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┗477.【妄想の】二つ名キャラで小説を書こうぜ【暴走】
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1 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/09 15:28:40 EqjiOaWtO
このスレは、その名の通り能力スレでつくられた能力をキャラ化して、そのキャラで小説を書こうぜ、というスレです。
能力キャラ絵化スレで描かれたキャラを拝借することもあります。
【小説を書かれる方への注意】
基本的にどなたのご参加も自由ですので、どしどしご投稿下さい。長さも規定はありませんが、一応『短編』ということ、『安価はせずに自分で全て書き上げる』ということを念頭に書いてください。
また、能力は能力スレ・能力キャラ絵化スレで書かれたものを使用してください。それ以外の能力が書きたい時は、まず能力スレにその能力を書き込んでからでお願いします。
投稿する際は、コテハンやトリップをつけておいた方が、いいかもしれません。間に他の方の投稿があっても判別できますので。
※トリップは、名前欄に『#1111』というように、『#』の後ろに英数字を1ケタ~8ケタ入れることでつけられます。
【読まれる方への注意】
小説の書き手によって、その書き手さんの自己設定が盛り込まれることがあります。というかないと書けないです私は(汗)
なのであなたの考えている能力キャラと、多々違う点、もしくは予想外の設定ががあるかもしれません。が、それを理解して下さった上でお読み頂けると嬉しいです。
早い話が、「俺の嫁が……!」になる可能性があります。あまり過度なイメージ崩壊はしないよう努めますが……
小説への感想はお気軽にどうぞ。書き手さんの励みになります(・∀・)
追って追加するかもしれませんが、とりあえずはこのくらいで。
では、次のレスから、私の小説を始めさせて頂きます。
(124.146.175.77)
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52 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/23 23:59:29 /a6RoTbjO
>◆0gE85SI5twさんうわぁ◆0gE85SI5twさんに続きを楽しみにして頂けるなんて光栄です! ありがとうございます!(*´∀`)
そして今日明日中に完結できるとか言ってたのは誰ですか……まだ完結してません自分で言っておきながら本当に申し訳ありません。もう言い訳の言葉もないです……
い、一応続きを、少しですが投下しておきます。本当に申し訳ないです。
*
──以前、異端審問会に入って間もない頃、人に訊かれたことがある。
『君ってさ、どっちかというと検死官系の能力だよね? なんで審問会に入ったの?』
多分そいつは皮肉とかではなく、純粋な疑問として訊いたんだろう。しかし、どちらにせよ俺は、バカなのかこいつ? と思っただろうし、実際、そう考えたのを覚えている。
何故なら、俺は──
「……どうでしょうか? 上層部は給料もはずむと言っていますし、悪くはない話だと思いますが」
深淵検死官の問いに、俺は横に首を振った。
「以前、多人数で押しかけられた時にそんな話を聞いたが、断ったら殺されかけたぞ。一回殺されかけた組織に入る奴が、どこにいる?」
「その時はそちらの事情もお伺いしなかったようで、非常に申し訳ないです」
深淵検死官は、人のいい笑顔でそう言ってのける。……申し訳ないって顔じゃないな。
「一応、今回はそちらのお話も聞いて、障害があるならそれを取り除く援助して差し上げる姿勢も整っています。異端審問会が邪魔なら対抗に加勢しますし、以前あなたを囲んだ連中が気にくわないなら、処分しましょう」
そこまで俺を買ってくれているのはありがたいが、随分と暴力的な解決策だ。
それに、俺がそんな程度の理由で、異端審問会を離れられないとでも思っているのだろうか。
「もしこちらに来られるなら、手厚くおもてなししますが」
「……手厚く、ね」
「他意はありませんよ、そのままの意味です。……そもそも、あなたの能力は人を殺せるものでしょう? 我々聖検死団の別動隊、不殺特務隊よりは、ずっと検死団向きとは思いますが」
深淵検死官が、うっすらと微笑む。
「……流石にあんたも、俺の能力は知っているみたいだな」
「大まかに、ですけどね。確か、毒霧を使用される能力……でしたか?」
その問いに、俺は答えない。
毒霧……というか、瘴気を使うのは確かだ。だが、俺の能力の『真髄』をまだ知らないというのなら──それに越したことはない。
代わりに、別の話題を口にする。
「あんたは俺を検死団向きだと言ったが、俺としては、殺人能力を持たない連中がなんで聖検死団にいるのかが気になるな。あんたの相方である、不在検死官にしてもそうだ」
さっきあの男が言った、『不殺特務隊』というのは、確かあの女が所属している隊だ。聖検死団の中で、殺人能力を持たない連中が集まった部隊。
殺す能力を持たないのなら、わざわざ聖検死団なんかに入る必要はないはずだ。
うーん、と深淵検死官は、少し考えてから俺の問いに答えた。
(124.146.174.15)
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53 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/24 00:01:33 o+50USATO
「他の方の詳細はあまりよく知らないのですが……あの子は私に付き合ってくれただけで、さしたる理由はないと言えますかね」
……その当時から、こいつら随分と仲が良かったんだな……
「因みに、私が聖検死団に入った理由は……お聞きになりたいですか?」
──そう言った深淵検死官の笑みに、危険なものが混じる。この結界をつくった時の狂気の笑顔、その一歩手前だ。
「……いや、いい」
俺は彼の申し入れを断る。『ドS』という事前情報と、彼自身の危険な笑みを見れば十分に察しがつくというものだ。おやそうですか、と深淵検死官はこともなげに危険な雰囲気を消し、話題を戻した。
「で、あなたの方は、何故異端審問会に?」
……まあ、そろそろ答えないといけないか。
俺は、昔も訊かれたその問いに、当時の通り答えた。
「俺は、できるだけ人を殺したくはない。……聖検死団に入ると、殺害任務ばかりやらされそうだからな。性に合わないんだ」
「……成る程」
深淵検死官は、苦笑する。
「殺せる能力があるというのに殺す気がないというのは、実に勿体ない気もしますがね──あなたを見ていると、昔の上司を思い出しますよ」
「聖検死団の一員と重ねられるとは、光栄だな」
俺は奴に軽く皮肉を言ったが、いえ、と深淵検死官は首を横に振った。
(124.146.174.15)
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54 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/24 06:52:36 o+50USATO
「こう見えても、昔は軍に所属していましてね。当時の上司が、やたら剣をつくって操るやんちゃな方だったんですが、そういう能力にも関わらず平和主義者だったんですよ。なんでも若い頃は相当な暴れ者だったらしいんですが、ある時子連れの能力者と戦って、その時勝てなかったのをきっかけに改心したんだとか……軍人なのに平和主義者というのも、おかしなものですけどね。まあ軍にいる時から散々能力を使っていた私をかなり嫌っていましたし、顔を合わせれば折檻の如く刀剣を放ってくる人ですから、『秩序を乱す者は排除する』くらいの意識はあるんでしょうね」
……『顔を合わせれば』以降が過去形になっていないということは、未だにその元上司とやらに殺されかけたりしてるんだな……
というか、自分が秩序を乱しているという自覚はあるのか。
どうにかしろよ聖検死団。
「さて、私の昔話などはこの辺りで置いておいて……では、やはりあなたは、聖検死団に入るという意思は今でもないのですね?」
深淵検死官の確認に、俺は首肯する。
「ああ。また丁重にお断りしておく」
「わかりました」
深淵検死官は、にっこりと微笑む。……その笑顔を見て、俺は何故か背筋に悪寒が走った。
「では、二つ目の話ですが……これは完全な私用、でした」
……ん?
過去形?
