スレ一覧
┗短編小説コンテスト!(2-6/6)
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2 :匿名
05/30(土) 00:39
「フライパンの戦い〜選択の時〜」
両軍の戦いの火蓋は切られた。先に悲鳴を上げた方が負けの仁義なき戦いだ。フィールド内ではすでに各所から煙が上がっている。厚着な歩兵が多いベーコン軍は、「焦げずにカリカリ」のスローガンのもと、巨体を揺らして走っている。一方のソーセージ軍は随分と薄着である。シコシコしてくれとでも言いたげな薄い皮のみを残した姿でくるくる走り回り皮を弾けさせないよう戦っている。司令台の私は我が軍の勇姿を見守る。その巨体から発せられる歓声、ああ、いい音だ。これは勝てるかもしれない。そう、向こうのくるくるとした動きさえ止めて仕舞えば、こちらの勝ちなのだ。かなり有利である。向こう岸からは、今にも怪我をして崩れそうな兵が雪崩れ込んできている。くるくるも多勢になるとずいぶん威力があるのかもしれない。
…想定外のことが起こった。なんだと、増援にボイル兵が来るとは聞いていない…。炒め用歩兵だけではなかったのか!奴らは、ボイルで鍛えられた兵は皮がやや強い。限界まで膨らんだその体でこちらを押さえつけ、その水分で兵たちのカリカリの鎧を無力化するだろう。先手を打たねば。私は思わず声を上げた。
「火力を上げろ!」
その声に応じて強まった火中で、こちらの兵はカリカリを強め、ソーセージ軍を押さえに入った。ボイル兵は水分が減り、次々に弾けていく。ドロップアウトしていくソーセージ軍を勝利の雄叫びをあげながら見ているベーコン軍は、どんどんカリカリが増えて完全体へと変貌を遂げた。勝ちだ。ベーコン軍は勝利した!!
勝負は決した。来るべき再戦の、いや、再選の日には、この手記を読み返してほしい。その時はどちらの軍が勝つだろうか。
さあ、ベーコンがカリカリに焼き上がった。食事にするとしよう。
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3 :匿名
05/30(土) 00:42
ソーセージ軍はベーコン軍のくるくる変わる姿勢にカリカリしながらシコシコなうどんを食べて気持ちが落ち着きました。
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4 :匿名
05/30(土) 00:43
その日、長きに渡る戦いに、遂に決着がつこうとしていた。
両国の将による、一騎討ちだ。
「よう。根暗眼鏡王子。ちったぁ腕上げたか?」
片や、身の程の倍ほどの長槍を、くるくる回して弄ぶ美丈夫。ベーコン帝国のパンチェッタ皇子。
「全く……。貴方は相変わらずガサツですね、脳筋ゴリ皇子。」
片や、細身の剣と円型の盾を携えた、神経質そうな美青年。ソーセージ神国のヴァイスヴルスト王子。
「「いざ、尋常に……勝負!」」
ーー雌雄を決する時が来た。
見た目も性格も、生まれた国すら違う二人。水と油にしか見えない彼らは、意外なことに旧友だった。
眉目秀麗・文武両道を地で行く、高貴なる者達。当然目立った。
自然の成り行きで二つの派閥が生まれ、その間で、日夜喧々諤々の議論が為された。
「荒ぶる皇子の攻めに翻弄される王子の受け!尊い!」
中空でナニかをシコシコしながら熱弁する女生徒に対し、自らの譲れない価値観を主張する対立派閥の女生徒。
「いいえ、それは素人の発想!陰湿にカリカリ追い詰めていく、王子攻め皇子受けこそが至高!」
パン×ヴァイが正義なのか。
ヴァイ×パンが正義なのか。
保存食品のくせに腐ってやがる。
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5 :匿名
06/03(水) 13:28
↑の続編
時代は、まさに群雄割拠の戦国時代を迎えていた。
