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┗2983.Sofa.(80-84/99)

|||1-||||リロ
80 :阿近
2013/10/21(月)12:22:11


いつだったか、言われた言葉を思い出した。

“負けを認める日が来る”

勝つとか負けるとか、あんまり興味がねぇ。
だが、ふといつかの言葉を思い出した。

カチッと古臭い音を立てて、再生される懐かしい音。
酷く傷んでいて、時々掠れる。
いつかのためにと残されていたもの。
再生するための箱を探すのに苦労した。

“何故カセットテープなんだ?”
“ずっと残っていたら意味が無いから”

では何故音を残すのだろうか、その時は聞かなかった。
おおよそ、俺には理解できないと思ったからだ。

綺麗に笑いながら、アンタは音を残していた。

“恥ずかしいからそんなに見ないで”

少しだけ頬を染めて、俺を見たアンタは、俺への言葉を残した。



>いつか、負けを認める日が来るよ。



俺をまっすぐに見つめて、いや、俺の何を見てそう言ったのか。
強く、俺の何かを捉えた視線を寄越し、アンタはそう言った。


カチッと古臭い音を立てて、懐かしい音が止んだ。









ああ、分かったよ。
俺が負けた。

アンタの言った通りになった。

もう一人では生きていけねぇんだ。

アンタが言ったことは全部本当になった。



>たった一つの嘘を残して。
(俺のために吐いた唯一の嘘。)

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81 :阿近
2013/10/31(木)08:47:27


どうしようにも愛しくて…

堪らなくなる時がある。


今、この瞬間を幸せと呼ぶのだと思う時がある。




俺は、弱くなかった、だが強さを知った気がする。

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82 :阿近
2013/11/05(火)15:34:25


小さく、そうだな、煙草ぐれぇの大きさにして

持ち歩けたのならどんなにいいだろうか。

小さい体を大事に大事に扱って、俺の机の上で飼う。

コーヒーに付いてくる菓子は食わせてやる。

休憩、ああ、昼寝の時だけ元の大きさに戻してやる。

優しく優しく抱き寄せると約束すれば、抱き枕になってくれるだろうか。

このまま、俺の全てを染めて犯して、おかしくなったことを隠してくれるだろうか。

正義なんかよりもお前を選ぶ俺が、正しいと唱える世の中が欲しい。

このまま、世の中との比較を忘れて、二人だけの時間を。

そろそろ気づいてもいいだろう?



ここには、俺とお前しかいないわけじゃねぇ。
無数の人間の形をした生き物、不完全ながらにそれはそれは美しく。
能力に許された場所に足を付いて、日々の時間を費やして。
その無数の生き物の中で、惹かれあった。

二人だけの世界で肌を求めたわけではなく、
温もりを欲して寄り合ったわけでもなく、
互いの何かに惹かれて、

“もう一度”

と手を伸ばした。

二人だけの世界で、死が待ち遠しいなんて、寂しいだろう?
数ある選択肢の中で、絡んだ糸がお前に繋がっていたと信じてぇ。
(仕方なしに絡んだ運命などと言われたくはない。)

俺が選んだ、お前に選ばれた。
広い、想像を遥かに超えた空間で共有している時間の奇跡に魅せられて。


今日もまた、俺は一つ選択する。
(最高の明日のために。)

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83 :阿近
2013/11/22(金)10:28:15


いつだったか、約束をした。

随分と前の話だが、確かに覚えている声。
幼いながらにもアンタの言うことをきちんと聞いていた、と俺は思う。
多少可愛くねぇところも愛嬌ってことで許せ。

アンタが昔言った、何度も教えてくれた場所があった。

“覚えている人がいてくれたら嬉しい”

だが秘密。
アンタは、こんなだった、あんなだったと、長く長く俺に語った。
肝心な情報は置いて行かずに。
アンタが言っていた、その時が来たと俺は感じている。
探さなくては、と思った。

アンタが言ったことは全部本当だった。
故にアレも本当だったんだろう?

“人の心を感じて、綺麗な虹が出る場所がある”

虹?

“あなたが大人になったら行くことができるよ”

なんで?

“秘密にしたくなる、けど誰かに言いたくて仕方なくなる”

矛盾してますけど?

“そんな素敵な場所があるの”

何処に?



答えは無かった。
いつもそうだ、人の話は聞かねぇ。
一方的に話して、綺麗に笑う、卑怯なアンタ。
俺のことを見守ってるような視線と伸ばしてくれなかった手。
大きな矛盾を兼ね備えたアンタ。


結局嫌いになれなかったアンタ。


本当はまだ傍にいて欲しかった。

(一度も言えなかった。有難うさえも。)

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84 :阿近
2013/11/28(木)17:53:49



今この瞬間に大事なものを失っているかもしれねぇ。

そんな恐怖に飛び起きる日々。

とりついたのは過去か、ただの妄想か。

先に見るのは光だが、今はどうだ?

失うのか、その感覚を知っているのか。

遠の昔に捨てたと思ったものは、そもそも存在しねぇもので。

不確かな気配が襲う。

冷たいと思うか、酷く重いそれを抱くことすら出来なくて、放ることも出来ねぇ。

俺が気を抜けばぬるりと足元に絡んで影を犯す。

言葉で教えてくれたのならどんなに楽か。

(いっそ一思いに。)

恐怖に色を付けるなら何色か。




そもそも感情とは、

身体よりも正直だろうか。

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|||1-||||リロ

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