彼の涙を見てしまってからというもの、何も手に付かなくて参ってしまった。 楽しそうに原っぱで遊ぶ子供たちを眺めていると、ぼくの心の隙間から風が強く吹くんだ。 今のぼくには賑やかな笑顔よりも静かなクラシックの方がちょうどいいや。 届いている手紙、目は通しているけれどいつものぼくのように書ける自信がなくて返事を書くのを見送ってしまっている。 なんだか嫌な風だ。 ちょうど気晴らしにと散歩に出たとき、丸くて真っ赤な月が視線を合わしてくれているかのように低く顔を覗かせていた。 君も一緒に散歩をするかい?なんてね。 分かっているよ。 君は彼じゃあない。 彼ではないのだ。 Jonathan Joestar |
# - <破り捨てた跡がある> - 寂しく思うのはぼくだけだと思っていた。 何処でそれを話すつもりだったんだと聞かれて、お茶でもしながら面と向かって話そうと思っていたからカフェに行くつもりだったよ、と告げると、彼はぼくにしがみついてしまったんだ。 そんなの泣くに決まっている、とね。 彼はもうぼくのことなんて居ても居なくても変わらない存在なのだろうと思っていたから、そんな反応をされてぼくは驚いてしまったし、寂しいのはぼくだけじゃあないのだと感じてうっかりぼくまで涙しそうになってしまったんだ。 言い出しっぺのくせに泣くなんて矛盾している。 だからぼくは笑ってみせた。 暫く離れないその腕から伝う震えなんて気付かないフリをして、彼が落ち着くまでずっと背中を撫で続けながらね。 大丈夫、お墓に入るわけじゃあないのだから、一生の別れじゃあないんだよ。 なんて、彼にそう言い聞かせるように、ぼく自身に言い聞かせたんだ。 今月まで、と期間を定めたよ。 そして沢山の約束をした。 最後に沢山の思い出を作ろうと彼から言い出したので、これから暫くは忙しくしてしまうだろう。 大丈夫。ぼくは体力が自慢だからね。平気さ。 ふたりでしっかりと、最後の夏を楽しもう。 ♦ ♦ ♦ 思い返してみると、彼ってずるいや。 いつも勝手して遊んでいるくせに、そんな風に泣くなんて反則だ。 Jonathan Joestar |
今日は少し早めに日記を書こうと思う。 午後から予定が入ってしまったし、夜には大事な食事もあるからね。 やる事がたくさんある日くらいはぼくも本気を出して取り組むんだ。そうすると本当に予定よりも早く片付いてしまうという集中力がぼくにはある。 普段からそうしろと言われてしまうけれど、毎日それじゃあ疲れてしまうよ。だからたまにでいいんだ。肝心な時に、だけでいいのさ。 最近ディオがやけにうきうきしているのが見て取れていた。 だからぼくは気になってね。どうしたんだい、最近やけにご機嫌じゃあないか。なんて聞いてみたのさ。 そうするとディオが嬉しそうに恋人の話をしてくれたんだ。 彼に恋人が出来ているのは薄々気が付いていたけれど、そんな風に沢山話してくれる彼を見れるだなんて思っていなかったからびっくりだ。 まるで角砂糖の角で頭を殴られているみたいだよ、と茶化すとね。ガンガン殴ってやるしなんなら口に蜂蜜も流し込んでやる勢いだぜジョジョ。だってさ。 ディオと今もこうして話せていて、なんなら彼からそんな風な話を聞くことが出来る関係になれているなんて、ぼくはなんて幸せ者なのだろう。 ぼくたちが関係を約束していた頃には見られなかった“嬉しそうに惚気を話すディオ”という新たな一面を見られるようになった。 お互いに知らない事の方が少ない、長い関係のぼくたちは、ここに来てようやく本当の兄弟のようになれたと思う。 彼曰く、こんな話を出来るやつが居なかったから爆発したように話してしまったんだって。 彼はプライドが一丁前だから惚けた顔なんて見せられないんだろうな。 …そう思うと、彼のそんな顔を唯一見ることの出来る存在、だなんて義兄弟としての特権みたいだね。 いつか君たちカップルと一緒に会話の出来る日を楽しみにしているよ。 なんで言ったら父親振るなと煙たがられてしまうだろうか。 幸せな報告が聞けて本当に嬉しい。 これからもどうぞお幸せに。 Jonathan Joestar |
休日に涼みに出掛けていたのだけど、涼しいからって岩の上で昼寝をしてしまったものだから日に焼けてしまってね。顔が少しヒリヒリ熱を持ってしまったんだ。 そこまで考えていなかったものだから慌ててしまったよ。 さて、ぼくは気付いてしまったことがあるんだ。 とっても初歩的なことなのだけれど、山を登るときにまるで神の教えかのようにふと頭に入ってきてね。 山を登る、という目標に対して、ぼくはひたすら歩いていたんだ。そのひたすら歩くというのは積み重なる努力そのものだ。 そして次は、歩くことに草臥れてしまったときのこと。ぼくはそれでもどうしても山で涼みたくて、挫けかけた心をなんとか踏ん張らせることが出来た。これはぼくの山への強い気持ちのおかげだったのだろうと思う。 最後は適度な休暇。少し日陰で休んで、水を飲みながらそこから見える景色を楽しんだときに、身体や心を休ませる事の大切さとその時見える景色が楽しめるという視野が広がったかのような楽しみを得られたんだ。 つまり何が言いたいかというと、身体と心のバランスはとても大切だという事と、休むことは決して悪くないという事。なんなら寧ろ休む事こそ大切なようにも思えた。 これって、ぼくがこれからやろうとしている事にもとてつもなく活かせることじゃあないかってね。ぼくは嬉しくなったんだ。 自然に癒されて来ようと決めたこの小旅行で驚くような収穫を得てしまったよ。 それが嬉しくてルンルンで昼寝をしてしまったのだから、この日焼けもなんだか許せてしまうね。 ようし、浮かれていないで午後からもちゃんとしよう。 Jonathan Joestar |
昼食を取ってからこの日記休憩を取らないと眠気が取れなくて困っちゃうや。 外はとてもいい天気なのにぼくは父さんに見張られて勉強さ。ちぇ、嫌になるな。 その点ディオが羨ましいよ。 彼は卒なく熟してさっさと友達のところへ遊びに出掛けてしまうのだから。 居眠りしてはダメだとうつらうつらしていたところに、何処からか歌が聞こえて来た。 大人の恋愛を描いたその歌詞は子供ながらにドキリとしてしまったし、少し憧れてしまったよ。 そんな風に懇願してしまうような恋にぼくはまだ出逢った事がないんだ。 恋愛にてんで縁のないぼくは、父さんにすら微笑ましげな目を向けられてしまう。 ぼくには春も来ないまま夏が来てしまったなァ…。 明日は川に涼みにいこうか。 もちろんダニーと一緒にね。 Jonathan Joestar |