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案外普段から細けぇのは俺の方で、摂津はどちらかといえば大らかなタイプだが4日っつう日のことはあいつの方がよく覚えてた気がする。ただ、いざ一周してみりゃ全ての始まりだったこの日がすげぇ特別に思えて、今日という日に何か残してぇと思った。
お前よくこれで大らかとか言えんな。歯軋りがうるせえだの靴下を洗濯かごに入れろだの日常的に喚かれてそれを言えんなら大らかなのは間違いなくお前だろ。いや、大物か？

10月4日っつうのは別に仕組んだわけじゃねぇが、引き寄せられるように出会って、この日が俺の世界を変えた。
摂津の手によっていろんな物事が何物にも代えがたい大切なもんになって、ぐずって拗らせてぶつかって得たものは愛情に加算されてきた。きっとこれはこの先何十年、俺とあいつの顔に皺が増えようが変わらねえものの一つなんだと思ってる。
部屋番じゃねえか……って気付いた日には心臓がひゅっとなった。マジでどんだけこの数字に縁があんだかな。年々深くなりそうなお前の眉間の無愛想な縦皺と一緒に、何もかも根こそぎ深～く刻んでやるよ。

まぁ結局、その…なんだ…？
何年経とうが先にへばるなよ。おい、誰がへばんだ。あと言っとくがいくら歳を取ろうがお前にだけは死んでも負けねぇ。

決着がつくまで傍に居ろ。
……来世までつかねーわ。

Caro

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自分で自分のことを半分くらいは理解してるつもりだったが摂津と居るようになって新しい発見をすることが増えた。俺の反応を面白がって揶揄ってくるような奴と馬が合うってのもどうかと思うが、これまでを振り返ってみてお前だからだって思うようなことがまた増えた気がする。

諦めることがずっと癖みてぇになってた。何かを望むことは簡単でもそれに手を伸ばそうとはして来なかった。今考えれば自分の意気地なさが情けねぇ。けど、こいつと出会わなけりゃ俺はずっとあのままだったと思う。まともに会話していようが憎まれ口だけは一向に減らねぇが、気付けば見せちゃならねぇと思ってたことも一人で乗り越えるべきだと思い込んでたことも全部口に出すようになっちまってた。…魔法なんてもんがあるとすりゃこれは摂津だけが使える魔法だと思う。

素直さに欠けるのはお互い様だがそれでも前よりはましになってきた。前日に好き放題したせいで互いに寝る時間を十分に確保出来なかったが、弁当が食いてぇと言や俺が大学とワークショップで慌ただしくしてる日に合わせてわざわざ作ってくれる。…昨日の弁当も美味かった。ダーリンがどうだとか出来た彼氏だとか自分で言わなけりゃ少しは褒めてやろうと思ったが、まぁ…弁当と一緒に甘味も忘れねぇところだけは出来たやつだと思ってる。けどやっぱりどうみてもダーリンって面じゃねぇだろ、てめぇは。


摂津。てめぇが初めて強請ってきたもんが何か覚えてるか？あれからもう半年も経つらしい。…早えもんだな。