「まあ、話自体は私用なんですけどね……やることは、先程のあなたの返答で、私用と公用が半々になったとでも言いましょうか」
「……どういうことだ」
表情を険しくする俺とは対照的に、深淵検死官は笑みを崩さない。
(202.229.178.5)
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55 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/24 06:54:02 o+50USATO
だが、その笑みはただの笑みじゃない。
蝶を生きたままピンで貫いて標本にする少年のような、輝きながらも残酷さを秘めた笑みだ。
「いえ、話は簡単ですよ──クシーのことです」
薄々予想はしていたが、やはりあの女か。
「あいつなら手を切った。もうあんたたちには干渉しねェよ」
俺は口早くそう言い切る。だが──予想外にも、深淵検死官の目つきは鋭く、冷たいものになった。
「それが気にいらないんですよ──端的に言うとね。あの子はあなたと別れてから、だいぶ苦しんだんですよ」
こいつ──あの女と別れた俺を攻めてるのか?
冗談じゃない、別れてなかったら今あんたはあいつと付き合ってないだろうが。
「原因はあいつだろう。俺はむしろ騙された方だ」
「それでも、あの子はあなたを好いていたんですよ」
俺の台詞を、深淵検死官は無下に切り捨てる。畜生、このやり取りも最近した覚えがあるぞ。
「確かに最初は、任務を全うするという意識であなたに近づきました。ですが、徐々にあの子はあなたに惹かれていき、最終的にはあなたに手が下せなくなる程までに執着していたんです。……あなただって、本当はわかっているでしょう?」
………………………。
……わかってるわかってないの前に、自分たちの恋愛を他人から語られるのは、相当気まずいもんなんだが。
「それなのに、別れた後も素っ気ない態度を取り続けるのは、どうかと思いますがね? ……あまつさえ、あの子と別れてすぐ、新しい彼女をつくったようですね」
……ん? 新しい彼女? 誰だそい、つ……
(202.229.178.6)
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56 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/24 06:54:55 o+50USATO
「……一つ確認したいんだが……その『新しい彼女』ってのは、ウェーブのかかった茶髪で、俺よりやや背の低い女のことか?」
「ええ、結界を張る前にあなたと一緒にいた、子供ではない方の女性です」
「……………………」
……ああ。
つまりこいつも、バカな勘違いをしてるってわけか。
こいつにはもう、彼女じゃなくて同僚だと説明しようか……いや、同じ制服を着ているのを見たわけだから、組織内恋愛だと思っているのか。
もう勝手にしてくれ。
「全く、あの子のことは遊びだったと言わんばかりの手の早さですね。堅そうに見えて、存外遊び人なんですか?」
「……あんたの目的はなんなんだ」
いわれのない非難を浴びている気分になって、俺も次第に苛立たしくなってくる。
「あんたは俺に何をしろというんだ? あいつとよりを戻せと? それとも悪かったと土下座すればいいのか」
「まあできれば、両方して頂ければ文句なしなんですがね」
深淵検死官は、妖しく笑う。というか、おまえはおまえらが破局してもいいのか。
「今あなたにして頂こうと思っているのは、一つだけですよ──検死対象になってください」
彼の言葉が終わるか終わらないかのうちに、机に長方形の白い光が四つ、現れた。一瞬の後にそれらは、白い面を表にしたカードとなる。
「……なんだ、これは」
俺の質問に、深淵検死官はあっさりと答えた。
「あなたの死因を決定するカードですよ。どれかひいて頂いて、そのカードに記されている死因通りに死んで頂くということで」
「……あぁ、そう」
そんな悪趣味なカード、誰がひくか!
……と言いたくなったのをこらえて、俺はカードに手を伸ばした。その動作を見て、深淵検死官が目を丸くする。
「おや、意外ですね。すんなり受け入れてもらえるとは思いませんでしたよ──正直な所、私も逆恨み気味な言いがかりだと思っていたので」
自覚していてくれたか。そりゃありがたい。
「どうせこれをひかない限り、事態は進展しないだろ。いつまでもあんたとここに居座り続けるわけにもいかないしな」
「とはいえ、普通はどんな人間でも、死に対する恐怖でなかなか手を出せないものなんですけどね……その恐怖におののく姿を見るのも、また格別なのですが」
最後の一言は聞かなかったことにしてやる。
俺は右端から二番目のカードに手を触れる。どうせどれを選んでも結果は同じだ。
ぱたん、とカードは、あっけなく裏返った。
(202.229.178.5)
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57 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/26 00:58:40 JA9cKu/gO
描かれていたのは──龍。
真正面を向き、こちらに向けて口をかっと開いている。こちらで言うドラゴンではなく、東洋の細い龍だ。その口腔は、紅く血にまみれている。
「おや、それをひき当てましたか」
にぃ、と深淵検死官は、口の両端をつり上げて微笑んだ。
と同時に、奴の背後に幾筋もの細い煙が、渦を巻いて現れる。その中に白い光が灯り、ゆっくりと球蹴りの球くらいの大きさにまで膨れあがった。その大きくなった丸い光は、今度は上方にうねりながら伸びていく。やがてその成長が止まると、丸太にのみを入れて木彫りの像にするように、光はなめらかにその姿を変えていった。
なるべきものにかたどられ、光が収まり、やがて現れたのは──カードに描かれていた龍だった。ただ、大きさは大蛇くらいで、東洋の神話に出てくるような巨大なものではない。そのサイズを忠実に再現しようとすると、この閉鎖空間を圧迫するからだろうか。
とはいえ──龍だ。ファイアブレスを吐くかもしれないし、鉤爪も相当鋭くできているようだ。それに、カードに描かれていた絵からも想像できるように、この龍は──
(124.146.174.35)
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58 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/26 01:01:35 JA9cKu/gO
「この子は見た目こそ小さいですが、人を殺すだけの力は十二分に持っていますよ。特に、人の心臓が好物のようで」
深淵検死官の台詞に呼応するように、龍が咆哮する。その叫びは、結界内に轟々ととどろいた。やはりこいつは、人を喰うらしい。
だが、心臓が好物とは──不幸中の幸いといったところだろうか。幸いと思いたくもないが。
「まあ、上の方からも、勧誘に応じない時は少々痛めつけてくるよう命じられているので……悪く思わないで下さいね?」
その言葉が終わるか終わらないか、それを判別する間もなく龍がこちらに向かって一直線に飛来した。
「うおっ!?」
……ああしまった、突然のことに思わず避けてしまった。そんな俺の姿を見て、深淵検死官は愉しそうにほくそ笑む。
「さあさあ、死にたくなければ頑張って逃げてくださいね。その龍一匹なら、なんとかなるかもしれませんよ?」
黙れ。運良くなんとかなったところで、どうせ次のカードをひかせるだけだろうが。
──それに俺は、もう逃げない。
こう言うとかっこいい響きがするが、実際はわりと無様なものだ。
「一つ、自慢にならないことを教えてやろう」
俺が避けたせいで、勢い余って俺を行き過ぎた龍が再びこちらを向く。その龍に改めて相対しながら、俺は深淵検死官の方を見ることなく、ほとんど独り言のように呟いた。
「恥ずかしながら、俺は結構死に慣れてんだ」
──龍が、飛来する。
さあ、覚悟を決めろ。ああは言ったが実際、死を目前にしてみると、吐き気がするほど身の毛がよだつ。だが、それをあいつに知られてはならない。それではあいつの思う壺だ。
龍が、口を開く。鋭い牙が見えた──
──衝撃!!
