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┗琥珀の多幸感は然れど耽溺の音に蕩け…(31-40/61)

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40 :我/妻/善/逸(鬼/滅/の/刃)
2024/07/28(日) 09:50

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いったぁああ"…っ!!

ごめんなさいっ…、ごめんなさいぃ…っ!!

# 蝶/屋/敷に着くなり思いっ切り怒られた。
# 誰にって、…しの/ぶさんに!

# どうやら勝手に愚痴って口に出た伊/之/助もそうだけど、
# さっきまで居たらしい炭/治/郎に…物凄く心配掛けちゃったみたい。

いや、だってさぁ…
この場合、弱い俺が当然…一等に庇うべき所でしょ?

びびって動けない様な俺なんかより…──、っ…ぃだ、ぁ"…ッ!!

やだやだ、っ…ごめんなさいってば、しの/ぶさぁああんっ…
顔は笑顔でも音が笑ってない! 音が笑ってないぃ…っ!!
天女様の様にお美しい顔なのに怖い…っ!!
というか何で怒るのぉ…っ!?
俺っ…何かしの/ぶさんに失礼な事しちゃいましたぁ!!?

……、…えっ?

ア、ア/オ/イちゃん?
き/よちゃん…す/みちゃん、な/ほちゃんまで!?

何…っ、何でみんな…怒ってるの??


# …───!!

# あっ、…これ…

# 違う。
# 唯、怒ってる音じゃない。
# 皆…心配してくれてるんだ。
# 俺なんかの為に。

# ふひひっ……皆、優しいなぁ。

ありがとねぇ、皆。
そ…そんなに心配されちゃうなんて思わなかった。
いつ死んでも、怪我してもおかしくない鬼/殺/隊ですし。
だから…てっきり、…──

# ……あれぇ?

な、なになにっ…今度はどーしたのっ??
何でそんな驚いた顔…──

# ……っ、…?

# これ、何の音だ?
# 胸が締め付けられる様…な。
# あぁ…何だ、か…。

ご、ごめ…っ、疲れたから部屋に行くね!



# 馬鹿だな、俺。
# この音…──何て事無い。

…っ…、……ぅ…

# 俺が一等に気付くべき音じゃん。
# 生きたいって、必死に思って…
# 生きてて良かったって思ってる俺の" 音 "だ。

……っ…

# そうだよ、何やってんの俺。
# 庇った事は後悔してないけど。
# 自分の身躰…少し蔑ろにしてた。
# 俺が、もし…──
# そんな事になったなら、伊/之/助は酷く怒るだろう。
# あぁ…それだけじゃない。
# 炭/治/郎だって、きっと……
# 唯でさえ彼奴は俺の頭の傷を知ってる。

……あー、……後が、こわいなぁ…

# 俺なんかに、…俺なんかに、さぁ。
# 炭/治/郎は、さぁ…。

# 帰って来たら…今日は大人しく傷を見せよう。
# 弱音も、涙も。 ちゃんと全部…吐き出して。
# 炭/治/郎に沢山、聞いて貰おう。

伊/之/助にも後で、艶々の団栗でも探すの手伝うかな…。

#──… 炭/治/郎が帰って来る迄に、この涙が止まります様に。



あ、明日も朝から任務があるし夜迄…少しだけ寝ていよう。


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39 :我/妻/善/逸(鬼/滅/の/刃)
2024/07/27(土) 10:10

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……はぁ。

完全に忘れてたけど今週、アレだったのね。
休ませてもらった藤の花の/家紋の家の人に聞くまで…
任務続きの所為でそんなの、考える暇も食う間も無かったわ。

# うぅ、…食べたい。

蝶/屋/敷に帰る迄に寄って帰ろうかなぁ。
正直…今、凄い腹が減ってる。

# 食べたい、…食べたいけども!

…そういや炭/治/郎は食べたのかな?

いや、彼奴は山育ちだ。
だから…もしかしたら一度も、まだ…───

# ……しょうがねぇなぁ。

別に、行事に拘る気も無いですし?
どうせ行くなら彼奴と行ってやろうかなぁって。
ご飯は誰かと一緒に食べた方が、絶対に美味しいし!

