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┗さよならのワルツ(124-128/142)

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128 :Arthur
12/11-01:12

今年も毛糸を取り出して適当な目数で適当に編み始めた。これまた適当に去年買った毛糸だったんだが、思いの外綺麗な色合いで真面目に編むか、と思い始めたところでブランケットにするには毛糸玉の数が足りない事に気付いた。
近所の手芸屋は店主が老齢だからと店仕舞いしてしまったし、街へ出ても見当たらない。調べるにも限度があるし、大きな店舗へ直接聞きに行けばこの毛糸玉はどうやら少し前に廃盤になったらしかった。

その瞬間から放置された針と毛糸が恨めしそうに部屋の片隅に転がっている。新しい毛糸玉を見繕う気にもなれないんだ。
毎年のように冬場は毛糸玉と愛を語り合うが、別に必ずしも編まなければいけないと言う訳でもないだろ。
気が向いたらまた毛糸玉を見に行くか、とは思っても冬の口ンドンは冷える。
欲しがってくれる子供たちはみんな大きくなってしまったしな。マシューなら、と思ってよく押し付けるが、それもそろそろおしまいにするか。ピーターはベールヴァルドが毎年新調しているからな。

セーターを解いて、糸を整えて、マフラーにするような時代は終わったんだ。今はもう安価で上等なセーターが手に入る。何も手作りに拘る必要はない。
……それでも、小さな子供たちにプレゼントしたあの瞬間の笑顔が忘れられないんだから、笑われても仕方ないか。

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127 :Arthur
11/29-01:25


どうやらガルの中の俺は昔から変わっていない。今よりずっと幼くて、お前の後ろを追いかけていた頃。
俺が暴れ回る時期もあったが、それはそれ、あれもこれ。日常生活では羽化したてのヒヨコのように、ガルに付いて回っていた。
兄さん達の目が届く夜会以外で初めて日付を越えて朝帰りしたのもガルとだった。勿論森で弓を構えていたような頃の朝帰りは別の話だ。
(余談だが髭と出掛けて遅くなるとキレるくせに、ガルと出掛けて遅くなった事で怒られた事は無い。兄さん達はガルがお気に入りらしい)

それから少しして、船に乗るようになって、酒と干した肉だけで過ごして、陸に上がったら取り敢えずうるさいバーで酒盛りして、海上で食えなかったもんを腹いっぱいになるまで食ってたのを覚えているらしく、近年飲むのも食べるのも控えめな俺を連れて行った店が普通のレストランだったとしても、注文する量が可笑しい。
いや、確かに昔は食ってたな、これくらいなら。まぁ俺の分は結局ガルが食うからいいけど。そう言えばどこに行ってもふたりなのに、四人がけのテーブルで頼んでいたのを思い出した。皿がな、乗らねぇんだ。注文しすぎるから。全部食うから問題ないと思う。
けどそれは、昔の話だ。今は飢える事もない。腹に詰め込む必要はなくなって、俺の食もそれなりに細くなった。夜を紅茶だけで過ごすとローザに指摘されるから、面倒でもスープくらいは飲むようにしているが、その程度のもんだ。
飯を食った後に、デザートが食べたいと言い出し、真夜中にやっているカフェに寄ってひと皿平らげるんだから、ガルの胃袋はあの頃から変わっていないらしい。どこに入るんだそんな量の飯。

それでも美味そうに食うお前を見ているのは嫌いじゃねぇな、と思う俺がいる。……胃薬の買い置き、確かめておけば良かった。

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126 :Arthur
10/19-01:36


ねこ が 帰ってきて いる。
おかえり、すぅぱぁなねこ。寒くなってきたから気を付けろよな。たまにはモフらせてくれ。温かい紅茶を用意して…紅茶は駄目か。温かいミルクにしておく。


割と、好きな奴の日記はストーカーしている。
俺も書かなければと思えば思うほどちゃんとした文字の並びにならねぇんだよな。
私信も届いている。返事には時間がかかるかもしれないが、いつか、きっと、多分。こう言うのは嬉しくて中々綺麗に纏まらないもんだ。