「────が……っ!」
脳内が、白くなる。視界に、いくつも、光がちる。すぎさって、いたみが、いタく……、イシき、が……なク……な……─────
──────────
(124.146.174.35)
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59 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/27 12:10:59 bb1wr/kpO
*
──青年は、どう、と倒れた。上半身にはぽっかりと大きな穴が穿たれ、夥しい量の血液が、みるみるうちに地に広がって行く。彼の身体を喰い破った龍は、その抉り取った部分を咀嚼していた。龍が一噛みするごとに、口から溢れた血が飛び散り、滴る。青年の死に様も龍の食事風景もおぞましいものだったが、深淵検死官は見慣れたものと動じることはなかった。
そう──彼の秀眉を僅かに寄らせていた原因は、それら死のむごさを想起させるものたちではなかった。
だいたい、龍も傷も幻なのだ。しばらくすれば消え失せる。……受けた痛みと恐怖は、青年の脳裏にしっかりと刻まれたはずだが。
いや、恐怖は果たして刻まれたのだろうか? 「死に慣れている」とうそぶいた彼は、死が飛び込んでくる際にも表情一つ変えなかった。鍛え抜かれた軍人でさえも、やはり恐怖を見せるか自棄になるか──なにかしらリアクションがあった。あのように平然としていた様は、見たことがないのだ。
(正直なところ──それほど面白くはありませんでしたね)
はぁ、と深淵検死官はため息をつく。この能力の使用において、ターゲットの死への恐怖を観覧しながら愉悦に浸るのが彼の道楽だ。これではあまり、道楽としての意味を成していなかった。
(124.146.175.232)
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60 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/27 12:11:49 bb1wr/kpO
(あの子が種明かしでも……しましたかね)
そう考えて、否、と深淵検死官は即座に否定した。 道楽をより楽しめるように、深淵検死官は最初の一回は、ターゲットにここでの死が仮想死であることを告げない。勿論、実際の死と寸分違わぬ仮想死であるが、それでも事前に幻であると悟られてしまうと、やはり死への恐怖が軽減されてしまうからだ。なので、初めて能力を使う相手への種明かしは、極力避けているのだった。
そして彼女はこの道楽に呆れてはいたが、今まで水を差したことはない。彼女は人の死に、わりと淡白なのだ。あの無限審問官の死にしても、現実でならともかく、今のような仮想死ならやや不機嫌にはなるだろうが、前もって彼に種明かしをするまでのことはしないだろう。
と、すると──やはり、死に慣れていたのだろうか。彼の言う『死に慣れる』環境というのがあまり把握できないのがだが、おそらくはこういった仮想死を何回か経験しているか、もしくは『彼女』、不在検死官の能力による不死身性の獲得に類似したものだろう。しかし、そう考えを結びつけたところで、仮想死とはいえ他人の死を散々見てきた深淵検死官にしても、『死に慣れる』という感覚は、全く理解できなかった。
(……ん?)
無限審問官をそれとなく眺めていた深淵検死官は、違和感に気づいた。無限審問官の上半身に穿たれた穴が、ふさがっている。
慌てて龍を見る。龍はまだ、咀嚼していた。おかしい。幻なのだから傷が消えるのは当然だが、それなら龍も、血だまりも、身体を貫通した時の服の穴も、全て同時に消えているはずだ。
深淵検死官が、まじまじと無限審問官を凝視していると──無限審問官が、ゆっくりと瞼を開いた。
(124.146.175.231)
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61 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/27 12:12:47 bb1wr/kpO
「……あー、死ぬかと思った……って、死んでたのか。まあいいや、ちゃんと蘇生できたし」
そうぼやきながら、彼は上半身を起こす。そして、龍を見つけて、顔をしかめた。
「うわ、まだいたのかよあいつ……あ」
咀嚼を終えた龍が、ふっと消え去る。同時に、無限審問官の破れた制服も、身体の下にあった血だまりも、元々なかったかのように消え去った。
その様子を見て、無限審問官は目を丸くする。
「あれ、いつもは服の破れや血までは消えないんだが……おい、もしかしてこれは幻覚の類いか」
ということは、やはり彼はこれが仮想死であることは、知らなかったのか。
そんなことを考えていたせいで、深淵検死官は返答が一瞬、遅れてしまった。
「……え、ええ、まあそんなところです。これでも結構、リアルにできていたかと思うんですけどね。どこかで違和感でも?」
いや、と無限審問官は、首を横に振る。
「完全に騙されてたな。情けない」
「いえいえ、とんでもない。あそこまで死に対し平然とされていた方は、初めてですよ」
「言っただろ、死に慣れてんだ。大概の死への心構えは、できていると自負している。……とはいえ、」
彼は、一度そこで言葉をきった。
「まあ完全に、平然としてもいられないがな。流石に身体を食い破られるなんてのは、今後二度と体験したくはないもんだ。全く、どうにもえげつない殺し方だな」
「お褒めに預り、光栄です」
にこやかに深淵検死官が言うと、やれやれと言わんばかりに、無限審問官は肩をすくめた。
(124.146.175.232)
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62 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/27 12:14:18 bb1wr/kpO
「いくら死に慣れてるとはいえ、一応これ以上死ぬのは御免被りたいんだが……そろそろ帰らせてもらえるか?」
「──その前に一つ」
深淵検死官は、すっと目を細める。
「その、『死に慣れている』という言葉ですが……どういう意味です?」
「……どうにもこうにも、そのままの意味だが」
まるでたいしたことはしていないかのように、深淵検死官はさらりと言う。
「というと、不死身性が会得できる能力でも?」
深淵検死官の問いに、無限審問官はまたしても否定を返した。
「いや、不死身性には近いかもしれないが、与えられる死は本物だ。だから、一歩間違えるとそのままお陀仏になりかねん」
「……成る程」
今一つ正確にはその言葉の真意をはかることはできなかったが、深淵検死官はとりあえず頷いた。自分に限らず、能力者というのはどうせ自らの能力を秘匿したがるものなのだ、これ以上追及したところで収穫はないだろう。もう一度死を与えて口を割らせるという手もあるにはあったが、あの死に動じない姿から察するに、おそらく彼には無意味だろう。
「わかりました──では一応、私の使命も果たしたということで、今日はこのあたりでお開きにするとしましょう。では、またいずれお会いする日まで」
「……できれば俺は、あんたとはこれ以降、あまり会いたくないけどな」
無限審問官のげっそりとした表情に、嫌われたものですね、と苦笑しながら、深淵検死官は黒い結界を消し去った。そして、
「…………っ!?」
驚愕にその目を、見開いた。
(124.146.175.232)
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63 :
鈴の小道1/9◆vLYx.hjvdE
投稿日:11/03/01 14:31:45 ???
皆さんの小説を読んでいたら、私めもなんだかムラムラしてきてしまったので、書かせていただきました。大量にスレお借りします…。
◆◇
来月の今日に6回目の結婚記念日を控えていた。爽やかな朝を迎えた俺がプランを練りながらリビングに行くと、女房に開口一番、
「ここに判を押して」
と離婚届をつきつけられた。確かに最近は夫婦会議が多かった。離婚の言葉が飛び出たりもした。しかしそこまで真剣に離婚を検討しての話し合いだったとは。まだ夢見てんのかと現実逃避する隙すら与えられず、話し合いの場を設けることも許されず、俺はもう11時には独り身になってしまっていた。
理由を訊ねると、目も合わせず一言だけ元女房が告げた。
「あなたの親切が全部迷惑」
来週で37になる男が、思わず涙ぐむほどに冷たい言葉だった。
その後の俺は酒を飲む気にもなれず、ふらふらと町を歩いていた。入ったことのない路地を見つけては入り、見たことのない場所に出ては無理にはしゃぎ、気づけば夜の店が開く大人の時間になっていた。
遊ぶ金も無く、タバコも残り少ない。もう帰ろうかという考えが浮かんだが、誰もいないがらんどうの家に戻る気にはなれなかった。
「…歩くか」
今夜一晩、気が済むまで歩くことにしよう。膝が笑うまで歩いて、睡眠不足と疲労で頭が動かなくなってから帰ろう。そうすればきっと寂しさも虚しさも感じずに済むだろうから。吸殻を携帯灰皿に入れ、俺は出来るだけライトから遠ざかるように歩いた。左手の薬指が、今日は随分軽かった。
(121.111.231.30)
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64 :
鈴の小道2/9◆vLYx.hjvdE
投稿日:11/03/01 14:35:46 ???