# うひひっ…何だか気分がいいから俺が奢ってやろっかなぁ。

お礼は" あっち "で払ってもらお。 ──…なんて。
下なのは俺なんですけどね!

# そうとくれば、早く蝶/屋/敷に帰ろ~…っと!


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38 :我/妻/善/逸(鬼/滅/の/刃)
2024/07/26(金) 23:59

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いつの間にか伊/之/助は居なくなってた。
一足早く、蝶/屋/敷に戻ったらしい。

# いいなぁ、俺も帰りたい。

まっ…俺も今夜の任務を終えられたら帰れるんだけどね!

唯、相変わらず頭が重い。
やっぱり元の傷が深かったから…なのかな。
その後に一度、傷が開いたりもして。
今も痛いっちゃ…痛い。
ズキズキして、正直…泣きたい。

# こんなんじゃ安心して炭/治/郎と顔、合わせられないじゃん!
# 彼奴の事だから絶対、過剰に心配するだろこんなのっ。
# この前だって…ぜ、全身…隈無く確認されちゃったしさぁ…っ。
# というか傷を調べるのにズボン迄、脱がす奴…居る!!?
# 途中で止めなきゃ、危うく褌迄…取られるとこだったわ!
# 何、考えてんのよっ…あの長男!?

───…あっ。

鬼の、音…が、する。

……。

# 帰りたい、帰りたい、帰りたい。

# でも、

# でも…!

人の音もする以上、帰れない。
俺が、やらなきゃ。
俺だって、やらなきゃ。

俺だっていつかは、炭/治/郎を守れる位に…───


負けない。

# 怖いけど!

# 恐いけど…!

負けない。

# 爺ちゃん…俺、負けないから!


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37 :我/妻/善/逸(鬼/滅/の/刃)
2024/07/25(木) 11:46

>


# こん/こん/小山の…───

気が付いたら、つい口遊む。

偶に炭/治/郎が、ひっそりと禰󠄀/豆/子ちゃんに歌い聞かせている歌。

気が付いたら、耳が憶えてた。
やっぱり俺達に聞かれるのは恥ずかしいからか…
炭/治/郎から初めて聞いたのは、あの日の一回きり。

…と言いたいとこだけど、確り聴こえてるんだよな。

何だか盗み聴きしてるみたい。
ごめんな、炭/治/郎。

# なぁぜに/お耳が…───

俺はさ、気が付いた時には独りだったから…
そんな優しい子守唄、歌って貰った記憶なんて当然…無くて。
初めは禰󠄀/豆/子ちゃんの事が凄く羨ましかったっけ。

いいなぁ…炭/治/郎に歌って貰えて。

普段なんて全くっていい程、音程外す癖にさ。
こういう時だけは…凄く歌が巧いんだなぁ。
よっぽど、大事で大切な歌だったんだろうな…。



いつの日の記憶だったっけ。

夜中に…声がして。

炭/治/郎が夢に魘されていた日。



# 小さい/時に/母様が…───



……あぁ、…そうか。

炭/治/郎は、もう長い事…
この歌を" 聴いて "はいないんだ。
じゃあ、彼は一体…どうやって安らぎを得ればいいんだよ?

周りに与えてばかりの彼は。

誰かの為に身を削る彼は。

# 長い/木の葉を…───



一度、聴いた音は忘れない。

あぁ…

俺、

聴くよりも…こっちがいいな…。



# そーれで/お耳が/長うござる…───



俺の声じゃ、きっと…
お前が" 聴いていた "筈の子守唄の様に綺麗じゃないけれど。

せめて眠っている間だけは、彼に安らぎを。

こういう時でしか" 自分の為に泣けない "、
誰よりも器用で、誰よりも不器用な彼。

弱い俺にはそれしか出来ないからさ。
でも、この事は決して教えてはやんない。
…って、どうせ匂いで解んのかな。
眠るお前の頭を撫でて、苦しそうな顔や声が治るまで。
ずっと、ずっと、傍に…

俺は元々…眠りも浅いから大丈夫だし。
お前の為なら喜んで起きていられる。

俺と居ない夜は大丈夫なのかな…。
心配で仕方が無い。


唯一…炭/治/郎が気を張らず心から休まる場所になれたなら。
俺はもう、何も要らないよ。

炭/治/郎…。


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36 :我/妻/善/逸(鬼/滅/の/刃)
2024/07/24(水) 10:40

