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┗懐中仕掛けのファフロツキーズ(32-36/80)

|||1-|||書込
36 :
08/31-23:18

戒口を解けば叱咤か説教か、我ながら呆果てるには事足りると謂うもの。本当は拡げた掌で頬を叩きたい訳では決して非ず。只と旋毛を靡かせたいだけと言えば聞えは善し。然し湧き出流る恋慕の念とは裏腹に、真の思考が己の何処ぞで塞き留められた果てには末端まで伝達すら儘成らず。終には何時も彼の様な不始末に到ってしまうまで。ああ、暗愚な惰夢として改竄すら着手するに振れもせぬ己のあさはかさよと、この言い訳めいた悲観の著しをも含めて。如何様な立ち居振舞いを為せれば、無為を有為へと流転誘う善きはからいへと変貌するのか。合わせて四十余、八百万の悠久を御仏の御教えと神々への御赦しの下、去私の儀に倣い無我を模索したものの、私を棄てるに番も除かねば成せぬ現実に気付いてからは、早俗世。即物伴う打開の策閃くまでは、現状を僥倖と腹を括る次第に。
どうか御覚悟なさります様。廻り巡り引き返した阿呆な一人の老骨を、その大器で確と受け止める前支度をする刻くらいは分けて差し上げましょう。貴方程では有りませんが、不肖ながら私にもいと僅かな矜恃が未だ心結ねに蕩揺い、喩えそれが老体に鞭を打って漸く踏み出せるほんの僅かな一歩であるのだと悟ろうとも、それは確かに存在するのですよ。

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35 :
08/30-23:23

上ッ面で塗り固められた儀礼もそこそこに下卑た笑みと傲岸不遜な態度が見せる余裕は、見開いたペリドットを合図に不覚にも粉砕しちまいやがった。思わず感嘆の溜息が漏れる雄大な土地と、それにしては不釣り合いとも云える途/上/国の様なナリをしていたアイツの元へ足早に歩み寄り、それぞれ足跡と唾を刻んだのは一体何時の出来事だったか。

先方の毒気を根刮ぎ浄化させる太陽の様な笑顔を向けられた瞬間から現在に到るまでの過程。本能の赴くまま一緒に過す時間が段々と長くなるにつれて、自分の口から大/帝/国の立場には相応しく無ェ非合理的な戯言の数々を洩らす頻度が、我ながら笑える程に高くなっていやがった。気付いたのは兄貴と形容するのも虫酸が走る存在の、味気の無ェ聞き飽きた御決まりの厭味から誘発された代物だったという点も、何気に乾いた自嘲の物種に一役買っているらしい。
早々に席を外したい衝動に駆られる毒気に満ちた食卓を挟んで、対面する人物から寄越された「珍しい」を示唆するユーモアや礼節の欠片すら感じ取れねえ如何にもクソ野郎らしいたった云文字にも満たない無骨で粗悪な御感想から、一体如何程の衝撃を受けちまったのかは、これまた恥ずかしい話だが未だに判らず終いの御手上げ状態。不意を不測でコーティングした不可解の深海を、プライドと好奇心の狭間で藻掻きながら唯一つ確信までに漕ぎ着けた概念と言えば、釜戸の中で踊る焼き菓子、もしくは得体の知れねえ強迫観念に後押しされるがままに往き急ぐ脆っちい人間共みてえに、俺の中で壊死をしてから指折りでは数え切れない懐古を彷彿とさせる何かが粛々と弾けて飛んだ事実だった。それも表層及び深層意識の範疇外の片隅で。

違和感がワケも無く帰依した時は正直驚いた。俺は確かに変化していると。
だが猛毒か良薬か判別しようが無いこの変化を進化と受け取るか退化と受け取るかなんざ、領土拡張と称した自身の成長だけを焦燥感にも似たナニかに衝き動かされるがまま貪欲に追求する俺には、蛇足でしか無ェ禅問答のドアをノックするのと同程度の無意味なガラクタだ。唯一の例外が有るのならば、最盛期の御旗を携えてから間も無い俺にとっての重要な局面の一つだと留意し、隙有らば面を上げる衰退期を殲滅して、より磐石なモノとする為に必要不可欠な手段として煤けたラベルに庇護欲と刻まれた万能な瓶詰めの促進剤を投与してくれたあのガキだけだろう。
柄にも無く全神経回路の細部に到る急所を酷使してまで機能させた堂々巡りに対する御褒美が、せめて喰い潰される運命にある一時のチンケな妄執と云ったで導き出されるその時まで離さず連れ添っていたいだなんて宣う陳腐な願望は、血塗れた自分自身と視界に映るスカーレットの陸海から眼を背ける愚行と同レベルに扱われるは必至。問題はそこじゃない、讒謗の標的にされようが別に痛くも痒くも無ェんだよ。喩え周囲から年端も行かねえ幼児に絆された特殊性癖持ちのピエロだと浮世に巣食う薄汚ェ風刺家風情のクズ共の餌食にされようが、手塩を掛けて手懐けたにも拘わらずアレの手綱を完璧に握り切れずにプライドをズタズタにされちまう末路に見舞われるよか断然マシっつうモンだ。

