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┗さよならのワルツ(129-133/142)

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133 :Arthur
05/27-02:06

「お前はね、誰よりも我慢強い。それから、誰よりもさみしがり屋」



難儀な性格だね、と淡く笑ったあいつの横顔は、確かに誰かに似ていた。


このご時世、緊張感が張り詰める事はあっても枕の下に銃を忍ばせて眠る事はなくなったし、身を縮こまらせて震える手で矢を番えていた頃より余程幸せになったと、それだけは胸を張って言えるけど。
それはきっと最低ラインの話であって、大多数の普通とは違う事くらい、理解している。
キリキリと胃を痛めながら走らせるペンも万年筆からボールペンに変わった今、あの頃のようなさみしさをさみしさとも認識していなかった胸の奥の痛みを抱える事はなくなった。
それでも優しさを覚えた心臓は相変わらず小指の先で掬いあげたティーハニーの甘さを求めるし、真夜中のミルクティーを愛そうとする。

月明かりでは物足りないくせに、蛍光灯の下では眩しくて眠れないんだ。我儘になったな、と思う。
欲しがる事が多くなった。あれも、これも、と。そう、自分の周りを欲しがるのではなく、自分の身の内の空虚のひとつひとつを、埋めるしあわせを覚えてしまったから。

あれでもないこれでもないと嘆き続けて、俺は何をしたいんだろう。

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132 :Arthur
05/27-02:05


#edit_sp

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131 :Arthur
02/12-03:10

#(edit_sp)


#2/14
世の中はバレンタインか。花のひとつでも贈る相手がいれば良かったんだが。残念ながら、なぁ?

#2/23
そう言えば裏庭の不憫たちは元気なんだろうか。預かった鍵でたまに開いては愛らしいふたりを思い出す。どこか遠いところで構わない。気が向いたら紅茶でも飲みに来いよな。

#3/9
春が駆け足でやってくる。まだまだ冷える日も多いが、花が開き始めるのももうそろそろだろうな。今年も何事もなく、過ごしたい。

#3/11
たまに自分の日記を読み返す事があるんだが、本当に意味が分からない。もっとこう、読みやすい日記を書きたいと思いつつ自分用であって誰かに宛てている訳でもないから構わないか、と思う所までがワンセット。カリエドは好きだって言ってくれるしな、これで良いんだろ多分。

#3/30
どうも春は調子が悪い。いつもの事だが。
それでも来月は駆け抜ける様に予定を詰め込んじまったから楽しまないとな。

#4/1
誰にも理解されていないと思った事が好まれていると知った時の嬉しさをどう表現すれば良いのか分からない。
本当に好き勝手書いているんだ。ここは俺がアウトプットする為だけの場所で、誰かに見せる為に飾っている訳でもない。でも、それを好きだと言われるのは、こう、むず痒く嬉しいな。俺にとっては何を褒められるより文字を褒められる事が一番嬉しい。

#4/18
……そうか、あれからもう一年経ったのか、

#5/15
そう言えばこの前ガルと映画に行った。最近はいろんな映画館があって、動くタイプから隣とくっついていない幅広いシートや何なら寝転びながら見れるシートもあるらしい。絶対寝るだろそれ。
以前一度幅広いシートで見て快適だったから、今回もそれにしたいと言ったらガルに反対された。俺と遠くなるのが嫌なんだと。
何だお前。そう言えば映画中にこっちの反応を伺ったり手を繋ごうとしたりするよな。映画に集中しろ映画に。まぁ今回は途中で寝なかったから許してやる。

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130 :Arthur
02/12-03:10

上手く行かない事ばかりで嫌になる。
積み上げていた書類は散らばるし、ミルクをカップに淹れてから湯を沸かしていない事に気付く。お気に入りの茶葉は切れていて、ついでにブラウンシュガーも売り切れ中。
不幸は単体ではやってこない、なんて言うが正にその通りだ。不幸ばかりが重なって、憂鬱を織り上げる。その内デカい何かが襲い来るんじゃないかと怯えていたって何にもならないけどな。

大丈夫だ、と笑うのにも慣れたがそろそろ息抜きも必要だ。もう少し暖かくなったら羽を伸ばしに行きたい。
灰皿だけが空虚を埋めていて、ファイブテンポのロックだけに満たされていたいと思うのも、窮屈に身を縮こまらせているからだろう。
愛しのテディベアはこの身を暖めてはくれないし、市販のビスケットはポケットの中で増えたりもしない。
それでも、それを嘆く程に弱くはないし、泣いてしまえる程に強くもないのが難点だな。拗らせている自覚は、ある。


もう一杯だけ、そう、今日はハーブティーにしよう。ひと匙の蜂蜜と、深夜の囁き。
とびきりの魔法と、セレナーデ。

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129 :Arthur
12/27-02:44

お前と繋いで歩くてのひらに、ときめきを感じなくなったのはいつからだっただろう、とぼんやり考えていた。
お前が語る未来に違和感を持てるようになったからかもしれない。

相も変わらず、俺とガルはつるんでいて。
飯を食いに行ったり、宛もなくドライブをしたりしながら、600年以上。あの頃は良かったな、と浸る思い出に、羨望ではなく別の何かが混じり始めたのは、俺の成長録でもあるだろう。
ずっと時計の針が止まったままだったのに、思い出の中でしか生きられなかったのに、それでも俺以外の時計はどんどん進んでいって。置いてけぼりだと、深夜に嘆いているのにも飽きただけなのかもしれない。

愛している。ただ、恋をするのを漸く止められた気がする。まだ憶測で、真実ではないかもしれないけど、な。

お前はよく遠い未来の話をする。俺は振り返って過去の話をしたがる。噛み合わない会話も、いつだって楽しかった。嬉しかった。だってお前が語る未来には、必ず俺が隣に居たからだ。
いつかひとりになった時には、俺と暮らしてくれるのだと言う。誰も知らない土地へ行って、ふたりで生きようと言う。
その言葉が、嬉しかった。それだけをよすがにして息が出来るくらいに、嬉しかった。

でもそれは同時に「今」の俺を置いて行くと言う事だ。今を蔑ろにして、未来に夢を見ているだけだ。思い描いた未来にならない事なんて、生まれた時から知っていたくせに。
いつだって欲しかった。安寧の地が、家族が、兄弟が。でも何ひとつ手に入らなかった。或いは、努力をしなかった。
未来を夢想する事は楽しかったけど、現実との差に嘆く反動も大きかった。
だからこそ、傍に居てくれるお前に依存していったんだろう。今思えば安易に予測出来る。何ひとつ与えてくれないお前は、けれど必ず傍に居てくれた。それだけで良かったんだ、ずっと、今迄。

それに違和感を持てるようになったのが良かったのか悪かったのか、今の俺にはまだ判別出来ない。分かるのは俺の世界が広がった事と、お前がしあわせで在ると言う事だけだ。俺が居なくても、なんて馬鹿を言うつもりはない。お前のしあわせの中には俺も含まれている。ただ、一番目ではないだけで。

お前の中の俺は、いつの時代で止まったままなんだろうな。お前の後ろをついて歩いて、生まれたての雛鳥だった頃だろうか。
漸く前を向ける気がする。だって俺はもう、雛鳥ではないと気付いたから。

なぁ、ガル。歩くよ、自分の足で。遠くへ飛べないと泣いていた羽根を畳んで、何かひとつでも自分で得られるように。
好きだ。今でもお前を愛している。でもこれはもう、恋じゃない。

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