> 慾。


# 危機感って怖い。

# 頭の怪我の所為、かなぁ。
# まぁ…急所だもんね。 仕方が無い。

" 死 "を意識すると…どうしても。

# 一度は傷が開いたけど、大丈夫。
# …そう伊/之/助に言っておきながら、本当は凄く怖かった。
# どうせ俺は弱い、弱いから直ぐに死ぬ。

今は大丈夫だと解っていても。

# 死にたくない。
# 生きたい。
# 諦めたくない。

炭/治/郎。

炭/治/郎。

炭/治/郎…。

# 彼奴の居ない世界なんて、考えられない。



# 声も、

# 瞳も、

# 手も、

# 心も、

# 音も、

欲も、

指も、

熱も、

精も、

楔も、

全部。

欲しい。

欲しい。

# 俺だけに向けて。

俺を生に繫ぎ留めて。

# 炭/治/郎が居るから…



# 炭/治/郎が俺を生かすんだ。

炭/治/郎が居ないと、イけない。


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35 :我/妻/善/逸(鬼/滅/の/刃)
2024/07/23(火) 10:47

>


…ぶっ倒れた。

遠目に伊/之/助の煩い声が聞こえた気がする。


──…で、今…俺はベッドの上だ。
どうやら鬼の一撃で軽い脳震盪を起こしたらしい。
今も、確かに視界が少し…くらくら、する。

殴られた後の事は、何も憶えちゃ居ないけど。
伊/之/助が言うには…その後も俺は動けてはいたらしい。
後は、

> 弱味噌の癖に俺様を庇うんじゃねぇ!!

はい、ご尤もですよ。
弱い奴が何をやってんでしょーね。
ごめんって。
でもさ…弱いからこそ庇ったんだろうが。
俺じゃ役に立てないから。
頼りの親分が怪我したら困るじゃない。

あーあ…こんな事で泣いちゃってさ。
いつもなら、だらしねぇって言うとこじゃん…お前。
猪の被り物から凄い涙、出てんですけど。

血が出てるって? 大丈夫、大丈夫。
これ、多分…前の傷が開いただけだわ。
だから今回のは重症じゃない、筈。 ──…あぁ、でも…頭、おっも。
違和感が凄い。 脳味噌…更にちっさくなった?
いやいや重いんだから…まさか腫れた?
抑々、脳って腫れんの?
あー…いいや、そんな事はどーでも。
それよりも…良く良く考えてみれば怪我したのは頭。

# 意識もそうだけど、記憶がぶっ飛ばなくて本当に良かった。

ちゃんと皆の事…憶えてる。

爺ちゃん、獪/岳…
煉/獄さん、派手/柱…
伊/之/助、禰󠄀/豆/子ちゃん…

──…炭/治/郎…。

# 忘れたりなんかしたら、きっと凄ぇ怒るんだろうなぁ。
# それとも…泣くのかな。
# あの赫灼の目をさ、潤ませて。
# 俺にしか見せた事の無い。
# あの何処か、弱々しく名を呼ぶ泣きそうな顔…。

# この間に逢った時もそうだ。
# 彼奴は…頻りに俺の頭の包帯を気にしていたっけ。
# 聞かれたけど、俺が直ぐに逸らかしちゃったんだよな…。

# 駄目なんだよ…炭/治/郎。
# お前にはもっと、優先すべき遣る事があるだろ。
# 俺の怪我なんて…気にしてる場合じゃないんだぞ。

はぁ…
折角…傷口が塞がったから髪を洗いたかったんだけどなぁ。
やばい…今の俺、凄く血腥いんじゃない?

やだやだ、髪の色とか大丈夫!?
ぐるぐる巻きで自分の髪が全然、見えねぇし!
まさか血で染まって赤くなってないよね?
やだよ、これ以上…髪の色が変わんの。
唯でさえ金色でも未だに気味悪がられてんのに…!
異国人じゃあるまいし!