それよりも今はこの退屈凌ぎにもならねえ世/界の切れ端で、先ずは煩しい感情の全てを遺棄したくて堪らない。くっだらねえ甘チャンな溜飲を誤魔化す様に、今日も今日とて数分前に物言わぬと化したブツ切りの肉塊をミンチ状になるまで捏繰り回して切り刻む。
食卓に彩りを添えていた花瓶や銀食器が辺り一面に散乱する中、実兄の残滓によって敷かれている石榴色の絨毯と区別出来ない程に染まった純白のテーブルクロスで靴底に付着した相伴者の片鱗を拭去しながら「そう言えばアイツは赤色が好きだったな。少し鮮やかさに欠けるが、この彩色は御気に召して頂けるだろうか」と、俺に執着心を植え付けやがったクソガキを連想させる要素が眼前に及ぶ鬱蒼から無きにしも非ずと嘯くのならば、このうんざりする一方的な兄弟喧嘩の後始末に勤しむのも悪かねえと醒めた脳髄は甘美な諦念に侵され、まあそれでも構わねえかと口許を歪ませて恍惚に耽ってるってんだから、テメェの事ながら本当にタチが悪い。徒に体力を消耗するだけの日課を熟しがてら、毎度毎度そんな風にして得心を手繰り寄せてしまう。
死地以上の凄惨さを伴う悪趣味の境地で、木霊する己の耳障りな高笑いも、鈍い水音を含んだ衣擦れ音も、一目視てから呪詛の様に目蓋裏にチラついて消えずにいた            の寂しげな泣き顔も、初の揺籠を堪能する赤ん坊宛ら、今はただ酷く心地が好かった。
「“My pitiable and foolish dear elder brother Lord?"」清貧厳かな今日も、一々吐き気が込み上げる程にあいしてるぜ。

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34 :
08/29-01:27

頼むから一刻も早よ俺の前から、いや、世/界/地/図から記号の一つすら遺さん様とっとと去んでくれや、外ヅラしか無うないゲス野郎て、長年積もりに積もっとった気持ちがよ。今のお前と鉢合わせた途端、一片も遺さんと去んでしもたやないか。そんもこも全部全部お前の所為と違うか?何でそない申し訳無い云う風に情けない面下げられたら、言及した方が悪者になってまうやないか。
そんで無うても、ツラ貸せや言われた傍から終始こっちを見下して同然っちゅう態度さらして、てめえの甚だ理解出来ひん胸糞悪い趣味の喰い物として郷愁の念謂うモンが毎々淘汰されてしもた挙句、俺の家に土足で上がり込みおって終いには得体の知れん雑草を強制的に植えるだけ植えよってからに。そんで分け前寄越すばかりかそいつの用途すら説明せんと、土地が無惨に痩せ細るまで搾取しくさりよったっちゅう数々の被る事無かったはずの実害考えてもな、こっちに何も非なんか有る訳無いねや。それやのに時間云うんはほんま恐ろしいモンでよ。今じゃこないしてお前の置き土産で散々辛酸舐めさせられた当時を憂い偲ぶみたいに、あれ程胸糞悪い言うて毛嫌いしとった雑草から出来たヤニは四六時中離さん様にて未だに吸うとるし、何より無理からに刷り込まれたはずやったこん怪態な喋り方にも、長い間に渡って無意識に使っとる内に、何や口じゃ上手く説明出来ん様な訳解らん愛着みてえなモンすら感じてしもとんのやからな。ほんま、自分でもどこがどない狂ってもうてこないなりよったんか、もう何もかもが理解出来んねや。なあ、そっちも親分やアホな事ぬかして尻敷いとった前科有んねやったら、敷いて汚なってもうたケツ綺麗に拭う所まで責任取ってやったらんかい。
そないガキ臭え八つ当たり込めた不毛な罵声浴びせてえの、震えとる拳あかん言い聞かせもって懸命に握って必死こいて我慢しとんのじゃ。いまいち飲み込めんて呆け顔晒す暇削ってでももうちっと聡く察せえや、ドアホ。

