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┗速贄(29-33/33)

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33 :
10/16-16:04

若き超大国殿はたいそうマゾヒスト。さまざまな価値観と性を内包する身としてはわからなくはないのだけれど、僕はあそこまでじゃあない。やれファックだやれロデオだと腰を揺する奔放さはある種見習いたいところ。

僕はと言えば最近は前後不覚になるくらいにめちゃくちゃになるのとするのが好きだ。丹念に解した胎内を僕ので奥まで貫いて、僕のじゃなきゃ届かないところまでノックしてあげる。そうすると僕しか見えなくなったみたいに身も世もなく喘ぐものだから、僕だって楽しくなっていっそうスプリングを軋ませるわけだ。
僕のもの。僕だけの場所。誰にも届かないところを僕なら埋めることが出来るよと、内側から教え込んで逃げられなくしている。

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32 :
09/03-06:24

下半身なら締められる方が好きだけど、首であるなら絞められる方が好きだ。世界で一番力があるとされている俺が他人に呼吸を、命を握られるという屈辱が堪らない。支配する側である筈の俺が支配されるなんて最高だろう? 歪み切った根性はどうしようもない。歯車なんて狂ったままでいい、そのままどこまでも絞られて、いっそ縊り殺されてしまったって笑い話だ。

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31 :
10/26-03:10

狩も出来ない、当然蓄えはない、それなら朽ちる一方なんだ。だけどもう片方の端の僕は考えた。なぜ食べなければ終わりだと思った、なぜ餓えが死であると思い込んだ。

案外心は安らかで、数え切れない程の”矢張り”で構成されたセーターを解いていく指はなめらかだった。
テレビに映る透けるような青空。凍りついた樹氷の傍らで眠る湖畔。
僕はあのあおに恋をした。だから寂しかったんだね。

さよなら、愛していたよ。縁があれば、またいつか。

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30 :
08/14-16:26

狩をしなくなって暫く。このまま僕は朽ちていくのだろうなと何となく考えた。明確に思うには未だ胸に幾許か残る未練に似た何かがそうさせてはくれないし、けれど否定するには覚束ない。胸の中に残した忘れ物と一緒に、僕はこのまま沈んでく。それもまたある種”らしい”終わり方なのだと、僕は思えるよ。世界にも誰にも彼にもさよならは無く、何となくで沈んで忘れていく御座なりなおしまい。

ピリオドを打つのはらしくない。また目を覚ます為の逃げ道があるからこそ、らしいのさ。

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29 :
02/28-08:05

失恋した、傷付いたと被害者のような顔をしている子がいたから話を聞いてみた。僕は口シ了だけど、雪解けも遠い冬の日くらいはあたたかな日差しのかわりにあたたかなことばを投げてあげようと決めている。
そうしたらその子は二回冬が来るまでの間ずっと片思いをしていて、その好きなひとに大事な子が出来てしまったらしい。だけど僕は知っている。その子は好きなひとに片思いを打ち明けたりはしなかったし、好きだと察して貰えるような小粋な愛のせりふだって囁きはしなかった。わかってもらえるわけがないじゃないと僕がいうとさめざめと泣いて、言えなかった、言う機会がなかった、出来なかったことをして好きなひとを奪ったあの子が憎い、とうそぶいた。
恋をしている女の子はすごい。好きなひとに好かれるよう努力をして、思わせぶりなせりふで好きだと目一杯伝えて、愛していると全身で表現して、一喜一憂しながら春を待つハートと一緒にダンスを踊る。家の中で手をこまねいて、好きになって貰えるはずだとあぐらをかける余裕は到底ない、切羽詰まったラブレターが可愛くて、僕はそんな彼女たちの表情を眺めるのが好きだ。

一生ひきずる、とその子は言った。打ち明けず、思いを伝えず、ただ逆恨みをして、それでどうしてひきずることが出来るんだろう。わからないけど、尋ねることは出来なかった。だって、僕は今はあたたかいふりをした口シ了だったから。思わずうらやましいなと言い掛けた言葉を飲んで誤魔化した。

恋を失ったなんてどうして言えるんだろう。まだあの子の言葉は届く。伝えてすらいないままに失うことが出来る恋だなんて、どれほど気が楽か。
やっぱり僕はあたたかい口シ了にはなれないみたい。

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