あ"──~─…、今は朝餉も食べる気にならん。
代わりに点滴でも打って貰おうかな…。
今、食べると吐きそう。
でも、出来れば夜には甘い物の一つでも食べたい。



# 吐きそうだけど、
# 炭/治/郎のおにぎりだけは食べたいなぁ…。
# あれを食べたら傷なんて直ぐに治りそうな気がする。

# …という、か…

炭/治/郎が居ればいいのに。
逢いたいなぁ…。

炭/治/郎…

逢いたい、よ……。


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34 :我/妻/善/逸(鬼/滅/の/刃)
2024/07/22(月) 14:12

>


……伊/之/助。

本当の所、お前…何処迄、知ってんの?
何って…た、た、たたた炭/治/郎と俺の仲の事だよ!?
──~っ、だ…から…番って言うな! 生々しいわっ!!
べ、べっ…つに間違ってはないけどさぁ。
もう少し言い方ってもんがあんでしょーが…!

いや、もう。 彼奴とは恋仲ですよ…えぇ。
ほんとは女の子がいいけども。
炭/治/郎も禰󠄀/豆/子ちゃんと顔、似てるし。
男だけど…美人だし、可愛い時だってある。
だから全然興奮出来るし、その気になれば抱ける。

# …いや、抱いた事もねぇし…本当に抱けるとも思ってないけど。
# だって俺…下ですもん。
# 飽く迄、童貞を捨てるならって意味ですよ今のは。
# あぁ、でも俺は今の儘で充分…満足してる。
# 求められる音よりも、彼奴から求めてくれる音が好きだから。

# 俺はな、愛するよりも愛される方が好きなんだわ。
# あれでいて余裕無い時なんかの顔とかも…凄ぇ唆んのよ。
# 下から見上げる時とか、もうさ…絶景もいいとこなんだって。
# あんな長男、誰が知ってるよ? ──…あー、俺だけかぁ。
# うぃっ…ひひ。 やっ、ば……変な声出そう。
# だからいいかな~って、…別に童貞の儘でも。
# ──…いやいや待って。 何の話よこれ!?
# 俺が童貞とか、そんなんどーでもいいんじゃい…っ!!

…は? さっさと周りに言っちまえって?
やだやだっ…何言っちゃってんのこの子ぉおお~っ!!?
バカ言うんじゃないよ! 俺達、鬼/殺/隊よ!?
そんなの公にしたって仕方無いでしょーが!!
それに! 鬼と戦ってる以上…いつ死ぬかも解らないんだぞ!
特に俺はな! 弱いからっ…直ぐ泣くし逃げるから!
だから…、…だ、から。
……。

俺…

炭/治/郎の重荷になりたくないの! 枷になりたくないんだよ!
解るだろ!? 彼奴は、そーいう奴だ。
言っちゃったら…もう後に引けなくなる。
…別に卑屈になって、言ってる訳じゃないんだぜ。
でも、でも…さ。
俺はやっぱり、彼奴には長男として…
炭/治/郎には禰󠄀/豆/子ちゃんの事を一等に優先してほしいんだよ。
その為に鬼/殺/隊に入って今迄、頑張って来たんだから…彼奴は。
それを俺が、どうこうしたくないんだ。
禰󠄀/豆/子ちゃんを大事にする、大切に思う。
優しいお兄ちゃんな…そんな炭/治/郎を俺は好きになったんだから。
いつか、人間に戻してあげるその日まで。
俺は待ってればいいだけなんだから。

# そーなったら、俺も心置き無く炭/治/郎に構ってもらえますし?
# 何なら…独り占めしても許されるんじゃないかな~って。



…? ん?

おま、…っ、おま…え!
人が…ちょっと健気な俺のイイ話を聞かせてやったってんのに!
寝てるってどーいう事なのよ…っ、このバカ猪がぁああっ!!

ク、ソ…っ、やっぱお前嫌い!!
お前なんか箪笥の角に小指、打つけて三日三晩…悶えてしまえっ!!

……。

# いくら夏だからって…そんな腹、出して寝てたら風邪引くでしょーが。
# 嫌だからね俺…っ、風邪…移されんの!

──…ったく、世話が焼けるなぁ。

またあの日みたいに、羽織でも貸してやりますか。
俺ってば優し~。

# あん時の傷…凄ぇ痛かったんだからな。
# いつか絶対に謝らせる。


>

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33 :我/妻/善/逸(鬼/滅/の/刃)
2024/07/21(日) 13:51

>


……なん、で?

