※必読規約
※文字色一覧 □white □white2 □white3 ■Black
日記作成(表紙)には
【 使用C名をフルネーム(作品名) 】を使用してください。
】サイト移転・規約改正のお知らせ 一度上部の※必読規約からトップページへ目を通してくださいますようお願い致します。

スレ一覧
1878.PATH
 ┗19

19 :山田三郎
2020/10/01(木) 13:18



禁止事項②:同ディビジョンメンバーの協力、助言

これを盛り込んだのには確固とした理由がある。
一つは、あんなものを預けたと素行の悪いMTCメンバーに知れたら、確実に悪用される。火を見るより明らかなレベルで悪用される。一瞬で残高をゼロにされる。もう100%明らかだ。
そしてもう一つは、正直残高を根こそぎ奪われるより深刻な問題だ。お金はまた増やせるけどこっちは本気で洒落にならない。


一兄に叱られる。


こんなゲームをしてると一兄に知られたら確実に叱られる。それはもう烈火の如く怒るに決まってる。
理由なんてもう数え切れないくらいある。まず相手が因縁浅からぬMTCのメンバーであること。次に相手のとても大事なものを遊び半分で預かっていること。最も肝心なのは、結構な額の入った通帳を不用心に渡していること。
一兄がどんなに苦労して僕ら兄弟を孤児院から引き取るための資金を稼いでたか知ってる。正確に言うと当時の僕は知らなかったけど、今の僕は痛いほど分かってる。そんな一兄にゲームの内容なんて知られたら叱られるどころか幻滅される。悲しまれる。分かってる。遊び半分で大事なお金の入ったものを他人に預ける浅はかな奴だとガッカリされる。

僕はそれを否定できない。本当に遊び半分でゲームを続けてる訳じゃないよ、>>3とか>>5とか>>7あたりに書いてる通り、このゲームを始めたのは僕なりの確固とした理由がある。
でもそれを一兄にうまく説明できない。僕があの男、毒島にどれだけ本気になってるかを、とても説明できる自信がないんだ。


だって、アイツに本気で惚れてるなんて、どうしたら説明できる?


全部きちんと説明するのはハッキリ言って無理だ。
だから、「最近元気ねぇけど何かあったのか?」って優しく声を掛けてくれた一兄に、僕は色々端折って隠して要点だけを伝えることにしたんだ。
『年上の人を好きになった』って。



一兄はビックリした顔してちょっと照れ臭そうに目を細めて、そうかって当たり障りのない返事をしてくれて、その場は何となく適当に流れたんだけど、その夜僕がお風呂に入ってる時に一兄と二郎が極秘の家族会議をしてるのが分かった。
だらしない二郎のせいでリビングのドアがちょっとだけ開いてたから、聞こえたんだよね。
正直もう恥ずかしくて死にたい。穴があったら入りたい。2、3週間くらい穴の中で過ごしたい。かなり本気で。




[返信][削除][編集]



[戻る][設定]

WHOCARES.JP
3 :山田三郎
2020/09/13(日) 18:24



ゲームを持ち掛けたのは当然僕だ。
これでも結構考えたんだよ。一番大事なものって限定するとお互いヒプノシスマイクを預けることになるし、暴力有りにすると勝ち目がないし。まぁ、相手が本気で僕相手に暴力を振るうとは思ってないけど。
多少なりとも渋られるかと思ったけど、向こうの反応は案外あっさりしてて、あっさり承諾した上にあっさり大事なものを手渡してくれた。


これ、何の鍵だろうな?
車の鍵じゃなさそうなのは分かるけど、家の鍵か、もしくは大金の詰まった金庫の鍵なのかも知れない。とにかく、
毒島が僕に預けてきたのは何かの鍵

で、僕からも相応の大事なものを渡さないとゲームが成り立たないだろ? だから、今までに株取引その他でコツコツ貯めたお小遣いの殆どを突っ込んでる通帳を預けることにした。億単位の預金があるやつ。あ、一兄や二郎には内緒のやつだよ。
ネットバンキングが主だから普段は全く使わないけど、失くして悪用されたら活動資金が一瞬で消えるからね。日常生活で困ることがなくて、でも奪われるとクソほど困る。そういうものを選んだつもり。
僕が毒島に差し出したのは、預金通帳

お互いにアイテムを受け取ってから一週間のインターバル。その間に絶対に見つからない場所へ隠す。
準備が整ったから、ようやくゲームスタートだ。
あとは毒島のベースキャンプを訪れて、テントの中をくまなく探して、預けた通帳を見つけたら僕の勝ち。

もちろん毒島が先に僕の隠したアイツの鍵を見つけたら負けだけど、まぁ、負ける気はしてないよ。
鍵は今のところ僕の自室のキャビネットの一番下に仕舞ってあって、学校に行ってる間は自室のカギをこじ開けない限り見つけられない。そんなことしたら、流石に一兄や近所の知り合いに見つかるだろうからね。
つまり、僕にとって絶対的に有利なゲームなんだ。


