『僕のペンを使いたいから君も日記を書いてくれ』
寝際にそんなことを言われ、また随分と甘えん坊じゃない?と思いながらこうして筆を取ってる私もなんだかんだ甘いような気がする。
折角だからいくつか思い出話でもしてみようかな、他の人みたいに上手く書けるかはわからない。
報告書や稟議書はいくつも作ってきたけど、個人的な、そういう意趣のものを書き記すのはなんとなく、そう、なんとなく苦手意識がある。
それでも書こうとしてる理由、君ならちゃんとわかるよね。
▽
アベンチュリンと恋人になった日のことは鮮明に覚えている。
食事に誘われたこと、開発途中のビルの上から見る景色、そして珍しく何処か悲観的な、…一言でいうなら情緒の安定しない彼がそこにいた。
そんな彼を一喝して、恋人になった。
結論から言えばそう、そんな感じ。
アベンチュリンのことを意識したきっかけはいくつかある。
仕事の方針は合わないけれど、アベンチュリンの仕事の出来はそれなりに評価してた。
カンパニーでアベンチュリンに関する噂は尽きない。
それは女性人気も勿論あるけど、男性からの僻みだとか、彼の隠すつもりのない首の刻印だとか、腕時計もそうかな。
そんな噂をものともせず、彼はいつも笑っていた。
そしてオーバーワーク気味の私を憎まれ口を叩きながら休ませてくれたり、ジェイドさんや他の女性の石心がいないときは傍にいてくれることが多かった。
実力主義、とはいえ男尊女卑の思想を持つお偉方は少なくはないし、それは部下や同僚であってもそう。私は若くして十の石心に選ばれ、黄玉の貴石と共にその名を賜わった。
それが妬みの原因になることも理解していた、だから強くなる為に努力を惜しまなかったけど、あの頃君がやたらと私に突っかかってきたのは私を守る為だったんだって今ならわかるよ。
▽
そんな彼に惹かれ、随分と彼らしくない様子で振られる前提での告白をしてくるものだから──…思い返せば相当恥ずかしいことを口にした気もするので割愛。
さて、お気に召したかな。
お礼は新しく出来たレストランのディナーで手を打ってあげる。
……君ってさ、本当に僕が思ってるよりも僕の事好きだよね?ま、それはお互い様か。お気に召したとも、可愛い君のおねだりなら何だって叶えてあげるのに、たった一度の食事で良いのかい?それって唯のデートだから僕にもメリットしか無いんだけど……もしかして裏がある?なんてね。ドライブと最上階のスイートルームも付けてあげるよ、ああ遠慮しないで!君の熱烈な愛に応えたいだけさ。愛してるよ、トパーズ。
……こんなこと書いたら逆に逃げられそうだなぁ……。Topaz