赤司征十郎、 知らず知らずの内に擦れ違い、想いは何も変わっていないのに二人して不安になって。 普段俺様のお前が僕の心離れを心配した様子はとても滑稽で、普段王様の僕がお前を猜疑した事も酷く情けない。 僕は、愛の言葉が囁けない。 僕という人間がどんな声で、どんな表情で、どんな気持ちで「好き」だと口にするのか想像も付かない。言ったらそれは僕でなくなる気がして…――怖いんだ。例えばこれが涼太なんかだったら素直に言えるだろうにね。告白を受けた時もそう、「好き」と言われる事自体に動揺して聞き返してしまって。ずっと独りだった僕にとって(或いは偽りの想いを囁き続けていた僕にとって)、レンアイは難しい。 気持ちが擦れ違い、愛情を確認し伝えたい時ですら、このプライドが邪魔をする。…ああ、何故。何故言えない。 『オマエはさ、赤司であろうとする意地があっから好きなんだよ、オレは。』 その言葉にどれだけ救われたか、お前は気付いてる? ありがとう、__。僕は未だ、僕のままで居られる。 でも…偶には、必ず言うから。 お前の事が、大好きだよと。 〆 - 25 - |
赤司征十郎、 昨日の敵は今日の友、ではないけれど。 数日前喜んでいた台詞に、今になって縛られるとはね。 理由も無く情緒不安定になるだなんて、一体どういう訳なのか僕自身説明を要求する。彼奴とは仲良く触れ合って話をしていたのに、突然のこの寂寥感は何だ。――『好き』だと言って欲しい、だけど強請るなんて有り得ない。 …は、なんて無様な姿。 寄り掛かる事が出来ない。 そんな存在も居ない。背負うしかない。 何も言わずに見詰めた所で、鈍感な彼奴は気付かない。否、彼奴だからじゃない。言外の想いを汲み取れと、どうしてそんな無茶な事が言える? 正直、彼奴でなくても“今”言葉をくれるのなら誰でも構わないとさえ思う。一時の嘘でいい、彼奴以外の恋人が欲しい訳じゃない。浮気をしたいのではないんだ。 最低だろう。こういう男だよ、オレは。 自分の欲望の為なら他人を平気で利用する。 汚いこの感情、お前はどうか気付かないでいて。 御免、__。 直ぐに元の僕に戻るから。 こんな顔では逢いに行けないね。 〆 - 26 - |
黄瀬涼太、 「負けたんだ、」 そう口にした途端もうこの現実を認める他無くて、我慢して意地張って何とも無い風にしていた自制心が崩壊した。堰を切った様に止まらない涙がすげェ情けなくて、何でオレはもっと強くなれないんだろうって。 続いていた不安感は誰の所為でもないんスよ、…――オレの、弱さ。 あーあ、こんなんじゃダメッスね! 元気出せ黄瀬涼太、勝負は冬に持ち越されただけだっての。次こそセンパイ達に勝利を届けるんス、…負けてられっかよ。 オレみたいなのって、独りで気儘にやってる方が良いのかも知んねえなァ。それか色んな子と遊ぶとか。気持ちを分散させなきゃやってらんねえッスよ、マジで。 それともアンタは、全部受け止めてくれンの? ね、アンタはどう思いますか? 〆 - 27 - |
緑間真太郎、 [07:42] 今日も今日とて練習試合。午前は仙台、午後は都内。相変わらず対戦校の調整が下手過ぎる。それに試合前に仮眠しか取っていないとは人事が尽くしきれていない。…眠いのだよ。おい高尾、寄り掛かるな。 [08:52] 寝て起きたら、景色が変わり始めていた。紫原、オマエは何時もこの様な場所に居るのか。…黙られると此方も困る、早く何か吠えろ。これを見ているかは知らないが。 [12:20] 試合が長引いて乗り遅れた。 [13:10] 腹が立ったので高額の牛タン弁当を食べた。フン、これくらいは償わせるべきだろう。これから秀徳に戻る。滞在時間3時間弱…。 [15:15] 相手校の監督が素晴らしい人格者だった。あの台詞はメモしておこう。 [16:12] 帰宅。そしてアイツからメール。 [20:06] 触れ合いたかったからとそれを選んだのに、逆に時間が合わず声が遠くなる。兼ね合いというものは難しい。オマエは未だオレの事が、…―――? [22:19] 馬鹿め。矢張りアイツから求められると嬉し…悪い気はしない程度に、オレはアイツを気に入っているらしい。 〆 - 28 - |
黒子テツヤ、 以前、青峰君と一緒にザリガニ釣りに行きました。 川や池はもう採り飽きているそうで、場所は海に。着いてからは勝手に釣り始めていたので、ボクも自由に過ごさせて貰いました。 浜辺は白い砂浜が綺麗に輝いていました。 蟹を避けて座った所には貝が。ボクは青峰君みたいにナントカ採集に拘りは無いので、種類だとか名前だとかもよく判りません。何かの事典で見た事が有るな、程度で。 手に取って見てみても、色の区別が付かないんですよね。乳白色でもない、黄土色でもない、日光に翳してみるとパステルカラーの淡い色合いが様々に変化して。――虹色、まさにそんな感じでした。どれだけ目を凝らして見てもその貝を詳しく知る事は出来ないんですよ。厚い殻に覆われていて、性質だとか本当の色だとか、把握出来ないんです。長時間眺めていても、ですよ。少しも近付く事が出来ない。 掌に乗せてにらめっこを続けていたら、バケツに何匹をもザリガニを入れた青峰君が戻ってきました。 彼はボクの行動を見て大笑いしていましたが、何と無く気になってお土産に持ち帰る事にしました。 様々な色に光る、虹色の貝。 真意が掴めなくて、気になって、本当の姿はどんなモノなんだろうと不思議で。 ああ、ボクはこの貝に魅せられてしまったようだ。 貝も逃げずにいるという事は、ボクを少なからず気にしてくれているようで。…さて、先ずは散らかったベッドの上から片付けましょうか。 〆 - 29 - |