◇
廃墟と化したビル群。もともとビジネス街だったのだが、不況が重なり今はもぬけの殻になっている。チンピラも集まらないほど不気味なここは、家からそう遠くない場所のはずだ。俺はどうやら大きく一周してきたらしい。
「鳩レースに出られるかもな」
と下らないことを呟く俺の目に、暗闇で小さく光る物が映った。
「ちぎれたのかな?」
手のひら大の鈴。振ってみると太くて低い、心地よい音色が響いた。いい鈴だ、きっと持ち主も探しているだろう。辺りを見回すと、同じような鈴が転々と、あるビルに沿って転がっている。ふむ、と考える。このようなシチュエーションはそうあるものではない。迷わないように鈴を落とした?いやその線は薄い。人のいなくなったビル群というのは、意外とすっきりしていて迷いにくいものだ。ならば、これは?
謎の気配だ、なんて、どこかの探偵のような気分で鈴を拾っていく。よく見ると、鈴には文字が刻まれていた。もしかしたらこれは誰かからのメッセージかもしれない。しっかりと読み取らなければ。さっきの鈴には「γ」、これには「δ」。何だか楽しくなってきた。一体何を意味して…!
いや、と急に冷静な思考が呟く。
(現場の保全のために、そのままにしておいた方がよかったのでは。)
5つ目を拾ったところでそう思い至って呆然と立ち尽くした先に、人影が見えた。
「もう真夜中だぞ…」
現在午前1時。よい子も悪い子も寝る時間だ。おっさんはともかく、あの人影はどう見ても少女のもの。大人として放っては置けない。鈴をポケットにしまって影を追いかける。と、足音と鈴の音ですぐに気付いたらしい。振り返ったのは、やはり14,5の少女だった。
(121.111.231.28)
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65 :
鈴の小道3/9◆vLYx.hjvdE
投稿日:11/03/01 14:37:36 ???
◇
「おい、お嬢ちゃん、家出か?」
少女はまさに驚愕、といった様子で目を見開いた。まあこんな時間のこんな場所だ、お互い人がいるとは思っていなかった。とりあえず思い付いたから「家出か」と言ってみたが、荷物は少なく、家出できるほどではない。それでは、と俺が口を開くより早く少女が言葉を発した。
「それ…」
「ん?」
少女は俺のポケットを指差している。ああ、鈴でパンパンになっていたのだった。
「あ、これもしかしてお前さんのか?」
鈴を取り出して彼女に見せると、そのまま固まってしまった。傷をつけてしまったか、と鈴を確認したが、特に傷は見あたらない。
「…置いて」
「へ?」
唇が震えている。何かを喋ったようだが、どうも聞き取りにくい。彼女は大きく息を吸った。
「それは、置いて、おいた、の」
「おいておいた?」
尻すぼみだったが何とか聞こえた。それ、とは鈴のことだろう。鈴を置いておいた、ということは、なるほどつまり。
「…拾っちゃ、駄目だった…か?」
「…」
怒りをこめた目で睨んでくる。女房の言ったことは正しい。俺の親切は大きなお世話なのだ。これは特殊なケースだが、何かを拾うときはまず誰かを探して聞いてからにすべきだと心に刻む。
そういえば独身の時(今も独身であるが)、何人かと付き合ったが、別れを切り出すのはいつも彼女からだった。そして皆決まって「私の気持ちを全然わかってくれない」と言って去っていく。その度俺は次こそは、と意気込むのだが、どうも俺の思考はズレていて、全てが裏目に出るらしい。伴侶に愛想を尽かされるのならば相当だ。もう誰かに相談した方がいいのかもしれない。
「悪かった。落とし物かと思ってな。元の場所に…」
「いい。私が置かない、と、駄目だから…」
「…すまん」
「…」
今、俺も自分と離婚したい気持ちでいっぱいだった。
(121.111.231.25)
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66 :
鈴の小道4/9◆vLYx.hjvdE
投稿日:11/03/01 14:39:26 ???
◇
彼女は鈴をしまって、元の道を戻り始めた。はじめからやり直すのだろう。
「本当にすまなかった」
「…いい。私の、油断」
そう言う彼女は妙に大人びていた。こんな顔した子供は大体が能力者で、ある日大怪我をするタイプだ。成長途中の能力者が一度は通る道ではあるのだが。
「えーっと、名前は?」
「…コズミ」
コズミ。どこかで聞いたような気がする名前だが、思い出せない。結婚する前にいた部署だったような…。あいつは、話していたのは誰だったか…。
いいや、今は置いておこう。まずはコズミ本人のことだ。能力者かどうかは置いておいて、こういうタイプは適度に子供扱いをして、人に頼ることを覚えさせねば。
「なあ、こんな時間にどうしたんだ?この辺は危ないから、もし迷ってんならおじさん…」
「仕事、してるの」
邪魔だ、とはっきり言われたような気がした。実際邪魔をしてしまったのだが、こんな時間に仕事とは、随分人使いが荒い職場だ。
「仕事な…」
「…」
突き刺さる無言。のしかかる非難の空気。限界だ。今のメンタル状態では耐えきれない。双方にとっていい選択だと信じて、この場から一時撤退だ。ああ、まだまだ俺は考えが浅い。そもそも初めて会ったおっさんなぞと話したいとは思わないだろう。それなのに頼るなんてするはずもないのに、一体何を考えているんだ。
何か撤退のいい理由を考えよう。そうだ、確かこの辺りにも自動販売機があった。
「あー、詫びと労いを兼ねて何か飲み物買ってくるわ。何がいい?」
「…コーラ」
雰囲気に似合わずと言っては失礼だが、意外な選択だ。ともあれ今の"親切"はよかったみたいだ。こういう小さな成功を積み重ねていこう。
「コーラな。わかった」
こくりとうなずいた頭がかわいかったから、調子に乗って撫でたら手を払われてしまった。だから俺は駄目なんだ。また泣きそうになってしまった。
(121.111.231.34)
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67 :
鈴の小道5/9◆vLYx.hjvdE
投稿日:11/03/01 14:41:30 ???
