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スレ一覧
119.龍兎相和
 ┗95,97,99,101,105

95 :白珠の手記(崩壊:スターレイル)
2024/09/04(水) 01:48


予定通り羅浮を出立した。過保護なあたしの龍は直前に星槎をもう二隻増やして、万全の準備をしてくれたらしい。大仰な数の星槎に下手したら侵略と思われ兼ねないのではないかと一抹の不安が過ぎる。というかあの人はあたしが星槎を何隻も落とすと思っているかもしれないがいつも一隻しか落としてない。だってあたしが乗る星槎は一隻だけだし、なんとなく今回は落ちないような気がする。沢山の荷物も、贈り物も──気づけば貰ってばかりだった。そういえば伝え忘れたけどあたしが置いた贈り物に彼はいつ気付くのだろうか。大っぴらに置いておくのは少し恥ずかしかったからもしあたしを恋しがって寂しくなったときに見つけられる場所に置いたけど、これで気付かなかったらそれはそれで面白い気がする。以前、腕輪を送ったことがあるけど今回は筆だ。あたしの尻尾の毛を使って作った特注のもの。尻尾の手触りは変わらないだろうけど気に入るかは不明だ。添えた手紙も今思うと少し気恥ずかしい気がする。「比翼連理」…たった四文字でも意味は伝わるだろうし。それがわからない人ではないから。

託された香膏を使い尻尾の手入れをした。いつ以来だろうか、手入れされるのが当たり前になったことに不可思議な感覚を抱く。あの時間が少し恋しくなって小さく溜息を漏らした。必要なこととはいえ、離れることに不安がないわけじゃない。雪浦と名乗る龍師のことも灯籠流しの晩に声を掛けたあのお嬢さんも、何も解決したわけではないし。出来るだけ早く帰りたいと思ってしまう。随分と狭量になってしまった気がした。ひいおばあちゃんがよく言っていた、「恋には狂うな」と。あたしのこれは狂っているのだろうか。

星槎は予定通り進んでいる。明日の昼には曜青に着くだろう、そうしたら丹楓に連絡をして、定刻になれば黄鐘を鳴らさないと。過保護にも思えるそれを嬉しく感じてしまう。

──別々に寝るのはほんの少し、

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Bai Heng


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97 :白珠の手記(崩壊:スターレイル)
2024/09/05(木) 00:59



定刻通り曜青に到着したからその旨を連絡した。いつ以来だろうか、此処に帰って来るのは。町並みは年々変わって行ってる気がする。子供の頃とは違うその景色でもなんとなく空気のせいか、ああ帰って来たって感じがするから不思議だ。もっとも羅浮に帰りたい気持ちも存在するから何とも形容し難い部分ではあるけれど、ひとまず託された土産を天風君に謁見をすれば、どうやって射止めたのか、土産の多さにも大層笑っていたけれど倍で返すと本気か嘘かわからないことを仰るので出来れば後者であることを願うばかりだった。

謁見を終えて、実家に戻ると家族に詰め寄られた。どうやら曜青にまであたしが飲月君を誑かした(そう書くと語弊はあるのだけど)話は広まっているらしい。曜青ではなんとあたしは悪女で飲月君を好きに遣って豪遊三昧、戦場でも矢面に立たせて後ろで侍女に団扇を扇がせて何もしていないという、事実と虚構を織り交ぜたそれは「稀代の悪女・白珠」として講談師が面白可笑しく語っているらしい。ちょっと聞いてみたい。それに丹楓の耳に入ったらどんな顔をするのか少し見てみたい気がした。
謁見が長引いたから流石に鬼灯を取りに行くのは難しいので明日にすることになり、久しぶりに自分の部屋に戻った。定期的に掃除をしてくれているのだろうか、家を出た頃と変わらないそこはなんとも思い出深い反面、あの頃の気持ちを思い出してしまう。ずっと何処か遠くへ行きたかった。ひいおばあちゃんの話を子供の頃から聞いていたせいか、あたしは大人になったら遠くへ行くんだと思って、そうして星槎に乗った。それによって気の置けない友人を得て、伴侶を見つけたのだから僥倖だろう。久しぶりに家で食べる夕餉は美味しかったけれど、なんとなく誰かさんの顔が浮かんで落ち着かなかった。

定刻、約束した時間に黄鐘を鳴らす。
その瞬間、「ああ、やっぱり早く帰りたい」と思ってしまった。


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Bai Heng


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99 :白珠の手記(崩壊:スターレイル)
2024/09/06(金) 01:39


突如通信が入ったかと思えば犯人を想像するには容易くて相変わらず思い切ったことをする子なのに脱力をしつつ、本当に早く帰らなければいけないらしい。ただあの様子だと贈り物にはまだ気づいていないのか、案外寂しがりやだし、応星の元に入り浸っているらしい。何とか予定は恙無く進行しているし、これなら一日くらい日程を縮められそうな気がする。鬼灯も今日取りに行ったし。

あたしの生まれた日に植えられた鬼灯。我が家では大体子供が産まれたら鬼灯を植える習わしがあり、あたしも例に漏れず植えて貰っていた。これを加工して二対の提灯を作り、鬼灯染めの糸で刺繍を施した贈り物をするのが嫁入り前の準備──ではあるのだけれど、刺繍はやっぱり時間がかかる。嫁に行く気もなかったからちゃんと練習をして来なかったあたしも悪いのだとは思う。それはそれとして適材適所、向き不向きもあるけれど。丹楓がくれた手製の紐飾りはよく出来ていた。もしかしてあたしより向いている可能性があるのではなんて思ったりもするけど、それを羨んだところで仕方ない。丹楓の用意した土産に両親は腰を抜かしていたし、親戚含めて大騒ぎになった。そして話題はどうやって誑かしたのか、何処が好きなのかと再三と聞かれた。まあそれもそうだと思う。曜青の狐族が羅浮の龍尊に嫁入りだなんて前代未聞で、その結果あたしは悪女だのなんだの言われてしまっているわけだけれど。

