スレ一覧
┗976.ラストバレル
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1 :
黛千尋
2015/10/06(火) 00:20
オレの日記
忘れられては困るな
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47 :
黛千尋
2016/05/04(水) 20:01
暴風雨/15
日が暮れきってから降り始めた雨は一向に止まず、風量を強めてちゃちな造りの寮を絶えず揺らしていた。このまま家屋ごと吹き飛んでしまうんじゃないかと思った。こころなしか、夜の勉強のお供にと淹れたブラックコーヒーのカップの持ち手が震えていた。
雨と風の音以外はいやに静まり返って、この場所が安全であることを主張していた。窓一枚に保たれたちんけな感傷だった。
こんな日は、当然変な夢を見ると思っていた。真っ暗にした室内に意識を預けてから幾時間も経ったのか知らないが、とにかく十分に睡眠を取ってから夢の幕は上がった。
そこには土地だけがあって、どうしようもないだだっ広い水辺があって、草木も生い茂っていた。この土地をどうにかしなければならないという話になって、水族館を作ることになった。かじを取るのは、オレがバスケ部で世話になったことのある数少ない先輩だった。オレのような人間にも目をかけ、ミドルシュートの効率的なフォームを教えてくれた人だ。二年も前に卒業した。今、レギュラーを張っている奴は誰も知らない存在だ。
先輩はいきいきとして、図面を眺めていた。ここにプールを作って、野生の動物たちが自由に行き来する。水流を作って魚が泳げるようにする。南向きの巨大なガラス張りの施設で、観客は空間の中央から魚やカバ、キリンなんかの自然の姿を目の当たりにできる。
いいアイデアだと思った。オレは横でずっと、エンターテイメント性に富んだ水族館の計画を聞いていた。いいと思います。時折相槌も忘れなかった。先輩を乗り気にさせるためなら、多少の愛想も使おうという気持ちが沸き起こっていたからだ。
やがて水族館は無事完成した。陽光が大きなガラスに反射して、向こう側には常に虹の出ている滝壺も見える。いびつなブーメランのような形をした巨大なプールには、目当て通り様々な動物が行き交って、その光景は幻想的な絵画を思わせた。
やりましたね。オレはそばで見ているだけだったが、我が事のように喜んだ。先輩も喜んでいる。
よかった。なにもかもうまくいった。きっと、この水族館は後世まで語り継がれる特別なものの一つとなることだろう。
目が覚めた。
雨風はどこかへ行って、馬鹿みたいな日差しが部屋に差し込んでいた。それでも室温は寒くて、いつの間にか床に落ちていた毛布を取り上げて包まった。
先輩は、オレに激励したことがあった。
今はまだ身長も身体も能力も発展途上だが……よくよく思い出す。オレに言っていたんじゃない。当時一年だった非凡な部員たち全員に言っていた。
おまえらには先がある。オレたちの後に続け。
先輩はそう言って卒業していった。
気づいたら泣いていた。おいおい。
卒業するのは、オレだぞ。
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48 :
黛千尋
2016/05/04(水) 20:53
晴れ/14
オレは星空を見上げていた。
近所の公園にはそれなりに広いグラウンドが併設されていて、休日ともなれば小学生たちがサッカーや野球やら思い思いにプレイしてそれなりに賑わう。
だがそれも深夜帯には関係のない話で、このあたりガラの悪い服の若者がタバコ片手に屯していたりだとか、怪しげな風貌で異国語を喋る集団が何か物品をやり取りしていたりだとかそんなことも全くなく、文字通り人っ子一人いない静けさを保っていた。
そんなグラウンドの中央で一人佇んで星を見上げていると、あたかも世界にひとりきりになったかのような錯覚さえ覚える程だった。風は南南東から吹いているが、草木は揺らされることもなく、耳に届く音と言えば自身の呼吸と、猫の鳴き声だった。
そう、気づけばオレが立っている場所から20メートルほどの距離に猫が一匹いた。黒猫だ。何かを訴えるようにニャアニャアとか細い声を鳴らしながら、こちらに近づいてくる。
オレは確信していた。これはフラグだ。深夜の公園、グラウンドのどまんなか。空には(都会並の)星。そこに意味深に近づいてきた黒猫。こいつは最早異世界への招待状となるパーツが一堂に会したと言う他無いだろう。
やがてオレは目の前にやってきた猫がニャアと鳴くのをやめて「お主――力が欲しいか?」とロリっぽいボイスにも関わらず古めかしい口調で語りかけてくることを予期していたし、オレが頷くか頷かないかのうちに晴天だったはずの空に暗雲が渦を巻いて台風の目を作り、その中央から地面まで降りてくる光の柱に自分が飲み込まれ、意識が朦朧とするうちにファンタジーよろしくな大自然と広大な未来都市が広がる異世界に伝説の勇者として召喚されることをもはや未来の規定事項として認識していた。
いいさ。望まれるのなら、行ってやる。
別に思い入れなんか特にありもしないが、その美しい景色を脅かす存在がいるのなら、そこの人間化したらおそらくロリババアであろう黒猫とともに立ち上がってやるのだって吝かじゃないさ。メインヒロインの髪色はピンクか赤髪で頼む。そしてロリババア猫との三角関係を満喫しつつ、面白おかしい道中を繰り広げたのちに魔王(♀)のアジトへとたどり着き、そこでうっかり魔王に一目惚れされたとしても、まあそんなに驚くことじゃない。オレはこの世界じゃ凡人でしかないが、あちらに行けば誰もが驚く能力を手にしたりしまっているはずだからな。
オレは覚悟を決めた。
猫がこちらへ向かってくる。ニャア。鳴いている。
そしてオレのそばを通りすぎて、グラウンドの反対側へと走り去っていった。
もちろん空は静かに星が瞬くばかりだ。
オレは手に下げてていたコンビニ袋を握り直し、大人しく寮に帰った。
という話を修造くんにしたら、「チヒロー、あなた疲れてるのよ」とぞんざいな一言を返された。
受験ノイローゼというやつかもしれない。
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49 :
黛千尋
2016/12/06(火) 13:10
晴れ/13
夢を見た。
あいつが、プロのバスケ選手になって活躍している夢だ。
山吹色に紫の差し色が入ったユニフォームを身にまとったあいつは、いきいきとプレイしていた。
オレはなぜか、観客席にいた。といっても立ち見の席だ。チケットをうまく取れなかったらしい。
俯瞰するあいつのプレイスタイルは変わらない。
堅実でありながらトリッキー。確実でありながら大胆。
その手から繰り出されるパスは、周りの選手たちの動きをどんどん良くしていく。パフォーマンスが上がっているんだ。オレにも覚えがある。
ボールに触れていくごとに、可能性が広がっていく感覚。自分が自分以上の力を発揮している充実。勝てるという手応えの中にある歓喜。
あれは、最高に気持ちがいい。
ボールがコートの床を弾んだ。
高く舞い上がって、舞い上がって、
暗転した。
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50 :
黛千尋
2017/03/23(木) 11:15
晴れ/12
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