◇
走り回って、3台目の自動販売機をようやくみつけた。あそこから少し離れた所の物で、これはちゃんと運転中のようで安心した。廃墟になったビジネス街にある自動販売機の、どれもが正しく業務をこなしていると思っていた俺の考えの甘さにすっかり失望していたところだ。
「俺はココアでも飲むか…」
腹も空いたし、ここらで糖分を補給しておこう。コズミの名前をどこで聞いたのかも思い出したい。
コズミ、コズミ。確か、あれは俺が異動になった時だ。後始末係に新人が来たのだと、それも…。
「9歳だったか?」
異動した年だから、8年前のことだ。ああ、そういえば静子が、かわいい後輩ができたと言っていた。もしかしたらコズミは同じ会社かもしれない。
早足でさっきのビルに戻る。走ると炭酸は爆弾になるから慎重に、しかし速く。
「コズミ…うーん」
能力者ならばあの鈴も関係しているだろう。説明も聞いたはずだが、どうも思い出せない。本人に直接訊ねた方がいいだろうか。しかし勘違いで俺の正体をばらして、もしライバル会社だったりしたら…。そもそも能力者などではなく、「仕事」なんて言って、ただの夜更かし少女だという可能性だって充分残っている…。
悩んでいた俺の耳に、高く澄んだ鈴の音が届いた。そして一瞬、すぐそこにあったビルを黒い壁が囲ったと思ったら、もうビルは存在していなかった。
「…遅い」
コズミの声が真後ろから聞こえた。実戦から遠のいていたせいで、すっかり感覚が鈍ってしまったようだ。
悪い、と言おうと振り返った俺の目には、全てがゆっくり映っていた。コズミの手から、鈴が落ちて。俺のまわりに、あと一つ、すずが、もうじめ、んに、あいつ、わらいやが て
(121.111.231.103)
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68 :
鈴の小道6/9◆vLYx.hjvdE
投稿日:11/03/01 14:45:46 ???
◇
「何すんだいきなり。あれか?まだ怒ってんのか?」
「!」
バッとコズミがこちらを振り返る。驚愕その二だ。さっきまで俺がいた所は、アスファルトごと消えていた。なるほど、口封じか。
「ほい、コーラ」
「…なんで」
俺があの絶望的な状況からどうやって逃げたのか分からないという表情だ。体の震えを必死でおさえている。恐怖しているのか、このさえない俺なんかに。
「何でってなあ、俺が聞きたいけど…まあいいや」
しかし別にコズミを恐怖のどん底に突き落としたいわけではないので、茶化して張り詰めた空気を弛ませる。
「大丈夫だって。俺も一緒だ。お前と同じ会社の」
「え…」
「部署は違うけどな」
そういって襟の下の社章を見せる。会社、とは組織のことだ。一般人やスパイがいる外で、気軽に組織の名前を出すことはできない。
「…そうな、の」
「そう、まあ口封じしたくなる任務内容だったんだろ?自己紹介もしなかったし、全面的に俺が悪いから気にすんな」
「あの…ごめ」
「いいって。…そう、お前のことなかなか思い出せなくって、やっとさっき思い出したんだよ。静子の後輩だよな?」
「しずこ?」
「ああ、滅亡理論(サイレントチルドレン)を乱暴に略して静子。あいつは嫌がってたけどな」
「…サイレン、て、呼んでる」
俺が声を潜めて話すと、コズミもそれにならった。ミミアリーとメアリーに聞かれたらコトだから。
(121.111.231.30)
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69 :
鈴の小道7/9◆vLYx.hjvdE
投稿日:11/03/01 14:47:48 ???
◇
あのビルの消え方と、さっきの襲撃でばっちり思い出した。大抵十代後半からつくはずの任務に9歳でつくのは異例だと随分話題になっていたのに、なかなか思い出せなかったとは。
「年かー」
「なに」
「いや、なんでも」
複雑な顔をしているコズミに、汗をかきはじめているコーラを押し付けて、もう一度声を潜める。
「お前、黒猫幾何(コズミックダークネス)のコズミだろ?お前が来たとき随分話題になっててな」
「…そうなの」
「そう」
黒猫幾何は夜しか使えないが、証拠隠滅などを担当する班でも中々便利な能力と聞いていた。あの高さのビルでも一瞬で消してしまったし、ガセではなかったらしい。
「そうかー、…ん?8年前だから、じゃあお前17になんのか?結構…」
「なに。…結構、何」
あれに加えて無神経であったなら、俺は誰かに罰してもらわなければいけないところだった。寸でのところでコズミに止めてもらって助かった。今のはセーフだ。
「いや、コーラ飲めよ。冷えてるうちに」
「…」
話題を逸らそうとコーラを奨めたのだが、コズミは俺に視線を向けたままだった。
「…なまえ」
「へ?」
「なま、え、聞い、てない」
「おっと」
そうだった、そういえば。また自己紹介を忘れるところだった。
「俺は魍魎預言者(アノニマスリベリオン)。まっさんって呼んでくれ」
「まっさん…」
何度かまっさんと呟いて、コズミは俯いた。コーラのキャップを弄りながら、何かを言おうとしてはやめ、を繰り返す。そしてゆっくり顔を上げて、やっと口を開いた。両手に力を込めて、勇気を振り絞る。
「あの、まっさん、さっき、はごめ、ごめ」
そして、開いたキャップからコーラが吹き出した。
(121.111.231.103)
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70 :
鈴の小道8/9◆vLYx.hjvdE
投稿日:11/03/01 14:56:43 ???
◇
「まっさん!久しぶり。戻ってくんの本当だったのか」
「おう、静子。元気か」
「それやめろって」
今日、8年ぶりに元の部署に戻ってきた。また前線でこき使われるらしい。見回すと、8年前とあまり変わらない面々が揃っていた。皆お互いに懐かしがっている。
「また上が色々計画してるらしいぜ」
「ほー。まあ、会社員はただ言われたお仕事をこなすだけだな」
「そうだなって、まっさん」
「ん?」
静子がずいっと紙袋を押し付けてきた。中身は…服?
「今日も任務のコズミから。班のかわいい妹分なんだから、おっさんのまっさんは手ぇ出すなよ」
「はあ?コーラまみれで放っとけるかって」
おそらく早足で戻った時も、能力を使ってコズミの背後に移動した時も振ってしまっていたのだろう。あの後コーラを頭からかぶったコズミを家に上げて、シャワーと服を貸したのだった。コズミが着ていた服も洗ったのだが、家には乾燥機がなく、コズミは次の任務のために待つ時間もなく、適当な服を渡すことにした。
もう俺は罰を受けるべきだろうか。コズミはそう苦悩している俺の横を抜け、どもりながら何度も礼を言い、乾いていない服をビニールに詰めてまた任務へと旅立っていった。
「第一よ、17歳って20も離れてんだぞ。ほとんど娘の感覚だよ」
「はあー。まっさん、俺ため息しかでないよ。それでも独身?コズミはだめだけど、もっとやる気だせよ」
俺が離婚したことは誰にも言っていないのに、もう知れ渡っているらしい。静子は俺を心底バカにしたような目で見ながら何か箱を投げつけてきた。
(121.111.231.23)
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71 :
鈴の小道9/9◆vLYx.hjvdE
投稿日:11/03/01 15:00:38 ???
◇
「何だこれ」
「まだ先だけど誕生日おめでとう。お菓子の詰め合わせあげちゃうよ」
「おいテメークッキー割れたじゃねーか」
「胃に入れば一緒だ。でね、これだけじゃないわけよ」
「まだなんかくれんのか」
「ああ、俺じゃないけどね。いや、俺もある意味あげるっていうか、許す?まあ5日後の誕生日楽しみにしててよ」
「意味わかんねー。楽しみにしとくけど」
静子のサプライズ好きは健在のようだ。にやにやしながら自分の仕事場に戻っていく。大きくなった背中を見送って、手元の紙袋に視線を戻す。中には服と、直接渡せなかったことへの謝罪などが書かれた手紙。そして、下の方に任務先の土産物が入っていた。
「律儀だなあ」
詫びなければならないのは俺の方だというのに。どうも彼女の気持ちは礼より詫びの方が多いような気もするが、素直に受け取っておこう。そして俺も何か詫びの品を買っておかなければ。なかなか彼女に会えず、菓子折りをひとつ駄目にしたところだ。
17歳なら何が欲しいだろうか。コズミの笑った顔も見てみたかったから、近くにいた女性の同僚に相談する。すると事の顛末まで話すことになってしまい、彼女は一人盛り上り、
「まかせて!プレゼント選び手伝うから!」
と実に頼もしいことを言ってくれた。早速明日プレゼントもとい詫びの品を買いに行くことになったから、後で静子にコズミがいる日を聞いておこう。
離婚されるほどに駄目な俺だが、少しずつ、少しずつ矯正していこう。誰かのために行動するときは、まず誰かに相談して、ちょっと世話も焼いてもらって、そうやって正しい「いいこと」を覚えていこう。とりあえず今は、コズミへの正しい詫びの品選びからだ。
ミーティングに呼ばれて、俺は晴れやかな気分で会議室にむかった。
◆◇
拙く糞長い文の連投、本当にすみませんでした。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!