誑かされたのはあたしの方だと言うのに世論は好き勝手に言ったものだと思う。目的の鬼灯は星槎に乗せて貰った。勿論あたしの乗らない星槎に。万が一落ちたとしてもあたしの星槎だけだろうし、何となく帰りは危ない気がした。こんなこと書くとやめろと周りに止められそうだけど星槎殺しの不名誉な異名を持つのだから、やっぱり今回もきっちり仕留めてしまう気がする。思えば初めて丹楓と出会ったときも曜青から羅浮に向かって、鱗淵境に見事に墜落した。そのときに助けてくれたのが丹楓だった。あのときあたしはとうとう死んでしまったのか、帝弓に見放された錯覚を抱いたけれど。まだあたしの命は続いていて、そして我ながらなんというか単純なもので一目惚れをした。青く澄んだ海よりも深い翠の瞳があまりに綺麗で、それからずっと構い倒したように思う。何かあればお酒をねだって、戦場に呼んでときには雨を降らせて貰ったり、意外と頼めばなんでも聞いてくれた。怪我をして戻ればすぐに診察もしてくれたし。そんな彼に少しずつ惹かれて、どうしようもなくなった。夢にするつもりで彼の懐に潜り込んで、それからずっと囚われた気がする。

……あと曜青ですることは将軍への謁見と土産選びだけ。それさえ済めば羅浮に戻っても問題ない。早ければ明後日の早朝には発つことが出来るだろうか。そういえば両親に聞かれてすっかり忘れていたけど花嫁衣装はどうするのだろう、またそれも打ち合わせないといけないかもしれない。着々と準備が進む度、婚儀が近付くのにどうしても落ち着かなくなってしまう。

そういえばカンパニーが新しく曜青に商店を作ったらしい。折角ならそこで丹楓への土産を選ぶのも良いかもしれない。そんなものより早く帰って来いなんていいそうだけど。



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Bai Heng


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101 :白珠の手記(崩壊:スターレイル)
2024/09/07(土) 02:09


どうやら漸くあたしからの贈り物に気付いたらしい。どんな反応をするのかわからなかったけど、送られてきた文章から察するに喜んでくれているといいのだけれど。将軍の謁見も終えてもうやることも殆どなくなった。あとはみんなへのお土産を買うだけなんだけど、そこが悩みどころだった。何をあげれば喜んでくれるのだろう。それを悩みながら時間だけが過ぎて行く。流石に帰る時間がこれ以上長引くのはあまり良くないだろうと謁見を終えて、ぶらぶらと散策した。丹楓が気に入るものはなんだろう。鏡流には何が良いか、応星にも景元にもお土産を買って帰りたいけどまだ何も決まっていなかった。お酒にしてもいいけど折角なら何か残るものがいい気がする。あたしの大切な友人達へ、心の籠もった贈り物をしたい。

鏡流には髪飾り、応星にはカンパニーの最新の通信機、景元には曜青で流行っている快眠枕を選んだ。丹楓にはどうしたらいいのか、きっと何でも喜んでくれるけど一番はあたしがいいと言いそうだった。悩みながら選んだ贈り物は大切にしまって、これで本当にやることがなくなってしまった。沢山の荷物を乗せて来た星槎はまた荷物を大量に積まれ、天風君の本気を感じた。冗談ではなかったらしいのに溜息が漏れる。どうして龍尊は貢ぎ癖があるのか、博識学会で研究すべき内容だった。

明日の昼には曜青を発つことになった。いよいよ帰るとなると少し寂しい気がする。生まれ育った場所だからこその葛藤。でもそんなものより早く羅浮に戻りたかった。尻尾の手入れをして、沢山愛でて欲しい。独寝はやはり寂しいので、その腕の中で夢路に向かいたくて仕方ない。あたしはいつからこんな風になったのだろうか。寂しがりやなんて揶揄出来なくなりそう。

ああ、早く会いたい。



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Bai Heng


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105 :白珠の手記(崩壊:スターレイル)
2024/09/11(水) 01:22



曜青から羅浮に向けて出発することになった。天風君からの手土産の量に龍尊は貢ぎ癖でもあるのかと、軽く目眩を覚えそうになったがそもそも味の濃い品々は羅浮で好まれるのか否か。ああでも秘蔵の酒も包んでくれたのは有り難かった。あたしでは買うことの出来ない──というより天風君御用達の一品で、いつか呑んでみたいと思っていたから良い手土産になったと思う。天風君に丹楓のことをやたらと聞かれ、またあたしもどんな気持ちか聞かれたことからあの方にも想う人がいるのかもしれない、なんて漠然と思った。

賜った土産は丹楓が手配してくれた四隻に乗せて、あたしが乗る星槎はあたし一人で乗ることにした。だってどうしようもなく嫌な予感がしてしまった。羅浮に帰る道中、何かと遭遇したりとか、もしかしたらいつものように星槎を墜落させてしまうような、そんな予感。一人でも星槎は乗りこなせるし、誰もいない方がいい。もし何かと遭遇したらあたしが囮になれば済むし、帝弓はあたしを見放さない気がした。

尻尾の手入れは欠かさずしたお陰で、丹楓がくれた香りのままだ。この香りも好きだけれど、でも何か物足りない。寂しがる彼にすぐだなんて言いながらこんなに恋しがっているのだからどうしようもない。


…………
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Bai Heng


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