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┗彗想、(7-16/25)

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16 :アルミン・アルレルト(進撃の巨人)
2013/10/25(金) 02:21

 夢を見る。アニが僕の前から消える夢だ。夢の中の彼女は、まるで浮かぶように氷へと身を閉ざしていた。綺麗だと思った。夢は感触や感覚が得られない筈なのに、氷の表面に触れた掌はひんやりとした心地好い冷気を僕に伝えて、不思議な気分になる。普段触れる彼女はいつだって温かくて、僕より少し高いその体温は、子供体温みたいだねと笑っているのに。温もりの潰えたその温度を前に、僕は唯無表情以外にはなれず、気付けば景色が歪んで、次の瞬間には彼女の寝顔が視界に飛び込んだ。いつもと変わらない、穏やかで無防備な、世界。

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15 :アルミン・アルレルト(進撃の巨人)
2013/10/20(日) 05:59

 毎日繰り返す“御休み”の言葉は、ある意味どんな愛の言葉よりも愛に溢れていると思う。

 “御早う”よりも“御休み”が好きだ。
 一日の終わりを彼女と共に迎えて、全てが彼女だけになって、世界の暗転を甘んじて抱き締められる。始まりも決して嫌いじゃないよ。寧ろ、以前より随分と好きになった。それでもやっぱり僕は終わりが好きで、例えこの侭目覚めなくとも、僕の最期の記憶が彼女で在ると云う愛しい事実を貰えるから。

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14 :アルミン・アルレルト(進撃の巨人)
2013/10/20(日) 05:58

 まあそんな些細な事はどうでも良いんだよ。
 取り敢えず僕のアニが今日も可愛かったから世界はきっと平和だ。

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13 :アルミン・アルレルト(進撃の巨人)
2013/10/20(日) 05:58

 時折立ち止まって、掌に触れる温度を確りと感じ取って、自然と滲む感情を噛み締めることは、それ自体がとても幸せだ。衝突のない付き合い方って奴が僕はそこそこ得意ではあったのに、今年の春以降、そんな事は口が裂けても言えないようになった。要するに、口喧嘩が増えた。それを悲しいと思った事は在るよ。以前のように戻りたいと思った事も在るよ。だけど僕達は、こうして今も変わらず隣同士だ。口喧嘩の頻度は減っても、まあ、無くなりはしない。 僕にも彼女にも感情が在って、苛立つ時は苛立つし、拗ねる時は拗ねる。それで一日中話し合い、なんて事も珍しくない。結局は仲直りするんだから、本当、何やってるんだろうとは少し思うけど。

 だからこそ。嗚呼、僕はアニが好きだなあって、ふとした瞬間滲む感情をとても大切に思う。当然のように言葉無く繋がれる掌を、愛おしく思う。これは僕達が作り上げた時間だ。何度もぶつかって、互いに言葉と云う凶器を振り翳して傷付けて(この辺り、彼女は傷付かない、傷付くと悲しむはイコールじゃないと主張して譲らない。だから僕は傷付けているとは言わずに悲しませて御免と謝る訳だけど、僕自身としては傷を刻んでると思ってる)、本音を洗い浚い吐き出してきた。決して、綺麗ではない。それは僕がずっと描いて実行に移してきた恋人像とは異なるし、多分彼女の方もそれは同じだ。…アニだから。これで良かったと、思える。今がとても、幸せ。理想を描く姿はもう破り捨てて、新しく作り上げてしまえば良いじゃないかと、そう開き直ったのは最近だって、アニには内緒ね。

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12 :アルミン・アルレルト(進撃の巨人)
2013/10/20(日) 05:58