(121.111.231.21)
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72 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 04:59:44 TsTNbbBIO
*
「ここ、は……」
さしもの深淵検死官も驚いているようだが、まあ当然だろう。
彼は自分の結界を解除したらしいが、辺りは未だに黒いドームで囲われていた。ただ、さっきまでとは違うことに、机がなくなっている。足下には昇華したドライアイスのように、白い煙がうっすらと漂っており、更に俺たちを取り囲むようにドームの内壁に添って、黒と白、二匹の巨大な蛇が、互いの尾を噛んで輪になっていた。そのサイズは先ほどの龍とは比べ物にならず、胴の高さだけでおよそ一軒家ほどはある。二匹の蛇の口からは、シューシューと息が漏れていた。その息は普通の息ではなく、瘴気だ。ゆっくりと降りて地表の煙と同化し、俺以外の人間をじわじわとその毒で追い詰める。
ここは、俺の張った結界内──だった。
良かった良かった、どうなったもんかとひやひやしていたが、上手いこといっていたようだ。
「これは……、どういう……」
深淵検死官の言葉が、途切れ途切れになっている。どうやら毒が効いてきたようだ。早めに話を終わらせてやらないとな。
(124.146.174.75)
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73 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:00:33 TsTNbbBIO
「あんたが結界を張った時、同時に俺もこの結界を張ったんだ。どちらか一方が消えないよう、結界を閉じるタイミングも合わせてな」
──深淵検死官の背後に結界の始動部である黒い線が現れたあの時、俺はその黒い線のそのまた後ろに俺の結界の始動部を置いていた。そして深淵検死官の目には映らないように、彼の結界が張られる速度より、自分の結界を張る速度を僅かに遅くして、閉じきる寸前に再び速度を上げ、奴の結界と同時に自分の結界を完成させたのだ。
俺の結界があいつの結界よりも早く完成すれば、既存の結界内に別の結界を築くことはできないから、あいつの結界は不発に終わる。逆にあいつの結界が先に完成してしまえば、こちらの能力を無効化されてしまう恐れがあり、そうなった場合俺の結界は、作成途中キャンセルされてしまう。だから──同時。
そんなことが、とでも言いたげな顔で深淵検死官は俺を見るが、まあ、できた結果がこれなんだから、そこらへんは納得してもらう他ないだろう。ともかく、彼が結界の始動部を、自分の背後に置いてくれて幸いだった。俺の背後だと、見えないからうまくタイミングを合わせられるかどうかわからなかったしな。
とはいえ──どんな能力を使うのかと思って一応奴の結界も完成させはしたが、こうやってぶっ殺されるならさっさと自分の結界を完成させて、奴の結界を無効にしておけば良かったと思う。
……まあ、まだ心臓喰われて一瞬で死ねた分、ましだったとは言えるけどな。爪先からじりじり刻まれていくとかいう殺され方だったら、流石に俺でも発狂してた。というか助からなかった。ドSとか聞かされてたから、本当にそうならないか心配した。
(124.146.174.75)
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74 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:01:27 TsTNbbBIO
「さて……死ぬ気分は、どんなものだ?」
……おお、我ながら残虐な殺人者のようだ。端から見れば、どちらが嗜虐者かわからないかもしれない。が、一応ここは、先達からの単なる質問と思ってほしい。俺自身、何回か死んだことがあるのだから。
俺の問いに、深淵検死官は顔を歪めた。多分あれは、笑っているのだろう。
「『人を、殺したくない』、というのは……方便、ですか……」
「殺したくはないのは事実──いや、『殺したくない』ってのはちょっと語弊があるか」
確かに、殺すには殺すわけだし。
仕方ない、この空間のからくりを教えてやるか。俺はこいつほど、意地は悪くはないんだ。
「この空間内では誰もが、死んだとしても蘇生する。──ちょうど、さっきの俺のようにな」
あぁ、と深淵検死官の口から、ため息のように息がこぼれた。既に両膝は地面についており、顔色も悪い。
「だから、『殺したくない』というよりは、正確には『生きて帰してやりたい』ってところだな。まあだから安心しろ、一度死んだところであんたもどうせ生き返るんだから」
『ウロボロス』──尾を飲み込む蛇。そこには、循環性や無限性、完全性など様々な象徴的意味がある。永続性もその一つで、代表的なものは円運動、破壊と創造、そして──『死と再生』。ウロボロスに限らず、脱皮を繰り返すことや強い生命力から、昔から蛇は『不老不死』、『死と再生』の象徴とされる。
その象徴が反映されているのが、この能力だ。この能力の使い手である俺は無条件で蘇生するし、死んですぐに結界を解除でもしない限り、相手も甦る。
(124.146.174.76)
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75 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:02:41 TsTNbbBIO
深淵検死官の能力も、ある意味では死と再生の繰り返しと言えるだろう。あいつは死の手段が豊富にある分、死は仮想のものだが、俺は瘴気でしか殺せない分、実際の死を与える。
また一部の宗教では、ウロボロスは物質世界の限界を象徴するものとされている。これは、その環状の姿が内側と外側とを生み出し、そこに境界があるととらえたかららしい。なので、深淵検死官にしろ俺にしろ、結界を使用する能力なのは、それもあるのだろう。
斯くして、深淵検死官はこの結界内で、死と再生を味わうこととなった。ふふ、と彼は、声を立てて嗤う。
「迂闊、でしたね……今まで、そのように『殺された』、方は、うちの組織に……いなかった……ようで、すし……」
「……まあ、状況が状況だったからな」
最初に囲まれた時は多人数だったし、俺も傷を負って疲弊し、さっさと切り上げたかったから、殺して蘇生までさせている余裕はなかった。蘇生するとは言っても致命傷、死の原因が回復するだけで、それ以前に受けた傷までは治癒できないのだ。先刻受けた『死』は、うまく蘇生することのできる死に方だったと言えるだろう。
あの女が俺を欺いていたことを告げにきた奴の時は……一刻も早くその場を立ち去りたかったから、昏倒させるだけにとどめた。
今回、俺の方で打ち切る理由は、ない。……それに、
「それに……俺はあまり、心が広くないんだ」
なにを、と深淵検死官の口が動く。何を言っているんですか、といったところだろうか。
(124.146.174.75)
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76 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:03:25 TsTNbbBIO
「仮想死とはいえ、一度自分を殺した相手を、のうのうと返す気にはとてもなれなくてな」
俺の台詞と共に、黒蛇の立てるシューシューという息づかいが、更に強くなった。
瘴気を吐いているのは、あの黒だ。白は瘴気の毒を中和させる息を吐いており、この二匹のバランスで毒の侵攻を早めたり遅めたりすることができる。今、黒の吐く瘴気が強まったことで、あの男の身体にはより毒が回ったことだろう。深淵検死官の顔には、幾筋もの脂汗が流れている。