何でお前が此処に居んのよ…っ!!?



どうせなら其処は普通、来るなら禰󠄀…──炭/治/郎でしょーが!?
な、何だってお前なのよっ…というか何しに来たの!?

…へ? 急遽、合同任務だ?

………、……。

# 聞いてませんけどぉお"おっ!?
# どーゆー事なのぉ…っ、し/の/ぶさぁああんッ…!!?



──…はぁ。 来たもんはしょうがねぇか。
い、言っとくけど来た以上は俺の事守んなさいよねっ!?
あと! 紋/逸じゃなくて善/逸!! ぜ・ん・い・つ…ッ!!
良い加減、名前憶えなさいよっ!?
~…っ、だー! もういいわっ!!

…?
な、何よ急に…炭/治/郎が何だって?

っ…!?

なっ……、な、な…なななな何でお前がそれを、…ッ。

───~……。

# 悪かったわね俺の声デカくてっ!
# 俺も悪いけど我慢しない炭/治/郎も悪いんだよ…っ!
# お前が居たり、他の隊士が居るってのに場所考えねぇのよ彼奴…!!



…あ?

うん、炭/治/郎なら全く知らんよ。
だって…今の今迄、俺と逢う迄はなーんにも経験無いもの。
そーなんだよぉ…彼奴さぁ、何にも知らないからさぁ。
俺が一から色々と教えなきゃなんないわけ。 …嘘過ぎない?
15だぞ彼奴? それまで何も知らずに育って来たのかよと思うと…

# 俺…どれだけ汚れてんのよ。

えっ、俺? …し、知ったの5歳ですけど。
ガキの時に俺を雇った旦那さまの書斎にさ、そういう本が…。

…!? ば…っ、け…経験なんかはしてねぇわ!!
というかしてる訳無いじゃん!?
こちとら実年齢、いこーる童貞処女歴じゃい…っ!!

……へ?

いや、だって…気が付いたらそうなってたんだよ。
だから俺が下なの。 というか無理でしょ、彼奴を組み敷くなんて。
あのガタイの良さ考えなよ? 俺と一回りは違わない?
片や、俺は弱いし直ぐに泣きますし。
んー…別にいいよぉ。 今更、逆転したいとも思いませんし?
俺も男だけどさ…女の子が相手でもなきゃ拘らんよ。
いや、女の子に迫られるってのも…それはそれで興奮しますけど!

どーせ奉公人の時にも何度か手ぇ出され掛けた事もあるし…
何れも未遂だけどね。
奉公人ってさ、そーいうのもほんとは仕事なんだよね。
でも俺はどうしても嫌だったから、それだけは断ってた。

# 万一の時も、この耳のお蔭で逸早く逃げられたしな。

っ…雌言うな!
何よっ、雌/逸って!? その呼び方やめろバカ!!
お前が炭/治/郎と俺の仲、理解してくれてんのは感謝してるよ!?
でも言い方…っ、せめて言い方を何とかしなさいよ!
其処は番って言わないで恋仲って言って…ッ!!

# あ"ー……、これ…暫く落ち着けそうにねぇわ。
# 俺、いつになったら蝶/屋/敷に帰れんだろ…。


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32 :我/妻/善/逸(鬼/滅/の/刃)
2024/07/20(土) 04:23

> 深層意識。





……。

…。

………。



# …──あぁ。 "俺"は今、寝てるのか。

任務、疲れたもんな。

けれど…日/輪/刀の手入れだけは欠かさなかった。
# 当然だよ、爺ちゃんから貰った大切な刀だ。
…この刀を打ってくれた刀鍛冶さんの名前は忘れちゃったけど。
# ごめんなさい。

そうそう…羽織も、だ。

爺ちゃんが修行を終えた後、最終戦別に向けて俺にくれた色違いの羽織。
# 初めて、誰かから与えられた"モノ"とも言えるそれは…──
俺の…大事な大事な、宝物。

……。

…。

あぁ…そういえば、この"大鋏"はいつから持っていたんだっけ?
# 俺は唯、"アンタ"と一緒に並んで食べたかった桃の捥ぎ取る様…
# この首を掻き切りたかったのかもしれない。 …手遅れになる前に。
# 嗚呼…ごめんなさい、ごめんなさい、俺さえ居なければ彼奴は…。

