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┗2746.Oscuridad(90-94/174)
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90 :
ウルキオラ・シファー
2011/05/14(土)23:18:52
棚を密に埋める書物から其の一冊を選び取ったのは、偶々眼に付いただけの事だった。
既に何度も眼を通している。
だが、最後に読んでから随分経つ。
如何な内容だったか、記憶は曖昧だった。
──自らが既に現世を全うした身で在る事に気付かず、鏡の中で存在し続ける女の視点で描かれた、短編だった。
些細な事柄が交錯し、女は自分が誰で在ったかを、鏡の外の世界の相手が誰なのかを、解き放たれる時がやって来た事を知る。
女は鏡の外の世界に呼び掛ける。
もう忘れていいよと。
全てはもう許されていると。
私が死んだ事、あなたが生きた事、全ては許されているのだと。
膨大な量の書物の中から選び取ったのは、本当に偶然だったのだろうか。
……否、たぶんそうなのだろう。
思い出した。
以前に眼を通した時も、今と同じ様に。
頬の仮面紋を辿る一筋に、今更になって気付くのだ。
其れが何なのかは、理解出来ない。
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91 :
ウルキオラ・シファー
2011/05/26(木)23:09:53
寝惚けている俺の言動など、お前しか知り得ないのは無論だが。
…俺自身も無自覚なのだと知った。
恐らく、狙い通りに動揺させられたのだろうが、……─何れ反撃してやる。
翻弄してやるつもりが逆に翻弄されているのを、悪く無いと思わせられる辺りがタチが悪いものだ。
(6/4 22:16)
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92 :
ウルキオラ・シファー
2011/05/26(木)23:12:16
漆黒を白で染め替えるのは難事。
だが、黒は容易く純白を塗り潰す。
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93 :
ウルキオラ・シファー
2011/06/05(日)18:22:07
修練の為の広間に赴く。
対峙するは、創造主。
直々に御声が掛かったのだ。
主と対峙するのは、苦手だ。
正面に立たぬよう互いに斜に相手を捉えた儘、柄に伸ばす右手の緩りとした所作。
相手に視認させず、鞘鳴りの音も立てず、無駄な動き一つ無く、流れるように抜刀した切っ先が向く先は互いの喉元へと。
間合いを測る足捌き。
余りにも、同じだ。
鏡と対峙しているのかと、既に術の内なのかと錯覚を起こしそうになる。
俺を創って下さった方なのだから、当然太刀筋も似るのだろう。
何の為に、剣を振るう。
何の為に、磨き上げる。
何の為に、研ぎ澄ます。
勝つ為か。
勝たねば己が死ぬ。
己が斬られぬ為、死なない為か。
死は何れ必ず、何者にも平等に訪れるというのに。
生死は対だ。
一生の長さと一瞬の死は、事象の表と裏だ。
死を無価値だと言うならば、
生にも同等に意味は無い。
強くなった処で何に勝てると言うのか。
剣を振るい何が得られる。
剣戟の音を、
噛み合う刃から飛ぶ火花を、
昨日か明日の事のように
遥か遠くから望むように感じる。
手に握っている筈の剣も、
己の躰も、最早形無いものに感じられる。
音も消えていく。
全てが消えていく。
全てが無い。
何も無い。
無音の真空。
対峙する水鏡。
剣を構える事で、意味を得る。
刃の光を視る事で死と対峙し、
全てが無情で空虚だと識る。
> VOID
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94 :
ウルキオラ・シファー
2011/06/18(土)18:52:57
最近は殊更に、共に過ごす時間は半ば微睡んでばかりいる。
微睡み、深く心地好い眠りに堕ち、また夢現つに浮上する意識。
どちらかが身動ぎする度に、互いの背や髪を撫で擦る掌から伝う温かさ。
夢だろうと現つだろうと、
お前が居れば其れでいい。
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