「『人の痛みがわかるような人間になりなさい』……って、幼い頃に教わらなかったか? 良かったな、これであんたも、服毒死って死に方だけではあるが、死のつらさがわかるようになっただろ」
……まあ、自分でこうは言ってはいるが、とても良かったとは思えないだろう。実際、もう余裕を保てなくなったのか、深淵検死官はぎりぎりと歯をくいしばっている。
「それに、あんたも俺も『ウロボロス』だろ」
黒の、シューシューと息を立てる音が、一層強くなる。俺は、黒と白を指すように片手を真横にまっすぐ上げ、言った。
「蛇は、共食いするもんだ」
一方的には──喰われない。
どさり、と深淵検死官の身体が、糸の切れた操り人形のようにくずれ落ちた。果たして彼に今の言葉は、聞こえていたのか、いなかったのか。
「……どうでもいいか」
手を降ろして、ほっと息をつく。深淵検死官が目を覚ますまでには、もう少し時間がかかりそうだった。
(124.146.174.76)
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77 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:04:09 TsTNbbBIO
*
どちらが先か──と思っていたのだが、深淵検死官が目覚める方が早かった。
「………………ん」
むくり、と深淵検死官が、身体を起こす。そのまま座り込んで一息ついた彼の顔は、まだ少し青ざめていた。その顔のまま、俺を見る。
「……おはようございます」
「ん? ああ、おはようさん」
……なんだこの間抜けな会話は。
あの男、寝起き……いや、死起き? のせいか、まだ頭が機能していないのだろうか。思わず挨拶を返してしまった俺も俺だが。
深淵検死官は、辺りをきょろきょろと眺め、状況を再確認したかのように頷いた。
「えーっと、確か死んでいたんですね。私は」
「まあな」
甦りおめでとう。ついでに人格も更生されてりゃいいんだが。
「死んだ気分は、どうだった?」
先程回答が得られなかった質問を、微妙に言い換えて再び訊く。しかし、さっきの訊き方だと嗜虐殺人鬼の香りがするのに、今度の訊き方だと「はい今おまえは生まれ変わった! 一から人生やり直せるだろ!?」みたいな、熱血爽やかな印象を受けるのは何故だろうか。
深淵検死官は、何故かとてもいい笑顔で答えた。
「ええ、最悪の気分ですね。ですが、服毒死だけでもこれだけつらいのですから、他の死に方では一層つらいでしょうね。俄然、これからの仕事が楽しみになってきました」
…………………………。
やる気、というか、殺る気にさせてしまった……。
……うん、こいつとはもう、関わらないでおこう。
(124.146.174.76)
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78 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:05:17 TsTNbbBIO
「さて……では、今度こそ、お互いの用は済んだということで宜しいでしょうか?」
深淵検死官の確認に、俺は一瞬、言葉に詰まる。確かに、俺の用事も、あいつの用事も、し終えてはいるのだが……。
……まあ、別にいいか。どうせこれは私闘のようなものだし、来ないなら来ないで、俺はそれで構わないし。
そう思って、俺が口を開いた時だった。
「──待たせたわね」
俺の右隣に、女の姿が。
「えりーちゃん参上なんだよ」
俺の左隣に、少女の姿が。
どこからともなく──顕現した。
「この期に及んで三対一とは……いささか卑怯ではありませんか?」
すねたように、深淵検死官は言う。何言ってんだこいつ。
「以前、多人数で俺を取り囲んでくれた連中と同じ組織の奴が、よくいけしゃあしゃあとそんなことを言えるな」
「だってあれ、私じゃありませんし」
平然とした顔で、ぬけぬけと奴はそう答えた。罷り通ると思ってんのか、そんな理屈が。
……しかし、これ以上言っても無駄な気がしたので、俺は奴の認識の訂正に移ることにした。
「一応言っておくが、俺は本当におまえへの用事は済んだからな。ただ、こいつらがあんたを追撃したいってことなら、止める義理は」
「あら、もう終わってたの?」
「えーつまんなーい」
俺の台詞を遮って、両隣から軽い驚きと不満の声が上がる。
不服そうに口をへの字にするエリーとは対照的に、ローラは片手を軽く振って、あっさりと言った。
(124.146.174.76)
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79 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:06:29 TsTNbbBIO
「じゃ、あたし別にいいわ。うろちゃんに加勢しようかなーって思ってただけだし」
「加勢しようか考えてたわりには、随分時間がかかったんだな」
深淵検死官の結界が張られていた間は仕方がないが、俺の結界だけになればローラとエリーは出入りできるよう設定してある(瘴気にもあてられないようにしてある)ので、すぐにでも入れるはずなのだが。
まーね、とローラは首肯した。
「結界に入れなくて、どうやって暇を潰そうかと思ってたら、近くに美味しいチーズケーキのお店があったからそこに寄ってたのよ。食べ終わっても結界解除されてないし、苦戦してるのかなと思って確認してみたら、入れるようになってたから一応来てみたんだけど」
「おいしかったから、あとでうろにーにもおごらせてあげるんだよ!」
……さようでございますか。
一瞬でも心配してくれていやしないかと期待していた俺がバカだった。
俺はもう、投げ遣り気味二人に確認する。
「……じゃあおまえら、あいつに対してこれ以上何かしたいってのはないんだな。やるなら今のうちだぞ」
「無理矢理焚きつけるのはどうかと思いますよ?」
黙れ。
「というか、チーズケーキをもう一個食べたいんだけど」
黙れ。
「うろにーのへたれてるところが見れなくてつまんない!」
……黙ってくれ。
ああ、真面目な回答をする奴がいなくなってしまった……
……というか、元からいなかった。
「わかったわかった、じゃあ帰……」
そこまで口に出して、はたと俺は気がつく。
今なら、あの面倒な誤解を解けるんじゃないだろうか?
(124.146.174.76)
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80 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:07:08 TsTNbbBIO
「……そういえば、深淵検死官さんよ」
「なんでしょう」
小首をかしげる彼に、俺はローラを指し示す。
「あんたはこいつを俺の彼女だと思ってるようだが、それは大きな間違」
いだ、まで言う前に、目を輝かせたローラが台詞に割り込んできた。
「え、なにそれなにそれ、あたしがうろちゃんの彼女!? それすっごく面白いんだけど、うろちゃんそういうことでいいの?」
「いいわけあるかぁぁぁ!」
なんでこいつ、こんなに食いついてくるんだ!
被害をこうむるのは俺なんだよ!
「ねーねーうろちゃん、彼氏になったら当然貢いでくれるわよね? 服も食べ物も、ブランド物買い放題よね!?」
「あ、ろーら姉ずーるーいー! あたしもうろにーをかれしにするー!」
「お子様は黙っときなさい、これは大人の問題よ? うろちゃんをロリコンにはさせないわ」
「ざんねんでしたー、年の差なんてあいのまえではむいみなんだよ!」
「おまえら俺の人権はなしか!」
それは最早彼氏とも恋愛とも言わねェよ!
全然嬉しくない逆ハーレムだわ!