 …僕は少し頻繁に筆を執り過ぎているから、少し確保を。駄目だな、久々にこうして綴るものだから、何だか少し、心が浮き足立ってる。そりゃあ、エレンにも笑われて当然だ。

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 世界中で親しまれている童話、ハッピーエンドを提供する物語達。幸福を象徴する硝子の靴や青い鳥を、心から欲していた訳では無かったんだ。完結した御伽噺の続きを、君は知ってるかな?もしも知っているのなら、是非僕に教えて欲しい。そうして、末永く幸せに暮らしましたとさ、――僕はこの部分こそが、何よりも肝心な、大切な要素だと思っているけど。

 好きだよ、愛してる。僕と手を繋いで、生きていこう。
 有り触れた、陳腐な言葉だ。世界中で使い古された定型文、読み継がれたハッピーエンドへの切符。唯一違う箇所を挙げるならば、未来が在ると云うこと。完結はしないと云うこと。例え一つの恋が煌めきを失っても、消えない事実と過ごした時間が、きちんと未来へ引き継いでくれる。完結がない。王子様は、お姫様は、完結しない時間の中で、何を想い何を描き、生きていたんだろう。

 当たり前のように配布されている大量の切符の中から、アニはちっぽけで薄汚れたその紙を掴んで、ぎこちなく笑ってくれた。有り触れた、陳腐な言葉のひとつひとつに、喜びを伝えてくれる。彼女は間違いなく僕のお姫様だ。終わらない童話を紡ぎ続けて、完結しない世界に満足する。嗚呼、そうだ。終わらなくて良いし、王子様とお姫様だって、本当はきっと「末永く幸せに暮らしましたとさ」なんて、望んでなかったんじゃないかなあ。その一言で終わる幸福なら、片付けられるのなら、もっと容易く生きられるよ。

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 因みに。僕は童話が大好きだ。物語が大好きだ。ハッピーエンドが約束されている御伽噺が大好きだ。でもね、その後が幸せに続かなかったり、実はこうでした、そう云うくだらない下世話な想像も、嫌いじゃなかったりする。

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11 :アルミン・アルレルト(進撃の巨人)
2013/10/20(日) 05:56

 彼女の唇から零れ落ちた、弱さの話。

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 初めてアニが僕に弱さを晒したのは、いつだっただろう。もう随分と昔の事でちっとも覚えていないけれど、僕は確かにあの時、幸福を抱いた。嬉しかった。初めてだから、分からない。そう不安そうに零す彼女の言葉はきっと真実で、その後思いがけず暴いてしまった彼女の過去を照らし合わせてみても、嗚呼そうだったんだろうなと分かる。だからこそ、愛しかった。不安そうに、呆れられないか、面倒に思われないか、鬱陶しくないか、とても不安そうに僕を眺める彼女が愛しくて、唯ひたすら甘さに浸して抱き締めた。

 それが、今はどうだ。
 今の僕は、どうなんだ。
 なんて情けない。僕はこんなにも弱かったのか。知らなかった。恋人に対してこう在りたいと思う自分の姿が余りにも強くて、そう在る事が出来ない現実にもどかしさと苛立ちを抱く。そうして巡り巡って、彼女を悲しませるに至るんだ。それでも僕は、アニを抱き締めて、支えて居たい。こんなにも弱いとは知らなかったけど、何も出来ない僕だけど、…ねえ、アニ。君の弱さを、僕に分けてくれ。いつものように。

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10 :アルミン・アルレルト(進撃の巨人)
2013/10/19(土) 14:36

 今日で17ヶ月。何だか毎月アニは感慨深そうにしてるなあ、来月は久々に手紙でも書いてみようか。…目標だった一年を越えてから、毎月新しく時間を重ねる度に、まるで拍子抜けしたようにぼんやりとする彼女が可愛い。うん、そうだね。僕も、時折信じられない気持ちになるよ。ねえ、次の記念日迄に、何をしたい?

