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┗さよならのワルツ(21-25/141)
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25 :
Arthur Kirkland
12/05-01:56
馴染みの店に久し振りに顔を出した。以前はよくこの店で服を揃えていたが、最近は仕事が忙しくて私服に構っている暇がなかったんだ。
それでも顔を覚えている店員はにこやかに迎え入れてくれて、つまり何が言いたいかと言うと、何を思ったかコートを二着買った。馬鹿じゃねぇのか。あったけぇ。
とは言え、冬場に出掛ける予定も特にはなく。
コートのお披露目は職場になった訳だが、見るなりハワードが「着込んでるなんて珍しいですね、何かあったんですか、体調でも崩しました?」なんて聞いてくるから驚いた。そうだな、よく考えなくても俺は真冬でさえトレンチコート一枚で外へ出る。
耐寒よりも格好付ける方を優先する度に周りからは信じられないと喚かれる。誰かからの上着を欲している訳ではなく、肌の温もりを求めている訳でもなく、ただひたすらに自分を満たす為に削り続けただけだ。例えば体力を、或いはそれ以外を。
俺はずっとそうして生きてきたし、身を守る為に必要であれば最低限の身支度で駆けた。
きらびやかに飾り立て夜会へと足を運んだあの頃が一番楽しかったのかもしれないが、腕を組んで見守るよりも人混みに紛れて甲板で暴れているのも楽しかった。それよりずっと前は身なりよりも体を守る方が大切だった。ひらひらのチュニックなんて着てる暇なんてなかった、駆けて、射って、駆けて。
ジャケットとネクタイは酷く落ち着くが、それは自己防衛に過ぎない。誰の手も伸びないと知っていて絞める首元、相反するサディスティック。嗚呼、あの懐中時計は何処へ行ってしまったんだろう。紛い物の秒針は、もう止まっているに違いない。
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24 :
Arthur Kirkland
12/02-02:33
お前は本当にポルの事が好きだね、と言われても、あぁそうだ好きだぜとしか言えないんだが、それ以外にどうしろって言うんだ。
ポルが、いや、俺はガルって呼ぶ方がしっくり来るな、うん。ガルのどこが好きだとかそう言う恋愛じみた物は欠片もなくて、もっとドロッとした粘着質な何かである事は間違いないだろう。
友情を拗らせるのが一番面倒だ、と昔誰かに言った記憶があるが、正しくそれだ。とんでもないブーメラン投げたな俺。
ガルの一番にはなりたくない。そんなもんこっちから投げ捨ててやるけど、蔑ろにされたい訳でもないから、適度に構っていて欲しい。素直じゃない俺だから、適当に三枚舌を動かすだけだが、結局あいつが適当に話しててくれれば俺は頷いてるだけで良い。
馬鹿か俺は、と思いながら誰より長い時間を一緒に過ごしているんだから救いようがねぇ。
例えば無機質なコンクリートの密室で、沈んだ何かに足首を捕らえられたとしても、きっと俺は縋らないだろう。事実あの海で俺は手を伸ばさなかったし、掠めた物さえ泡にすらならず急速で翻ったじゃないか。
ひとりぼっちだった。兄さんしかいなかった。そんな俺の背中を蹴飛ばした。理由なんてそれだけで充分過ぎる。
強いて言うなら手が好きだ。俺に触れない手が、すきだ。
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23 :
Arthur Kirkland
11/30-01:14
これは裏切りの一種である、と
そう誰かに突き付けられたなら、きっと俺は頷くだろう。
誰も否定しないから甘えている。だってこれは、罪ではないから。
前置きを免罪符に、素直さを潜ませて。
だから鎖が必要だった。
お前がどんな理由で拗ねたかなんて知りたくもないが、俺にそれだけの勇気があればまた転がり落ちて溺れるんだろうな。
息継ぎは苦手なんだ、知らないだろうけど。
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22 :
Arthur Kirkland
11/26-19:11
>>>2457
ちくしょう騙された。素直にトマトを描いた俺が馬鹿だったんだ…!
#1127 0122 edit
>>>1827 独
お前も騙されてるんじゃねぇか!!いや、でもあれは騙されるよな、うん。仕方ない、トマト野郎の所為だ。
#1128 2205 edit
一応元気だ、多分。
何だかんだで息をしている。出戻ったからには前と違って少しは社交的になろうと思ってな。話し掛けてくれて嬉しかったぜ。Thank you.
懐かしい本を見る時に抱くのは、嬉しさなんだろうか。
邂逅の物語か、或いは。
前の本棚なんて覚えちゃいないけど、そろそろ本棚にも増やしていくか。
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21 :
Arthur Kirkland
11/26-01:36
休日に見上げた空はいつものように涙を零していて。
俺のせいだなと笑えば、よく出来たフットマンが傘を差し出した。
「一本あるからえぇよ」
「しかし濡れてしまいます」
「くっついて行くから構わへん、なぁ、アルト?」
悪戯な笑みで俺の腕を掴む。お前がそうやって俺を呼ぶ時は碌な事がないって昔から決まってんだ。
アーサーではなく、アルト、と。噴き出すのを堪えるような、からかっていますと全力で声に乗せたその呼び名を許可した覚えはない。
一つ吐いた溜息を了承と受け取ったのか、色気も雰囲気も何もない仕草で一本の傘の下、大の男二人が並んで歩くとかどんな拷問だよばか。
最早お前専用になりつつある我が家の一角を、どうしてくれるんだと詰め寄れば「大切なひとの為に空けてあるって言うたらえぇんよ」と笑うお前は、確かに俺の大切なひとだよ、ガル。
お前にからかわれるのは、案外、嫌いじゃねぇんだ。
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