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┗折れる(205-208/208)

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208 :
09/15-16:22

 俺がここで存在証明を示すのは、世界の根っこが終わりを告げてこの場所が切り離されてしまっているからだ。俺はここに立っているけど、それを証明出来るひとや世界は誰もいない。いわゆるシュレディンガー!

 久方振りに開いたアルバムは湿っぽくて、当時のことを考えるとむず痒いような心地になる。あの頃はまるで恋をしたばかりのティーンエイジャーのように、一つ揺らげばその度ベッドを転がっては枕の形を捩ったりしてたっけ。してたっけ? まあ、細かいところは脚色でひとつ!
 記録になった事象を並べて、過ぎ去った季節を眺める。容易く畳むことが出来るくらいに遠くまで伸びたメモリを指先でなぞっても、別にオッサンたちじゃあないから「あの頃は良かったな」なんて感傷に浸ったりはしないけれど。
 あの時綴った感情は、今となってはタイムカプセルにも似てる。埋められた記録の海から取り出したこいつを、コーラとポテトでも楽しみながら俺は読み進めることにする。

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207 :
04/24-17:46

 僕はひとの紡ぐ文字に恋をする。自覚はあったし、わかるひとにはわかられていたんだろう。それにね、ちょっとくらい意地悪だったり可愛げがないほうがじゃれ甲斐があっていい。趣味が悪いだとか酔狂だとか、ご当人はそう言うくらいの関係が心地好い。
 よいと思えるものを探して生きていけると思った。悲しいことや苦しいこと、そういうことに躓いてしまってもそれで終わりじゃあないんだって教わったから。


 ねえ! ――恋していたよ、きみに。命題をなぞって、チェックをかけるその指に恋をしていたんだ。それは愛じゃあなくてがむしゃらな感情の押し付けで、いつもいつも苦労をかけてばかりいたね。今の僕ならわかるのに、恋に盲目になっていたおばかな僕じゃあてんでだめ。
 恋していたよ。久し振りに色々なことを思い出してノートを取って、ついついペンまで握ってしまった。この世界から離れて久しいのに、随分最近のことのような気がする。

 ありがとう。恋していた、きみに出逢えてさいわいだった。きみの旅路に、僕の旅路に、ひかりあるように。

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206 :
06/24-19:46

息継ぎも忘れて沈んだ海の中で、底にすら着けずに漂い続けている。どちらが北でどちらが南で、そもそも私はどこへ行けば良いのかさえ胡乱なまま、ずっと静かな海を彷徨っていた。色々なものを壊して崩して沈めて、すっかり錆び付いてしまった回路だとか機構だとか、そういったものを野ざらしにして触れないまま、朽ちることもない瓦礫を放棄して、何をするでもなく、ただただ佇んでいた。ずるい大人になってしまった自覚はあるのに、そんな大人にはなりたくないと反発したがる子供が胸の内で声を上げているみたい。

波を見たかった。空も見たかった。砂浜にもう二度と立つことがなくとも、無音の深海より、騒ぐ浅瀬の水音に触れたかった。懐かしんでなぞることさえやめた私にはそんな資格さえないかも知れないけれど。

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205 :
10/24-22:08

 仮判決。執行猶予は数ミリ。

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