スレ一覧
┗448.そのひともじを(10-14/19)
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14 :
道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/04/24(木) 21:33
猫の呪い。
──なるものを受けているのは俺でもあの方でもなく我が一家の末っ子な訳だが。二振りして細々とした雑務やら他の誰かに頼み辛いあれやこれをあの子に任せがちになるせいで、あの子の名は俺達の間で頻繁に話題に挙がる。 その際、話の流れで南くんの言動を口にする機会も出て来る訳だ。…お察し頂けたかな?あの子の口調は件の呪いのお陰で〝ああ〟だろう。そう、つまり語尾に「にゃ」と付けるあの方が見られる。 俺が強請れば鳴いてくれる、というのは既に試して分かっているんだが、不意打ちで与えられるそれはまた別の味わいがある。無論、鳴いてみせろと促されて従順に鳴き声を口にする姿もクるものがあるがねえ。例え南くんの真似であっても、唇に乗せる事に慣れてしまえば強請らずとも鳴くようになるのでは、と些かの下心が出たのは否定しない。 そも、元より猫のようなひとだ。懐く相手にはとことん懐くが、興味がなければ見向きもしない。愛らしい顔をしてその実じっと相手を観察している。自分を害すものかそうでないか、自分のスペースに入れるに相応しいか、自ら擦り寄って良い相手か……だからこそ懐いた時の喜びは格別とも言える。 共に過ごす時は概ね俺の膝に乗せているものでね、その辺りも猫のようだと思う所以だろう。後は…ふにゃふにゃと猫が甘えるように目を細めて頭を擦り付けて来る仕草も、などと記していると見せた時に叱られそうだ。 ……そう言えば、この一冊は俺から差し出すのなら今暫く後に渡そうと思っているが。その前に気付かれる可能性もゼロではない。この手の場に足を踏み入れるタイプではなさそうではあるが、それでも。 気付いたのなら教えて頂きたい所だ、それはそれで渡そうと思っていた日に向けて記す内容も変わるだろう。
ンフン?話が逸れたかな。アー……俺の可愛いひとの仕草が猫に似ている話か。そう、今日それをふと口に乗せた。猫のようだな、と。軽く返されると思っていたのさ、そうかい?と笑うのだろうなと。 それがどうだ!にゃあ、と完全に不意を突かれて息が止まるかと思った。あれを飼うには何を差し出せば?お気に召す食事と安心出来る寝床、首輪は必要かい?完全室内飼いを希望したい所だな、外になど出せないだろう可愛過ぎて──と一気に脳内に浮かんだ所で、これが猫の呪いかと笑ってしまった。 成程、この語尾のせいで猫のことばかり考える羽目になると南くんが言っていたのはこれか。悪くない、と言えばあの子は嫌そうに「叔父貴のそれは何か違うにゃ」と言うのだろうがねえ。
──…ああ、そうだ。猫と言えば。
꧁꧂ > 某、可惜夜を泳ぐ猫の君へ。 君ほど筆力のある人が美しいと告げる言葉が気になって覗いたそれを二度見したとも。反応はこうだ。待て、これは俺か?…俺だな?ところで今、書庫を整えていてねぇ、其処には君の手記が収められている。気遣いなどではなく当初から。だから驚いたものさ、先を越されてしまったな! 君の言葉に、時折自分が書いたかとすら思う共感を得ている。感情の重さも御せない欲も愛ゆえと分かる、その思考の断片を拝読できるのは有り難い。俺の言葉に目を留めてくれた事にも感謝を。丁度、君が愛する兎の彼の姿も拝見出来て幸いだった…と告げて私信を締め括ろう。
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13 :
道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/04/23(水) 15:12
諦念の賭け方。
