その歌は、その声は 求めるか、与えるか。 その声に暴かれ、貫かれた我が身は その歌の中の遺伝子を抱いて 新たなる芸術を生み出す。 その、他を凌駕する精神的快楽の前に それ以外の何を望むというのか。 君よ、僕を求めたまえ。 僕へ、君を与えてくれ。 |
#「もぉ〜!もぉえぇもん!家出したるからな!」 「へぇ、お小遣いとハンカチとティッシュを持っていくのだよ。 日が暮れる前に帰って来なさい。」 #「家出や言うとるやろぉ〜!!」 「あぁ、水筒も持っていきたまえ。」 #「お小遣いあるならいらへんもん!」 「ノン!ペットボトルから直に飲むなんて品がないよッ! せめて飲みきりサイズにしなさい。」 #「もったいないやん、ちょっとしか値段変わらんのに。」 「お金のことを気にするなら水筒で良いだろう。 冷たい紅茶を淹れてあげるから。」 #「…お師さんがどうしてもって言うなら。」 「首に掛けてあげようね。」 #「重い!」 「はい、気をつけて行っておいで。」 |
「……君はもう少し拒絶するということを覚えたほうが良い。」 何のことだか分からないと顔に書いてあるよ、影片。 その、感情を何でもかんでも顔のカンバスに乗せる癖も どうにかしたほうが良いと思うけれど…… その指摘は今度にしよう。 「君は僕が命じれば何でもしてしまうだろう。」 #「できひんことはせんよぅ。」 「沖まで泳ぎなさいだとか。」 #「おれカナヅチさんやからね…。」 「今すぐ命を断ちなさいだとか。」 #「んあ〜…。」 「家から一歩も出るなだとか。」 #「それ、お師さんは?」 「一緒にいるけれど。」 #「一歩も出んよ!」 「拒絶したまえ!」 #「やってやって、お師さん一緒にいてくれるし幸せやん!」 「一般的に見て、部屋から出さないなんて異常なのだよ。 拒否するべきだ。」 #「でもぉ〜…。」 「君が後先考えずに願いを叶えようとするから、 僕が理性でもってそれを口へ出さないようにするのだよ。」 #「お師さんはおれに部屋んなかいて欲しい。 #おれはお師さんと一緒にいられる。WIN-WIN!」 「寧ろどちらも負けているだろう、それ。」 人間は理性ある生き物だというのに……どうしてこう、 その利点を手放すのかね。 ……すべてを叶えて欲しいわけではない。 叶えられてしまえば寧ろ、その重責に潰されてしまう。 だから僕は願いを口にしない。 |
ペンギンは空を飛ばない。 |
部室の暖房機能が壊れた? その場合は何処へ申請を出せば良いのかね? 寒いのだけど。寒いのだけど? ああまったくもう、 教室の喧噪から逃れて安息の地へ来れたかと思えばこうだ。 常々思っていたのだけれど、どうも僕は運がない。 折角だから窓を開けようなんて馬鹿かね? モスクワの冬にも匹敵する寒さなのだよ。 そうだ、紅茶を淹れるのが良い。 濃いめに淹れてロシアンティーにでもしようかね。 ぬくめたカップがあれば かじかむ指先も多少はマシになるだろう。 |