クリスマスは静かに過ごしたかったのに 何だかんだと騒がしい集まりに巻き込まれるし……。 今日もパーティだの何だので騒がしいね。 まぁ、君はああして君を愛する多くの人間に囲まれて 賑やかに過ごしているのが似合っているよ。 その姿を見ることも、僕の喜びのひとつだ。 さて、そろそろ話も終わって戻ってくる頃だろうかね。 今日は君の願いを何でも聞いてあげよう。 他の如何様なるプレゼントよりも君にはそれが一番だろう? ねぇ、影片。 何度でもこの日を重ねて行こう。 君が生まれた奇跡に祝いを込めて。 |
……遅いね。 客人を迎えに出た影片の戻りが遅い。 ――などと言っているうちに帰ってきたようだ。 準備は良いかい?マドモアゼル。 あぁ、今日の君も素敵だよ。さぁ出迎えよう。 ようこそ。 全ての渇望を満たすことが叶う饗宴へ! ……どうして君しか居ないのだね、影片! 何?近頃森の外れにできた館の住人に 客人を取られた!? チッチッチッ 君は口の回りが悪いからねッ! どうせ向こうの口が良く回る男に 先手を取られてしまったのだろう 今までこの森には僕らしか居なかったのに…… 妙ちきりんな連中が増えてきてしまった……。 僕はただ、 心乱されることなくマドモアゼルとふたり 暮らしていられれば良いだけなのに。 芳醇な御馳走を味わい、ドレスを仕立てて……。 | そう手を挙げて主張しなくとも構わないよ。 君はどうせ 僕がどう思っていようと居座るだろう。 それでは嫌……? はぁ……僕に求められるほど優秀な悪魔に なれているとでも思っているのかね。 もっと君が流暢に話せるようになれば、 考えてやらなくもないけれど。 『Maman!』 Maman!?ではないのだよ!? 『Lolo~』『Miam-miam……』 ノン……。 『Maman,bisou……』 ……まぁ、それぐらいならね。 いや、話が逸れている。 ……まったく、そう満足げな顔をされると 叱る気も失せるね。 おいで、『Petit bon homme』 今夜はいっしょに過ごそう。 |
誕生日だからといって帰国する必要はないだろうと……。 今年は特に帰国の予定を入れずにいた。 わざわざ祝われに行くようで 謙虚さに欠ける行いだとも思っていたところであるし。 ライブの企画やら何やらで帰国することも多いから。 君に会わない日が長々と続く訳でもなし……。 と思っていたら嘆きに嘆いた電話が掛かってきた。 電話口で言葉になっていない声を発するんじゃない……。 僕はこうして君が遠く離れた地に居ながらも祝ってくれるだけで 充分満たされる程に嬉しいのだよ。 そんなものは意味がない? ノンッ!意味があるかは僕が決めるのだよッ! 君の価値観を僕に押し付け……そっくりそのまま返す!? ……あぁ、……まぁ、……まぁね、君の祝いたい気持ちも理解しよう。 どうせ数日後にはそちらへ行くのだから……。 怒っていないで泣いていないで、素直に祝ってくれないかね。 ……ありがとう、影片。 |
#「おれは生まれ変わってもお師さんと一緒におりたいけど…… #もっかい一からって言われたらあかんかも……」 延々スマートフォンを弄っていた影片が不意に顔を上げ、 そんなことを言うものだから呆けてしまった。 「何の話をしているのか分からないのだけど」 #「根拠もなく『出口に着くはずや!』って #がむしゃらに走っとったから耐えられたけど、 #決まった期間ずっと真っ暗な中走らなきゃあかんのは無理かも~……」 いやだから何の話なのだよ。 #「お師さんがすっごく塩対応だった期間のはなし」 ふむ……成る程。期間が分からないうちは、 明日には暗いトンネルを抜けるだろうと希望を抱く。 君はそれを一日一日繰り返して暗闇を抜けられたけれど、 『〇年かかる』というのを明確に出されてしまうと 逆に『〇年間はこのまま変化がない』というのが確定してしまうから辛い、と。 #「でも今のおれがそのまま昔に戻ったら #お師さんなんておれのテクニックでイチコロかもしれへんな!」 「何の話をしているの」 #「磨き上げたおれの超絶テクニックで~!」 「君のテクニックとやらは知らないけれど、 僕が何をどう拗らせているのかは分かるだろうからね。 雪解けは早いのでは?」 #「え……分からん……お師さん勝手に開いただけやし」 「は?君に解してもらったと思っているのだけど?」 #「拗れとるな~って眺めてたら勝手にふにゃふにゃんなったやんなぁ?」 「なっていないのだよ。これでは次の雪解けも遠そうだね」 #「ややな~!」 「今のうちにしっかり学んでおくが良いよ。僕について」 |