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33 :
08/28-02:56

よろしい、ならば我が輩も暫しお前達の輪に加わる事に対して是の態度を示そう。我が輩とて無為無策のまま堂々巡りに陥っている現状は余り好ましくものでは無いのでな。
無個性の空へ埋没する事と個性の海を遊泳する事は、決して相反には成り得ない。かと云って同義にもこれまた当て嵌まらぬであろう。斯くしてそれは人々が持つ固定概念の枠外に溢れた、酷く曖昧で、絶対的イコールになどどの様な間違いを犯そうとも決して結び付く訳が無い、謂わばそれぞれ別の母体の針穴から腫れ物の様に流れ落ちた、似て非なる猶予すら挟む余地が与えられない全くの別次元に蔓延る悪因子の中核なのである。
この異説さえ、何もかも全て、子供騙しだ。

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32 :
08/27-12:27

僕と君は一番の兄弟じゃないか。
アルフレッドから死刑宣告にも等しい通達が、蚯蚓走ったサインを添えた簡素な紙切れ一枚を介して自分の元へと届いた時は、恥ずかしい話だけど、自身の中で既に死滅したと思っていた反射神経みたいなものが働いて、思わず益体にも成らない反論を溢してしまっていた。そんな結果がこの有様だったという訳なんです。どうして、どうして貴方がそこに居るんですか。フランシスさん。貴方にだけはこんな震えた醜悪な僕の声を聞かせたくなんて無かったのに。いえ、そもそも一体全体どうして僕は、たかだか一番目だったという、ただそれだけのちっぽけな出来事に執着してしまったんだろう。心中でごちる自由さえ根刮ぎ奪い去る様に、数字には理屈なんてモノに囚われない魔力が備わっているんだよ、と、僕の目線よりほんの少し脇に焦点を逸らした彼の眼がそう解釈を講じていた。ああ、これが貴方が自負している機知に富んだ大人の宥め方なんですね。声帯が灼け爛れる程声を嗄らして解答を欲している子供に、心理を汲み取っている上で幼子特有の一過性の癇癪だと決め付け、本当の答えを与えず疑問を抱く事自体をナンセンスだと説くある種の洗脳。僕は、貴方の様な大人には絶対に成らない様に努めますから。喩え油が浮いた水溜まりに根生やしていたとしても、瑞々しい新芽は摘む物では無く育む物でしょう?
#『お兄さんにとってはお前の発言が死刑宣告なんだよな。ああもう、あいつとお前は紛う事無き兄弟だよ。さっきので確信したね。何だったら俺が保証してやっても良いぜ?』
どうして、どうして今度は掬い上げようとするんですか。確かに落とした物を拾うのは簡単です。けれど落ちて潰れた物を元に戻す事は出来ないんですよ。この掌を返す機運が大人が子供をあやす御機嫌伺いのそれだったなら、まだどんなに救われた事か。僕を安心させる為の一滴の毒、壮大な前フリなんて必要無かった。不条理の色香を乗せたリップサービスだと頭ごなしに納得したかった。そしてそのまま僕の首を掴んで意識の泥濘に沈めてくれれば良かったんです。それがどうだ、貴方に正面切って認められたら今度はこんなにも否定したくなるなんて。どうして咽び泣きたくなる程悲しくなってしまったんだろう。だってそんなもの、自分に都合の悪い記憶をわざわざ掘り起こす訳が無いじゃないか。僕なんて、その時彼と居合わせて、彼の人の顔色を捉えた瞬間に、思わず自分自身がしでかした不可解極まりない行動についてぼやいてしまった事自体を、透明が濁り始めた虹色の水溜まりに投げ棄てて全て無かった事にしてしまいたいのに。興味が無い素振りを隠れ蓑に、自分が片割れなる対象以上に固執していた、たったそれだけ。そうだと自己暗示を施してまで何を馬鹿げた事を、と、貴方は呆れ果ててしまいますか?仮に返答がイエスだったとしても、最上の枯渇に怯え追求して止まない欠落を背負う自覚の芽生えと引き換えに、一等を所有する兄弟と謂う肩書きを喪った今、貴方にだけは手を退かれたくないんです。ごめんなさい、どこまでも打算的で。ごめんなさい。フランシスさん。
ですから、どうか僕と同じ表情をしないでください。新しい鏡が欲しくなってしまうから。そうだ、新調しないといけないんだった。波紋にも負けないピカピカに磨かれた曇り一点すら無いオーダーミラーを。

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