!」
は?そんな顔?
知るかよ。一人でも多く連れて帰る為に荷物は最小限にしねぇと駄目だろ。
首はまずいだろ。
腕なら、立体起動の邪魔にもならねぇ。
俺達だって気を抜いたら死ぬんだぜ?
>「………オルオ…お前………」
そのときの俺を見る怯えた碧眼が忘れられない。
俺はアイツには、悪鬼か何かに見えたんだろうな。
人間と巨人の返り血に塗れて、自分も傷だらけで、戦友の腕を抱えてブレードを構えていた。
どんな顔をしてたかなんて知らん。
きっと泣いては居なかった、だろう。
涙なんて出ない。泣いてる余裕なんてねぇんだよ。
壁内に帰ってから、そいつとはいつの間にか疎遠になった。
俺が怖かったんだろう。
いたしかたねぇな、とは、思わないでもねぇ。
俺だってそんな兵士と友達でいるのは嫌だ。
怖いから。
……ああ。
俺は、戦場に出るたびに化け物になっていく。
だれか。
>俺をどうか助けて欲しい。
>(………助けてくれ、なんて、甘ったれだ)
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67 :
オルオ・ボザド
2014/03/17(月) 21:56
>ぜろ、というもの。
零。
俺が、もう戻ることの出来ねぇもの。
血がついた肌は洗えば綺麗になる。
人の油の着いたブレードは、刃を替えてしまえばいい。
巨人に襲われた傷だって、その内治る。
それでも記憶は消えてくれねぇ。
記憶は決して、討伐数0だった、一度も壁外遠征に行っていなかったあの頃のようには、戻らねぇんだ。
>胸や脚に着いた、立体起動装置の消えない痣が痛む。
#「いっそ記憶喪失になれたら楽なんだろうな。」
そう思ってしまうことが有る。本当に時々だが。
―――俺の記憶を全て埋葬できるなら。
この腕が覚えた人の感触を。巨人の感触を。誰かの死の瞬間を。
全てを手放して、―――ゼロに。
何もなかった頃に、もどれるのなら。
――悪くない。
そんなの、無理なくせに。俺は。
>俺は。
忘れるには殺しすぎた。
>(同胞、戦友、上司、顔を、俺は、忘れられねぇ)
忘れるには斬りすぎた。
>(巨人だけじゃなかった。踏み潰されて使い物にならなくなった仲間の腕や脚を止血してから切り落としたこともある)
忘れるには斃しすぎた。
>(いつの間にやら討伐数も40間近だ。俺の悪運の強さを物語る)
忘れるには背負いすぎた。
>(誰かを斬る度、巨人を斬る度、俺の背には見えない重みがかかっていく)
>二度とゼロに戻ることは、ねぇんだと。
(手記の紙がくしゃりと歪む。涙が零れた跡の様だ)
ゼロにならねぇなら、ゼロを積み重ねるしかない。
俺の尊敬するあの人の様に。
ゼロを積み重ね、仲間の死体を背負いながら、人類の先頭に華奢な四肢を晒すあの、大きく小さな上司の様に。
俺も、ゼロを積み重ねる。
時は巻き戻らねぇ。一度してしまったことは消えやしねぇなら。
>重ねたゼロの分、俺の腕が汚れていく分、俺は強くなる。強くなれば、誰かの命を救える。重く苦しくとも、人類に希望があるのなら。
―――嗚呼、見えもしない希望を追う俺たちはきっと。
>暗い夜に飛ぶ鳥の様に、愚かに見えるのかもしれないな。
それでも。
俺は、折れたりしない。
いつかを夢見て、白刃を握り続けよう。
この身が壊れてしまうまで。
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68 :
オルオ・ボザド
2014/03/20(木) 20:31
>溺れるしか道はない。
なぁ。どうすれば良い。
どうすれば俺達は戦わなくてすむんだ?
巨人が絶滅すればいいのか。
巨人はあと何体居るんだ?
俺達はどれだけ死にながら殺してるんだ?