ガルとはまぁ、それなりに。来月は恒例になった冬の催し物へ行くか、と言っていた。
そろそろコートの出番が来る。クリーニングに出してからしまいっぱなしだから、干してやらないとな。ガルが褒めてくれた、ダブルボタンのコートにしよう。シャツは新しくして、セーターを編むには時間が足りなさ過ぎる。
もう少し、余裕を持って生きる事を冬の目標にしたい。

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125 :Arthur
08/24-01:13

  
ガルに酒を貰った。何故か最近ガルがどこかに出かける度に土産に酒を買ってくる事が多い気がする。

どちらが先に買い始めたのは覚えにない。んんん、あれか、俺が地酒を渡したのが始まりか。うろちょろ出かけるのが好きで、土産にとひとつ、或いはこれも一緒に、なんて増えていく。
ガルは海上で大騒ぎしていた頃はともかく、それ以降はド級ののんびり屋であまり出歩くタイプじゃなかったんだが、最近少し外を向くようになったらしい。

この前は珍しい酒瓶と塩を渡された。塩だ、塩。塊の塩。握り込めるくらいの小石サイズがゴロゴロ入っていた。どうやって食うんだこれ。酒と塩はアリだが、そのまま食う訳じゃねぇよな?調べたら削る専用の板みたいな物が売ってるらしい。今度マーケットにでも行ってくるか。俺がナイフの柄で砕き始める前に調べると言う行為を取れて本当に良かった。時代の流れってすごいな。うちは諜報部でさえアナログ過ぎてアルフレッドに、「2000年代入って何年経ってると思ってるんだい?!目の前に便利な物があるのに使わない理由がないんだぞ!」と言われて取り敢えず買ったパソコンはスタンドアローンのまま、机の上に放置されている。箱から出してあるだけ褒めて欲しい。

話はズレたが、ガルの土産。そう、あいつの土産はよく分からない。手のひらに乗る小さなキーホルダーひとつの時もあれば、紙袋に入りきらず物凄い大荷物になる時もある。何でそんなに買ったんだ。一度に抱え切れる範囲を超えている。困った俺は、ガルが土産を買った時にどのくらいの量になったのか訊くようになった。心構えが必要だからだ。いつも通り財布をポケットに突っ込んだだけで会いに行っても良いのか、或いは旅行用の鞄が必要なのか。
最近はガルから申告してくれるようになった。相変わらずアバウトだが、段階で言うなら少ない方から「土産買うてきたで」「紙袋に纏めた」「持って行くわ」の三段階に分けられるような気がしている。持って行く、と言われた時が危ない。重い酒瓶がいくつかあるか、やたら大きなぬいぐるみか、或いは。ポケットや普通の鞄に入らないであろう事だけは、確かだ。

それでも、まぁ、俺がいない間も、俺の事を考えて土産を選ぶ時間が存在してると言うのは、案外悪い事でもないだろ。
何となく、最近はガルも俺も少しだけ交友の幅が広がってきた。世界はふたりだけで出来ていないし、俺も心の100%をガルに明け渡している訳でもない。兄離れ、みたいなもんだ。いつまでも兄弟ベタベタしている訳にもいかねぇし、まぁ、それなりの距離感で居られると良いな、とは思っている。

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124 :Arthur
08/24-00:53

  
あいつの香りが変わった。
甘ったるいボディーソープとユニセックスの香水、それから掠れるような煙の混じったそれが好きだった。

きっと、以前の俺ならばそれを酷く嘆いたに違いない。まるでこの世の終わりを知ったかの如く、ひとりで喚いて、飲み明かして、泣いたかもしれない。お前には何ひとつこぼさず、爪を噛んだだろう。

だって、それだけが俺の縁だったからだ。
誓いなど何もない俺たちの、唯一だったから。

けど、まぁ。何とでもなるもんだな、と、思ったりした。それほどの月日が経ったのか、諦め癖を拗らせたのかは分からない。けど、それだけの事だった。お前は代わりを与えてくれたし、馴染めないのは俺の勝手だ。

時代の流れって、そう言うもんだろ。

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