長きに渡り大陸西部で覇権を争っていた、ソーセージ神国とベーコン帝国の両国が対消滅のような形で滅んで以降、プロシュート・ハモンセラーノ連合が、一度は全土を統一した時期もあったが、塩分濃度の好みによって、それらも分裂。様々な小国が散りばめられるようになる。
メイン肉料理時代が終焉し、アンティパスト時代へと突入していったのである。
折しも、沢山の国々が生まれた結果、多様性豊かな芸術が花開いたのも、この時代である。
目玉焼きには、塩胡椒なのか、醤油なのか、あるいはソースをかけるのか。
酢豚にパイナップルは入れるべきか否か。
東部と西部、北部と南部などとハッキリ色分けされるものもあれば、見事にバラバラのモザイク模様に塗り分けられるものもあった。
なお、筆者は、目玉焼きには塩胡椒派であることを明記しておく。
そのように小国同士の小競り合いがしばらく続いていたのだが、やがていくつかの大国や連合国が生まれ、再び大陸全土にガス火があがる。
第二次世界大戦、あるいは、ポテト戦争と呼ばれる戦争の始まりである。
それは、主要国の首脳会議後の会食が引き金となった。
供された茹でジャガに、持参したイカの塩辛を乗せて食べた某国首脳に対し、その行為に我慢ができなかった者が、このように言い放ってしまったのである。
曰く。
「ジャガイモの熱でバターを溶かして攻める『ジャガ×バター』が正義!正々堂々とやるべきよ!」
口は災いの元。
「ジャガイモにがっちり味をつけて攻める『塩辛×ジャガ』が至高!」
「ジャガイモが野菜の立場を追い詰める『ポテ×サラ』もお忘れなく!」
各国首脳が立ち上がり、不規則に主張を始める始末。自らの価値観を脅やかす敵は、自国の敵なのだ。
そこから戦争に発展することになったのは、自然の成り行きであったと言えよう。
しかし、後の歴史書に語られていた。
「触手プレイか……。ナシよりのアリね……。」
と『ジャガ×バター』派が後に呟いていた、と。
いっときの感情に身を任せてしまったことが取り返しのつかない事態を呼んでしまったという、悪しき事例である。
ちなみに、個人的には『明太×ジャガ』もアリ。
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6 :匿名
06/03(水) 14:04
>2 のシリーズの続きですが、設定の引き継ぎなしの読み切りです。
大陸の覇者、絶対的強さを誇るじゃがバター軍の王位継承権第一位、バター王子は、フルーツ同盟軍の大将の娘、りんご姫を愛してやまない。凛として、毅然と軍の支え役として生きているりんご姫。その愛らしさ、強さ、健気さ、どれをとっても、他の姫になど敵わない。何としてもりんご姫を手に入れたいのだ。王子は、使えるすべての手を使ってりんご姫を手に入れるべく、同じくりんご姫を手に入れようとしているポテサラ軍を叩き潰そうと決意。
さて、ポテサラ軍陣営では、宰相とりんご姫との政略結婚の支度を進めていた。これは、フルーツ同盟軍との昔からの約束なのである。なぜなら…フルーツ同盟にとっては、じゃがバター軍に属したところで立場も得もないが、ポテサラ軍は、フルーツ同盟軍の兵のほとんどに、地位を贈るというからだ…。
ここでお気づきだろうか…りんご姫の意思は、なに一つ考慮されていないということに。
ここで補足するなら、りんご姫は聡明で、凛としていて強く正しく美しく、そして、清い。病に倒れた父に代わって少女の折から同盟軍を鼓舞しまとめ率いてきた姫であるから、この周囲の勝手な言い草と争いに自らの手で終止符を打つ方法を考えているはずである。バター王子と結ばれるか、ポテサラ軍に嫁入りするか…。
…なんてことは、まるでない。
彼女は、寝覚めの悪いこの朝を不機嫌に迎え、額の汗を拭い、なぜあんな夢を見たのか、と辺りを見回す。
ふと手元を見ると、起床時間を知らせている、虫食われたりんごが中央に刻印されたものが、こちらを見ていた。
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