「あぁ、光がない。この胸を高鳴らせるような激しい光の瞬きが。」 #「なんや落ち込んどるん…?ほら、お師さん、ぎゅしたるよ。」 「……君へはときめかない。」 #「がーん!ちょっとショックや!」 「ちょっと……?君、こんなにも愛してやまない僕が 君にときめかないと言っているのをちょっとで済ますのかね? 君にとっての世界が崩壊したに等しい絶望感を醸し出して良いのだよ。」 #「今日ほんとにどないしたんー?」 「どうせ僕は面倒くさいよッ!」 #「そんなこと言うてへんよぉ〜。ほら、よしよし〜。」 |
その歌は、その声は 求めるか、与えるか。 その声に暴かれ、貫かれた我が身は その歌の中の遺伝子を抱いて 新たなる芸術を生み出す。 その、他を凌駕する精神的快楽の前に それ以外の何を望むというのか。 君よ、僕を求めたまえ。 僕へ、君を与えてくれ。 |
#「もぉ〜!もぉえぇもん!家出したるからな!」 「へぇ、お小遣いとハンカチとティッシュを持っていくのだよ。 日が暮れる前に帰って来なさい。」 #「家出や言うとるやろぉ〜!!」 「あぁ、水筒も持っていきたまえ。」 #「お小遣いあるならいらへんもん!」 「ノン!ペットボトルから直に飲むなんて品がないよッ! せめて飲みきりサイズにしなさい。」 #「もったいないやん、ちょっとしか値段変わらんのに。」 「お金のことを気にするなら水筒で良いだろう。 冷たい紅茶を淹れてあげるから。」 #「…お師さんがどうしてもって言うなら。」 「首に掛けてあげようね。」 #「重い!」 「はい、気をつけて行っておいで。」 |
「……君はもう少し拒絶するということを覚えたほうが良い。」 何のことだか分からないと顔に書いてあるよ、影片。 その、感情を何でもかんでも顔のカンバスに乗せる癖も どうにかしたほうが良いと思うけれど…… その指摘は今度にしよう。 「君は僕が命じれば何でもしてしまうだろう。」 #「できひんことはせんよぅ。」 「沖まで泳ぎなさいだとか。」 #「おれカナヅチさんやからね…。」 「今すぐ命を断ちなさいだとか。」 #「んあ〜…。」 「家から一歩も出るなだとか。」 #「それ、お師さんは?」 「一緒にいるけれど。」 #「一歩も出んよ!」 「拒絶したまえ!」 #「やってやって、お師さん一緒にいてくれるし幸せやん!」 「一般的に見て、部屋から出さないなんて異常なのだよ。 拒否するべきだ。」 #「でもぉ〜…。」 「君が後先考えずに願いを叶えようとするから、 僕が理性でもってそれを口へ出さないようにするのだよ。」 #「お師さんはおれに部屋んなかいて欲しい。 #おれはお師さんと一緒にいられる。WIN-WIN!」 「寧ろどちらも負けているだろう、それ。」 人間は理性ある生き物だというのに……どうしてこう、 その利点を手放すのかね。 ……すべてを叶えて欲しいわけではない。 叶えられてしまえば寧ろ、その重責に潰されてしまう。 だから僕は願いを口にしない。 |
ペンギンは空を飛ばない。 |