いつから此処は真っ暗なんだろう。
# 俺には何も要らなかったから。 …誰も要らなかったから。
# 必要とされない俺なんて、闇一色に溶けていようと誰も気にしない。
# どうせ誰も気にも留めない。 だから闇の中に居ようと居まいと同じ事。

なのに、

どうして天罰は俺の髪を、映える様に染めてしまったのか。

これじゃ暗闇でも存在を知られてしまう。
俺は誰にも、気付かれたくはなかったのに。
ひっそり、唯一人。 陰の中に居たかったのに。

俺は、俺が嫌いだ。
だから大鋏でいつでも"俺"を──せる様にしていた筈なのに。

この髪色じゃ、誰かに気付かれてしまう。
…余計な事をしてくれたもんだよな。

けれど。

"彼"に出逢ってからは?
一等、余計な事をしてくれたであろう"彼"は?
"彼"は。 "彼"が。 "彼"だけは。 "彼"だけが。
"彼"が居なければ、俺は今頃…如何なっていた?

……あぁ、そうだ。
# "彼"には全てバレてしまう。
# きっと、この大鋏も直ぐに取り上げられてしまうだろう。

この暗闇すらも、意味を成さない。
# "彼"には匂いで知られてしまう。
# どれだけ闇に紛れようが直ぐに捕まえられてしまうのだろう。

"彼"に出逢った、その瞬間から…
俺は逃げられなくなっていた事に全く気が付いていなかった。

こんな事を考えた所で無駄だった。
筒抜けだ。全部、全部…。


早く目ぇ、醒ませよ…"俺"。
俺を照らしてくれる、"日の神さま"が待ってる。



# あぁ、俺…本当は照らされたくて態と暗闇に居るんだろうな。
# 大鋏を持っていれば、いつでも"彼"は"俺"を…───



……うぇひひっ。


>

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31 :我/妻/善/逸(鬼/滅/の/刃)
2024/07/18(木) 08:50

>


……っ、痛い。

まだ頭がズキズキとする。

あぁ…でも痛みがあるという事は、
俺、まだ生きてるんだな。
良かった。

# ……いや、痛過ぎて偶に眠れないから良かったのか解らんけど。

結局、あの日に色々…話し込んじゃった癖に傷の事は一切、話さなかった。
要らない心配…掛けたくなかったから。

> その包帯、どうしたんだ?

そう聞くお前に、逸らかして禰󠄀/豆/子ちゃんの話と掏り替えたっけ。
そうやって反論の余地を与えない様にしたんだよな。

# どうせ、匂いでバレてるのに…。

炭/治/郎の事だ、今頃…余計な心配させちゃってんだろうな。
何でも無いって誤魔化すよりも、此れは悪手だった…かも。

露骨に顔に出る炭/治/郎程じゃないけど俺も結構、嘘が下手みたいだ。
いや、嘘を吐きたくないのかもしれない。
或いは…嘘を吐いても無駄だと知っているから。

# というか、忘れたの俺? 抑々…嘘は嫌いじゃん。

# 誰の為にもならない嘘を吐く時の人の音は、
# 酷く歪で…耳が軋みそうになる。

# 誰かの為に吐く優しい嘘には、そんな禍々しさは感じないのに。

# そんな濁った音はもう、散々…ガキの時に聞いた。
# もう二度と聞きたくもない。

…っ、……いた…い。

生きてる事を実感出来る痛み、だけど。
どうせなら違う痛みが欲しい。

一度、知ったあの痛みは…──忘れられない。

早く帰りたい。
任務と、鬼と、面の良いイケメンは滅べばいいと思う。
# あっ、…炭/治/郎は別な。 顔、良いけど美人だし可愛くもあるし。



早く帰って、こんな頭の痛みなんて越える位の…あの痛みを。
生きてるって実感するに相応しい、あの…──本能的な痛みを。
早く。
早く。
刻まれたい。


>

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