なんでこんなゲームを仕掛けたかって?
決まってるだろ? 正当な理由をつけて、ほら、その。アイツのところに通えるからだよ。
何の経緯もないのに家から遠く離れたはげ山の奥地を何度も訪れるなんて不審者以外の何者でもないだろ? 最悪一兄や二郎に見つかっても言い訳が出来る。敵対している以上体裁も悪いし何よりアイツにどう思われるか分からない、僕は人より頭の回転が早い分凡人には意識の及ばないところまで配慮して的確に行動出来るんだよだからアイツに理由もなく会いに行ってるなんて周りに知られる訳にはいかないし当人に警戒されたら元も子もないしそもそも会いに行かなきゃ良いだろって話なんだけどそれだと都合が悪いっていうか神童には神童なりの目論見というか考えがあって通いたくなる衝動を抑えられないというかでも別に理由をこじつけてまで会いたいとか別にそういうわけじゃなくて別にアイツに興味なんて全然ないけど行動とか認知とか生活様式とかに多少学術的な興味があるっていうかだから別に本当に、


テントに着いたから続きはまた後日ね。
そういう訳だから、僕の勝ちを見守ってて。




5 :山田三郎
2020/09/14(月) 21:50



あの男が気になり始めたきっかけは、
そんなに大したことじゃないし別に凄く気になってる訳でもないっていうか別に気にしてはいないんだけど、まぁ、そうだな。他の有象無象の足りない大人たちよりはマシだと思える部分が多い。
一番気に入ってるところは、そうだな。
アイツは僕のことを一切子供扱いしないんだ。

バトルで手加減しないのは勿論、子供だからって教育に良くない話題を避けたりはぐらかしたりしない。
夕食の手伝いだって甘やかさないし、成人男性と同じだけの体力が備わっているものとして扱ってくる。言葉遣いを僕に対する時と同じディビジョンの奴らに対する時とで変えない。わざとらしく分かりやすい単語にしたり、「子供には分からない」ってつま弾きにしたりしない。
僕を僕として見てる。だから、他の大人とは違うと思った。


ただ、一兄とは意見が違う。
この世で最も崇高にして至上なる存在の我らが一兄は、僕らとチームを組むようになってから「子供を子供扱いしねぇ奴が一番恐ろしい、十分気を付けろ」ってキツく言い含めるようになった。
でもこの教えには納得いってない。今まで僕らは、僕らを子供だと侮って好き勝手してきた馬鹿な大人をたくさん見てきた。例えばサンセットビルの展望階でね。
だから、僕は僕の価値観を信じる。一兄や二郎ほど人を見る目は無いかも知れないけど、嗅覚はあるつもりだよ。
勿論、忠告だけは参考として受け取っておくけど。


それに、
アイツ、偶にさ。
ごく偶になんだけど、僕がそっちを見るとすぐ顔を逸らすから他の誰も気付いてないと思うんだけど、すごくこわい目をしてる時があるんだ。
例えるなら、そう、獲物を見る時の目。
僕を子供や大人の分類に当て嵌めてるんじゃない。たぶん、アイツは。





7 :山田三郎
2020/09/16(水) 20:43



3日目に入る前にまず話しておかないといけないと思って。
僕らがどういった経緯で親睦を深めたか。あるいは、ここまで近しい距離で接することを許し始めたか。

勿論事の始まりはあの鮮烈なテリトリーバトルの準決勝戦だけど、同じラップバトルの参加者同士その後にも会う機会は多々あった。
その中でも距離を縮めたきっかけは、これはラップバトルとは何の関係もないんだけど、萬屋に来た依頼の一環で南半球、主にオーストラリアもしくはヨコハマの森に棲息しているエミューを捕まえて捌いた後の鶏肉を手に入れるってミッションから………オーケイ、うん。何を言ってるか分からないって顔をする気持ちも分かるよ。その気持ちは最もだ。僕も何を言ってるか分からない。うん、他に説明のしようがないから聞き流して。エミューはどうでも良いんだよ。


アイツのベースキャンプが予想外に居心地良かったから足繁く通うようになって、色々話すようになって、アイツもそれを拒まなかった。
僕が何を聞いても丁寧に答えてくれたし、何を頼んでも出来る範囲で応じてくれた。

平日の昼間、特に理由もなく無性に、急に学校にいるのが嫌になって飛び出したことがある。その時たまたま思い浮かんだのがアイツのベースキャンプで、その場でラインしたら数分で返事が来たから『泊まりに行く』って連絡してそのまま押し掛けたりした。
なんていうか、分かるかな。急に今いる場所から逃げ出したくなる気持ち。全部忘れて無心になりたい気持ち、っていうか。そういうのを説明するのも面倒だったんだけど、毒島は特に何も聞かずに夕飯を用意してくれたし、僕用の寝袋まで用意してくれたし、あとゲームで遊んでくれた。
そうだな、うん。そういうところが何ていうか、ほら……その。居心地良くて。好きだなって……いや、別にそういうアレじゃないけどさ。本当に別にそういうアレじゃないけど。

それから、もっとアイツのことを知りたくなって前より頻繁に来るようになったし、泊まる回数も増えた。
アイツはいつも歓迎してくれるし僕の好きにさせてくれる。スイッチも一台渡したから手が空いてる時はゲームの対戦相手にもなってくれる。(マンカラの勝率が僕より高いのが気に食わない)
要するに良い友人だ。……多分。友達の家に泊まったこと、ほとんど無いから、多少推測だけど。友人ってこんな感じの関係だと思う。多分。
だから、今回のゲームを持ち掛けた時も毒島はいつも通り応じてくれたし、これも友人の遊びの延長だと思ってるだろう。多分ね。


僕がここまで本気だってアイツは知らない。きっと。