俺の可愛いひとは腕の中でまだ眠っている。 二度寝を繰り返しているのだろう、昨日一昨日は雨に誘われて随分眠そうにしていた。普段かなり遅くまで俺に構っているから、非番の日によく眠る姿を見ると安堵する。……と言うと、また僕が道誉と過ごしたいからやっている、と言われてしまうかな。分かっていますとも、だから止めも咎めもしない。例えそれが明け方近い時間であってもだ。 これでも言葉は選んでいるんです。例えば今までの俺であれば、先のそれを「普段かなり遅くまで俺に付き合わせているから」と告げた気がする。言葉の響き程には卑屈な意図はなく、ただ俺が話したいと思って寝かし付けるタイミングを見失うからな、と言う程度のものではあるが……あなたはきっとそれを嫌う。
そう思うのは、同じだけの感情を向けられている確信があるからだ。一方に偏るでもなく天秤に掛けてフラットになる、もしくは自分の方が少しばかり重くなるだけの想いを返してくれる。それならと俺は此方の皿へもう少し感情を乗せてみる。するとあの方はまた笑って、じゃあ僕ももう少し乗せてみようかとその胸を開く。まるで鏡映しのように。 だから俺のあの方は一方的に感情を捧げているような言葉を好まない。それが続けば先に待つのは破綻だと、俺達はよくよく思い知っている。色々なものを見てきたのは俺もあの方も同じ、と言う訳だ。
ずっと諦念を抱えて来た。俺達は神のようでいて本質は刀であり、付喪神と名がつくばかりの妖物でしかない。よって無償の愛なども持ち合わせてはいない。それは神仏の範疇だろう?まあ、稀に人でもそれを持ち合わせた奇特なものが居るがねえ…。愛したならば愛されたい。その点、諦めは心を守るのに丁度良いのさ。過度の期待は禁物、リターンの配当は少ないものと考え、投資は程々に。見誤れば痛い目に遭う、これはビジネスに於いても同じだな。 いつ離れても、いつ離す事になっても受け止められるだけの諦めは常に持つようにしていた。……それがどうも上手くいっていないと気付いた時の俺の衝撃と言ったら!諦め方を忘れるなど、考えた事もなかったのでね。愕然としたものだ。 同じだけを与えられる事にすっかり浸かってしまった現状を恐ろしいなとは考えるが、特に後悔はしていない。諦めを忘れた以上、万が一の何かが起これば俺は傷付くのだろう。恐らく、今までに無い程。 とは言え高いリターンにはそれに見合うリスクが付き物だ。ギャンブルに身を窶す者の気持ちが分かった気がするな?安寧だけを手にしていては欲しいものは得られない。それに、俺のあの方は同じく自分の心を賭けて俺に手を伸ばしてくれている。なら良いかと思う部分があるのも確かだ。死なば諸共、と言ったところかな。 賭けた先にあるのが金一万両の名刀なら、俺の心ひとつ安いものだ。そうだろう。
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12 :
白/澤(鬼/灯/の/冷/徹)
2025/04/21(月) 21:34
楽土にて、
お前はさ、僕が居なくとも日々を過ごして行けるだろう。毎日毎日補佐官として裁判に立ち会って、地獄の見回りをして、亡者を呵責して、獄卒達の尻を叩いて、ワーカホリックの極みみてえな量の仕事を熟して。 そこに僕が介在する要素ってのはないんだよね、これはただの事実として。僕と顔を合わせなくたってお前の世界は回って行くし、今日も地獄は恙ない。それはとても健全なことだ。
そのお前が、僕が居なければ駄目だと口にする。お前の台詞が嘘だと思ってる訳じゃないよ、……おい待て今想像出来た、金棒を振り翳すな落ち着け。聞けって! 何の話だっけ。ああ、そう。……それを僕は、お前の甘えと弱さとして受け止めてる。分かりにくいけれどね。だってお前、本質的に甘えるのは苦手だろ?そういう風に出来てる。 僕が消えたとて──まあ僕という存在が消えるって事はそれこそこの世界そのものが失われでもしない限りは有り得ないんだけど──変わらない日々を何事もなく過ごせるお前が、僕が居ないとその日々が儘ならないと口にする。僕が居れば自分の世界は幸福だと告げる。それは即ち「だから何処にも行くな」って事だろ。いいよね、胸がすく気分だ。ソツもなければ隙もない、鉄壁のお前に埋められない風穴を開けられるのが、それを開けるも埋めるも僕だけだって事実が嬉しい。悪趣味?知ってる。
お前の幸せを願ってるよ。 自分を選ばないなら、自分を捨てるのなら不幸になれ……なんて怨嗟は今まで遊んだ女の子達から散々受けて来たけれど。何があっても僕はお前に同じ言葉を投げられそうにない。可愛い可愛い愛し子だもの。 お前の幸せの形が僕にあるなら、それを守ろう。不幸になんてさせやしない。
