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┗611.夢のうつつの(13-17/66)

|||1-||||リロ
13 :阿近
2007/01/09(火)08:31:36

局の屋根にのしかかる豪雪が綺麗に溶けて、
空が晴れ渡っている夢を見た。

実際起きてみりゃ、まだ雪雲は重く垂れ込めたままらしい。
俺の部屋には窓が無ぇから、外から来る連中の恰好で大体を知る。
水気の多い雪で足元は最悪、滑るわ濡れるわで犬も喜ばねぇ天気だと、鵯州が愚痴った。

なのに眼鏡女から手渡されたのは、よりにもよって二番隊への書類。

「見なかったことにしていいか」
そろりと呟いてはみたが、返って来るのは勿論、晴れやかな笑顔での否。

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14 :阿近
2007/01/09(火)08:35:46

気付かねぇとは思うが、知りてぇなら答を。


機械蝶なら、ぶち壊れた。

鉄と電線の塊の残骸なら、今も机に放ってある。
欲しけりゃくれてやるぜ。
どうせ、もう飛ばねぇガラクタだ。

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15 :阿近
2007/01/18(木)02:09:54

手の甲に透ける血管が、矢鱈くっきりと浮かんで青々と見える。
その周り、指の峰や付け根に幾つかの紅の擦り傷が散らばって不調和極まり無い。
傷が塞がるまでは、術式の間は手袋をしないとならねぇな、と、少しうんざりする。
指先には紫と緑と黄色と茶色の色素が沈着している。
爪に染み付いた蒼色の試薬は、ケラチン質の成長と共に大分押し出されている。あと数ヶ月もしない内に、蒼色は俺の手から消えるだろう。

何故か自分の手を凝視していることに気付いて、手を引こうとする。
だが、動かない。
感覚も無い。
作業台に投げ出された自分の手を他人の気分で眺めながら、

手が動かねぇと、仕事が出来ねぇ
仕事が出来なくなるのは、怖ぇな

そう言っている割に冷静な声で呟く俺が居る。



覚醒。
右腕は身体の下敷きにしていたらしい。
痺れと共に、ものの数分で小汚ぇ手の機能は回復。

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16 :阿近
2007/01/28(日)20:55:05

今までどうってことも無かった筈の薬液の臭いで、肺の辺りが淀んだ気がした。
胃まで逆流し始める前に部屋から離脱はしたが、後を任せたメガネチビ女辺りには、だらしねぇだの何だのと散々詰られた。

『悪阻じゃねぇか』
通信技研で愚痴れば、鵯州が気色悪いことを言い出す。
『お前の腹なら、人の子が産まれるかどうか怪しいもんだな』
どういう意味だ、と思う。

「人以外と寝た覚えはねぇぞ」
そうは言ったが、
いや、そもそも孕んでねぇよ。

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17 :阿近
2007/02/14(水)09:13:56

家路はいつも、薄暗く寒い。
剥き出しの脚がそろそろ凍えて、縺れ始めてしまいそうだ。

俺はまだほんの子供なので、
認めたくはないが独りで誰そ彼を歩くのが、唯々恐ろしい。

横の茂みから、野犬の唸りが聞こえた気がする。
枯れ草の間から、何匹も何匹も。
俺が疲れ果てて足を止めたら喰ってしまおうと、付かず離れず追い掛けて来る。

鬼と呼ばれても頑健な牙がある訳でなく
野卑な大人共のように敵を殴り殺す腕力がある訳でもないので、
俺はただ、野犬との距離が縮まることに怯える。
俺なんぞを殺しても大して肉は喰えないと思うが
この辺りでは、皆が皆こんなものだ。
犬も、飢えている。
草の合間から覗く眼が、ぎらついている。


懸命に走り始めた脚の回りは遅く
心肺機能もすぐに音を上げて
それでもまだ、今日の寝床は遥かに遠い。


すぐ後ろに迫る獣の息遣いの直後
右足首に激痛。


ああ、捕まった。







覚醒。

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|||1-||||リロ

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