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┗ジゼル(54-58/62)

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58 :
10/14-23:00

  唯必要とされたいだけだ。何かに。誰かに。俺は此処にいてもいいのだと、言葉でなく、行動で示されたいんだ。俺を繋ぎ止めて、俺を求めて、そうして、俺を愛して。

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  風を冷たく感じるようになって、また冬が迫っていることを知る。何度となく繰り返してきた冬。一人で、そして二人で、孤独に、あるいは寄り添って、過ごしたあの冬とこの冬と、数え切れない冬。いつか寄り添って過ごした彼奴らは今どうしているのだろうと、感傷的な夜を過ごす。

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  あの瞬間を今でも鮮明に思い出す。信じていた。期待していた。独りよがりの愛を拒絶する小さな穴。俺の愛の歪さは、あの頃から変わりはしない。

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  向かい合って食事をする時。目の前の男の細く長い指がナイフとフォークに添えられて、切り分けられたものを口に運び、咀嚼して、飲み込む。嗚呼、あの指が俺の体に触れて、全身をまさぐって、中を奥まで暴かれて、そうして、あの口の中に飲み込まれたら、なんて。いつも通り会話を続けて平然を装いながらも熱くなりつつある中心に目を逸らした。こんな時に欲情するなんてどうかしている。好きでもない男だ。ただの友人。相手がいるという話を聞いたことはないが、一夜の間違いを犯そうという気なんてさらさらない。そうだ、最近感傷的な夜を過ごしたからに違いない。どうかしている。最近彼奴と会っていないせいだ。彼奴に会わなければ。

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57 :
07/04-22:47

  胸が詰まる。今でも思い出す記憶は脳に焼き付きこびりついてしまっているんだろう。あの日からもう随分と時は過ぎたと言うのに、そう、もうどんな話をしたかだとか彼奴がどういう表情であったかだとか、そんなこともう覚えていないはずなのに、何気ない一部一部が、彼奴の声が彼奴の顔が、急激にパッと思い出されては波のように静かに消えていく。おめでとう、と、一言言えたらいいのに。でも会いには行けないんだ。目の前の扉は固く閉ざされたままで、開けることはできない。苦しい。この日には、変わらず、ずっと、囚われたままなんだ、俺は。

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  幸せを祈っている。恙無く、笑っていてくれ。

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  どうして。何で。そんな問いかけを何度も何度も何度も、壊れたカセットテープのように繰り返して。裏切られた訳ではないと頭では分かっていても、心は頭に追い付かない。

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56 :
03/23-22:43

  蕾が綻び、花開く。鼻腔にそっと訪れる香りは春だ。日中汗ばむくらいに暖かくなる日も増え、気分が高揚していくのが分かる。冬の間は寒さに縮こまっていた体を、さて、どう動かしてやろうか、という気にもなってくる。毎年変わらず春はやって来るが、毎年変わらず春を待ち望んでいる。

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55 :
12/12-00:02

  身を寄せて、寒さに悴む手を繋いで、白い息を吐いて、夜に溶ける。遠く輝く無数の光を眺めながら闇に彩られた夜の縁を歩いて、悪態ばかり吐く口は、それでも時に感嘆の声を漏らしながら、愛を囁く。嗚呼、冬だ。寒くて、静謐で、俺と彼奴だけしかいない、俺の好きな冬。

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54 :
09/29-11:31

  会う度に愛を知る。隣にいると、まるで溶けて混じり合うかのように感じる。互いの境界を無くすように素知らぬ振りで手を繋いで、その手を離すことはない。想いを伝えようと迷いながら言葉を発するけれど、万の言葉よりも一度のハグで全てが伝わる。一緒にいると時間の感覚が狂わせられ、また何度も求めようとする。互いを隔てる距離が詰まればいいのにと、何度思ったか知れない。共に在れば、これから先ずっと、この愛のために生きていくことができる。そんな風に思える相手が、俺にも居たのだ。
  夏が過ぎて秋になり、下がる気温と相対するように彼奴への気持ちが募る。これからも共に在ろうと、愛していると、彼奴に告げよう。次に会うときには必ず。貰う愛以上の愛を贈ろう。言葉と行動と、心を以て、愛を示そう。共に苦楽を乗り越えて、その先の未来に生きよう。互いのために生き、いかなる時も互いを支え、互いの体を離すことはない。この選択に間違いはないと、胸を張ろう。俺の心は既に彼奴の傍にある。

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