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 僕にとって許せないこと、
 アニにとって許せないこと。
 僕は許せないけれど、アニは許しているのかも知れないね。

 だから今も、隣に居てくれてる。有難う。

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9 :アルミン・アルレルト(進撃の巨人)
2013/10/19(土) 07:22

 柔らかな寝息が聞こえる。絡めた指先が温かい。完全に無防備な姿を晒す彼女は、頬を突いてもキスをしても目を覚まさなくて、とても可愛い。僕は時々こうして、眠るアニを眺めたりする。名前を呼んで愛してると囁けば、堪らなく眠いだろうに頑張って言葉を返してくれる彼女が、本当に可愛いんだ。安堵する。でも今日はそんな事しないよ、そろそろ起こす時間だから、もう少しだけゆっくり寝かせてあげよう。

 幸せって、こう云うこと。

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8 :アルミン・アルレルト(進撃の巨人)
2013/10/19(土) 06:43

 エレンは、僕の事を宇宙人だと称した。
 僕も、エレンの事を宇宙人だと思っている。

 一人とは、一つの惑星だ。例えば国が違えば文化も慣習も全て違うなんて当たり前だけど、惑星まで範囲を広げれば、それは益々顕著になる。違う星の住人なのだから、違う考え方を持っていて当然。他の惑星で生きているのだから、相手の思考が分からなくても、仕方無い。
 僕とエレンは違う惑星に住んでいる。僕とミカサも、ジャンも、コニーも、サシャも、クリスタも、皆が一つずつ惑星を持っていて、その星から此方へと笑い掛けて来るのさ。僕にはエレンの考えが読めない。言葉として説明されて理解出来る事も在れば、やっぱり分からないと思う事だって少なくないし、信じられないような気持ちになる事も在るよ。でもそれは仕方無いんだ、だって、僕はエレンの星で生きていない。


 それにしても。アニ、君とは同じ星で生きてみたいな。随分と前に手を繋いで、同じ方向へと歩んで、それでも未だ僕達は、衝突する。その度に確かめ合って、形を整えて、頷き合って、小さく笑ってもう一度歩き出すんだ。嗚呼、うん。小惑星同士の衝突は、きっと綺麗だよ。いつか砕けて飛び散ったら、欠片を集めて一つの惑星に作り直そう。それでほら、僕達はずっと、一緒に居られる。

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7 :アルミン・アルレルト(進撃の巨人)
2013/10/19(土) 06:33

 アニは、“普通”とは何かと質問した。“普通”とは、何だろうか。それは僕にとって、酷く感覚的なモノであり、アニが納得出来るような答えを用意する事は中々に難しくて、結局は口を噤んだ結果、彼女を寂しがらせる結果に至った事は覚えている。まあ勿論、僕が答えられなかったからなんて理由で彼女が寂しがる訳もなく、其処には確りとした理由が在るのだけれど。

 アニの瞳に映る僕は、アニの知っている僕は、“普通”だろうか。それとも、“変わっている”だろうか。
 そんな陳腐な質問を、彼女に投げた。答えは冒頭の通り。嗚呼そうだ、そもそもの話、彼女は“普通”か否かと、くだらない事を考えない。それはそれだし、これはこれとして、個々は個々なんだ。だからこそ、彼女の価値観と僕の価値観は、違う。価値観の差違は一人と一人が居れば自ずと生じるモノだし、取り立ててその事に関し何かを思ったりはしない。僕は、アニの価値観を尊重したい。否定なんてとんでもない。大好きな彼女だから、嗚呼そう云う捉え方も在るのかと、違う価値観に頷く。――それが、彼女には少し、寂しいみたいだけどね。
 結局アニに伝えられなかったけど、僕はさ、君の価値観をどうでも良いなんて、思ってないよ。君の価値観だから、違っても良いと思えるんだ。無理に摺り合わせなくても、僕は君が好きだし、君も僕が好きでしょう?違うなら違うで、良いんだよ。アニの全部引っくるめて、好きなんだ。

 閑話休題。
 “普通”とは何か。僕にとっての、“普通”とは何か。
 やっぱりとても感覚的な事で、説明には成り得ないこの捉え方を、直接アニに話そうとは思ってない。きっと、彼女が寂しがるような、そんな価値観だから。

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