一体巨人を倒すために何人が散らされている。
>野山の花を踏み荒らすより簡単に、俺達「兵士」の命は終わる。
死にたくないと嘆きながら。
家族の下に帰りたいと叫びながら。
恋人に己の遺体を届けてくれと哀願しながら。
最期を知らない兵士達の遺体。
俺はそれを見るたびにやるせなくなる。
>俺達は何の為に死んでいくのか。
#(人類の為に、王の為に、領土の為に)
>俺達は何の為に生きてきたのか。
#(こうして、ゴミみてぇに死ぬためなのか。なあ、神様とやら)
>何の為に、逝くのか。
#(恐怖と恐慌の中、どうやって逝くのか)
遺体が一本の花を胸に携えていた。
恋人に渡したかったのか。家族に渡したかったのか。俺は知らない。
無事だった体をどうにか馬車に乗せる。
ここから壁内までは二日程度。季節は夏だ。
もしかしたら壁内に行く頃には、遺体が腐ってるかもしれない。
腐ってたとしても、からっぽの墓よりましだろうか。
>(何かが徐々に狂ってく)
嗚呼、嗚呼、クソが。
頭を掻き毟ろうが血が出るまで手を洗おうが、幻が俺を追い詰める。殺してくれと今まで斬ってきた人間の顔が走馬灯の様に浮かぶ。
それを感じながら白刃を振る。
>削り取る。削ぐ。
>巨人の項と一緒に削ぎ落とされるのは俺の心の一部だろうか。
―――だって俺にはそれしかねぇ。
俺の身につけた技は何のためだ。巨人を殺す為だろう。
戦場の空気が纏わり着いて離れねぇ、幻覚。
俺の救えなかった仲間の死体が嗤う。
―――溺れるみてぇだ。
>息ができない。
戦場の燐光。
はじける紅。
誰のものなのか解んなくなった遺体の山。
持ち帰れなかった英霊達。
戦場は、残酷で、俺の無力を毎回痛感するのに。
白刃を離せない俺は、既に溺れて、もう二度と水面に上がれない深みに嵌ってる。
「心臓を捧げよ!」
「ハッ!」
………深い深い水の底で、白刃を振りかざす鳥達。
次の壁外遠征で、俺達はきちんと帰れるのだろうか。
そんなの、運と実力だ。
ああ。クソ。
先輩、英霊になった仲間。彼等のためにも、家族を失った人のためにも、俺達はとまるわけに行かねぇんだ。
溺れるしかねぇとわかっていても、窒息しながらも、死ぬまで戦い続ける。
翼を背に負いながら、水の底に落ちていくような、妙な気分が抜けねぇ。
>酒でも飲もう。
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69 :
オルオ・ボザド
2014/03/21(金) 23:43
>真面目な手記を書こうと確保していたんだがショックすぎる。
>(※半注意!!※)
なぁ、聞いてくれよエルド。
お前の家にいる…なんだっけ?リヴァイだっけ?あの猫今日獣医につれてってやっただろ?黒猫のさ。可愛い奴。ええと何だっけ、ワクチンだっけ。まぁそんなことどうだっていいんだけどさ。聞けよ。聞いてくださいむしろ。
あのさぁ、お前がいいって言うからタクシー使ったじゃん?
でだよ。行きはよかったんだよ。
帰りがさ。
帰りがその。
タクシーってさ、割といい匂いしたりするだろ?
何て言えばいいんだ?車の香料の匂いっつーか。
まぁ、うん、そういう匂いするだろ?
でだな。俺は大暴れするリヴァイちゃんをキャリーに詰め込んで、爪痕残されながらタクシー乗ったんだよ。
そしたら車内がすっげぇ臭いの。
俺は吃驚したよ。
何の臭いかって言われたら迷う。
迷うけど、兎に角くっさいんだよ。
加齢臭とかは嗅いだ事あっけどさ。父ちゃんの枕とかさ。そんな生易しい臭いじゃねぇんだよ。臭いんだよ。
俺はずっと気を逸らす為に持ってった本読んでたよ。
リヴァイちゃんは異常に気付いたのかキャリーの中で狂ったように鳴いてるしさ。だせだせって暴れるしさ。
お前んち着いて、リヴァイちゃん離して、俺は暫く呆然としてたよね。洒落にならん臭いだったぞあれ。
ああ、そうだ。アレだ。
夏の日に、ずぶぬれになった上履きにさ、丸一日足突っ込んでた時のグンタの靴下。あれみたいな臭いがした。しかもそれが可愛く思えるくらい強烈な奴。納豆とかクサヤが霞む勢いの…。
俺お前んちのトイレで吐いたよ。
人ってショッキングな臭いでゲロ吐けるんだな。初めてしったが。
という事で、迷惑料として今度焼肉でも連れてけよな!
>(いや、本当に、車内で靴脱がないで下さいよ運転手さん…)
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