𓆸 𓆸 𓆸 突然どうしたって?桃タロー君にさ、幸せそうですねって言われちゃって。そう言えば不幸になれって言われた事もあったなァと思ってさ。いや、頭がおめでたいですねって皮肉じゃないだろ。違うって、……多分。
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11 :
道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/04/20(日) 15:09
パブロフの犬。
誰しも思い出してふと表情が緩む瞬間というものはあるだろう、人前でやるにはあまり品の良い真似ではないがね。 罵倒されて悦ぶタイプの性的嗜好は持ち合わせないとは言え、何にでも例外はある。……例えば憎まれ口にすらなり切れないような、普段より随分と幼い口調で紡がれる「ばか」だとか。昨夜聞いたそれを、今思い出してしまった。 頻繁に聞けるものではないが、俺はそれを随分と気に入っている。その言葉が出るのは決まって俺が揶揄いめいた軽口を叩いた時で──それも、その内容が閨に関係する時に限るのでね。要するに照れ隠し、と言う訳だ。ハッハァ!実に可愛らしい! そもそも殆どが抱く側であった筈のあの方はこちらの心情をよくよく理解している。愛らしい姿を揶揄いたくなる気持ちも、その憎まれ口を聞いた所で俺は反省するどころかますます喜ぶだけだという事も。 対処に困ったとて口を噤む選択肢もある。なのに俺が喜ぶと分かっていて敢えてそれを紡ぐあの方が、俺は愛おしくて仕方が無いのさ。
しかしまあ……そう遠くないうち、その言葉だけで勃つようになりそうだ。責任は取って頂くとしようか。
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10 :
道/誉/一/文/字(刀/剣/乱/舞)
2025/04/19(土) 22:19
高嶺の花。
そう呼ばれるに相応しい刀だと思っている。 惹かれたのは、恐らく姿を見たその日から。よく他の刀を見ている方だと感心した記憶がある。一度そう思えば知らず意識を向けてしまうもので、あなたが言うところの〝見どころのある若いの〟を中心とした余所の連中へ掛けるうつくしい言葉を他人事のように……実際他人事ではあったが。聞くともなしに聞いていた。 線引きをされていたように思う。同派であるからこそ、必要以上の気安さを出さないよう。あなたはその辺りの距離感を測るのがやけに上手い、意図は理解出来たから俺もそうした。その振る舞いも含め、これは﨟長ける高嶺の花だと思った時には欲しいなと自覚していたのだから笑ってしまう。そんな中でも時折交わす軽口は実に愉快だったし、暫くはこのまま利口で居るかと思ってはいたんですがね。……踏み出すにはまだ早いと、そう腹の底で飢える何かを宥めながら。
手を伸ばしたのは俺だ。ほんの些細な切っ掛けで、我慢が利かなくなった。管理はビジネスの基本、とは言え感情ばかりはそうも行かない。待てもお預けも苦手な犬だというのは御存知でしょうがね。 伸ばした手は果たして見事にあなたの袖を掴んだ。俺の手の及ばぬ所へ逃げられてしまっては困る、と敢えて囲い込み続けられるだけの逃げ道を残した口説き文句が言葉遊びとして転がされた時の、清々しいまでの敗北感と来たら!ええ、勿論その瞬間に落ちましたとも。 あなたに手を伸ばそうとして届かず終えた者が居るのも、手を伸ばす事すら躊躇った者が多く居たのも知っている。それらと俺の何が違うか、と問われれば言葉を尽くしたか否かの一点に尽きる。言葉は尽くすために、愛のためにある。そうあなたが口にしたから、今日まで俺はずっとそうして生きている。この日記もそのひとつという事だ。
꧁꧂ 馴れ初めをね、残しておきたくなったんですよ。手折った花を愛でるのに忙しいもので、凛と咲いていた頃のあなたに抱いていた感情を覚えているうちに。 そうだな、…約束の日にでも渡す事にしよう。それまでに俺は何枚の頁を記しておけるか、あなたと離れているうちも焦がれていると示せる程度には増えるでしょう。
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