「……随分と仲がいいんですね」
やや呆れ気味の深淵検死官の言葉に、俺たちはバカ騒ぎを中断する。
最初に口を開いたのは、ローラだった。
(124.146.174.75)
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81 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:08:07 TsTNbbBIO
「そりゃあね、同じチームの仲間ですもの。どこかの陰湿な組織は知らないけど、うちの組織はみんな和気藹々なのよ。そこんとこ、しっかり上司に伝えておいてちょうだい」
「……了解しました」
深淵検死官は、苦笑する。
「では、あなたと彼は別に恋人同士ではない、と?」
「あらあら、冗談と本気の区別もつかないの?」
ローラは妖艶に、挑発的に微笑んで、深淵検死官を見返す。
「あたしみたいないい女が、こんな坊や、相手にするわけないでしょ? 結構理想高いのよ、あたし」
力のこもった両眼で見据え、両腕を組んで斜に構え。
「あたしとこの子が付き合ってるなんて、あり得ないわ」
はっきりと、そう言いきった。
深淵検死官はしばらく呆然としていたが、やがて頭を下げた。
「そうですか、これは失礼しました。どうやら私の勘違いだったようで」
「わかればいいのよ」
挑むような不敵な微笑みから一転、ローラはにこやかな笑顔を浮かべた。
(124.146.174.75)
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82 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:08:59 TsTNbbBIO
「あ、じゃああたしがうろにーをかれしにして、みつがせることができるんだね!」
「黙りなさい、それとこれとは話が別よ」
喜ぶエリーに、ぴしゃりと言い放つローラ。……そうか、どちらにせよ俺は貢がせる対象なんだな……
「ろーら姉ばっかずるいよぅ……うろにーはへたれだし、かくなる上はおにーさんでうさばらしするからね!」
むぅ、と口を尖らせて、エリーは深淵検死官に、びしっと人さし指をつきつける。その前に、俺がへたれだという認識を改めてほしい。
「ええいいですよ、なんでしょう」
人のいい笑顔で対応する深淵検死官だが、あれはただの笑顔ではない。
俗に言う、『営業スマイル』という奴だ。しかも終業間際の奴。「もうそろそろ面倒になってきたから早く帰らせろ」オーラが溢れている。……まあ能力者とはいえ、エリーは子供だからな。話の内容も内容だし、あまり真剣味がないのだろう。
だが彼女の能力を知っている俺は、何を言い出すのかと背筋が寒くなる。一歩間違えたらあの女、死ぬんじゃないだろうか。
深淵検死官に指をつきつけたまま、エリーはこう言い放った。
「なんでうろにーをしゅうげきしたか、あらいざらいはくんだよ! 早く正直に言わないと、おにーさんと仲のいい人たちが死んでっちゃうからね! じゃあこたえてね、じゅうー、きゅー、はちー」
(124.146.174.75)
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83 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:10:10 TsTNbbBIO
*
──数日後、非番になったので俺は一人で街へと出かけた。すると、十分も歩かないうちに、あいつに声をかけられた。
「こんにちは。お元気そうで、何よりね」
振り返ると、あの女が微笑んで立っていた。今日も桃色の衛生服で、髪を下ろしている。
……ああ、そういえばこいつに一つ、文句を言ってやろうと思っていたんだった。
「この間はうちのウロボロスがお邪魔しました」
「そのことなんだがな」
艶然と微笑む彼女に、俺は小言を言う。
「おまえ、俺のことを騙してただろ」
「あら、なにが?」
「すっとぼけるな。あの男、おまえの彼氏じゃなくて兄貴だろうが」
──深淵検死官が、エリーの質問に答えた時だ。
彼はまず、俺を聖検死団に引き抜きにきたことを説明した。そこまではいい。
だが二番目の理由として、よりにもよって奴は「妹がたぶらかされたので」などと言ってのけたのだ。たぶかしたのはどっちだよく考えろ、って待てあいつはおまえの妹なのか、ええあの子はまぎれもなく私の肉親であり妹ですがという会話の後、ローラとエリーの冷たい視線が俺に突き刺さった。……なんで身内を信じようとしないんだおまえらは。だが帰り道、一言も俺と口をきこうとしなかったので、何かを奢らされる危機はなくなった。
俺の文句を聞いても、彼女は動じることなく答えを返す。
「あたし、『いい男』とは言ったけど、深淵検死官があたしの彼氏だなんて、一度も言った覚えはないわよ?」
…………え?
(124.146.174.75)
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84 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:16:45 TsTNbbBIO
「いや……でも、惚れてるとかなんとか」
「『でれでれ』だとは言ったけどね、あの兄貴シスコンだし。あ、もしかして嫉妬してくれてた? やだーすっごくうれしー」
実に楽しそうに喜ぶ彼女とは裏腹に、がっくりと俺は肩を落とす。……なんか……疲れた……
「……シスコンだとは思わなかった……」
「そうなのよ、あの兄貴ああ見えてシスコンなのよねー。今回みたいにあたしが落ち込んでたりしたら、その原因の人間とっ捕まえて、誰彼構わず検死する人だし」
……あの行動は、ほとんどシスコンから来ていたのか……
敵がシスコンというだけで、あんな臨死体験はしたくない。
「……いや、ちょっと待て。じゃあ、あのまま俺とおまえが付き合ってたら、」
恐ろしい未来を、あっさりと彼女は告げる。
「ん? ああそうね、結婚してたらあの人があなたのお義兄さんってことになってたわね」
最悪だ! あんな義兄は絶対嫌だ! こういう理由で言うのは本当に悪いと思うが、正直別れて良かった!
青ざめた俺を見て、彼女は苦笑する。
「ま、絶対嫌になるわよね。あーもー、あんな兄貴がいるからあたしはいい恋愛ができないのよ! 可愛がってくれるのは嬉しいけど、ほんとたまにうざい! いっそあなたがぶっ殺してくれたら良かったのに!」
……おい、おまえも兄貴を亡き者にする為に、俺を利用したんじゃないだろうな。
だが、彼女は穏やかな笑みに戻ると、話題を切り替えた。
「そういえば、あの人たち元気? この間一緒に歩いてたハーレム」
「ハーレムじゃない。仕事仲間だ」
俺は即座に訂正する。どうせ兄貴の方には俺たちが全員異端審問会の人間だと割れているのだ、こいつも兄貴を通じて知っているか、知らなくともそのうち知ることになっていただろう。
果たして彼女は、頷いた。
(124.146.174.76)
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85 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:17:50 TsTNbbBIO
「そうみたいね、兄貴から話を聞いたわ。……ところでその兄貴、あなたとあのお姉さんが付き合ってないって話を、異様に信じてるんだけど」
……まずい、ばれたか。
内心冷や汗をかきつつ、俺はしらをきる。
「異様に……って、どういうことだ?」
「今度はあなたがとぼけないで答える番よ」
彼女は俺を、きっと睨む。その鋭い目つきが、嘘は許さないと断じている。
「普段はあの兄貴、こういうことに関しては結構疑り深いのよ。シスコンですからね。ただ、今回に限ってはあなたたちを完全に信用していたわ。それも説得されて、って形じゃなくて、ほぼ無条件に。何故かしらね?」
「それは、だな……」
俺は体のいい返答を考えようとするが、彼女の眼光がやいやいと責め立ててくる。……正直に言うしかなさそうだな。
「ローラ……『お姉さん』の方が、自分の言葉を信じこませる能力を持ってる。それでだ」
あの時、なんだかんだ言いながらもローラは俺の意を組んでくれたのだ。
すなわち、あの深淵検死官に、俺たちが別に恋仲でもなんでもないということを、手っ取り早く信じこませること。俺としては、彼の報告でそのままこの女もそれを信じてくれはしないかと思っていたのだが、現状を見るからに甘い期待だったと言わざるを得ないだろう。
「あら、そうなの。じゃあ、何故そんなことをしたのか、聞かせてくれる?」
彼女の視線が、一層きつい物となる。ああ、どう見てもこれは怒ってるな。
(124.146.174.75)
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86 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:19:21 TsTNbbBIO
「……おまえの言う通り、あいつは俺たちの言うことなんか信じそうになかったんでな。手っ取り早く済ます為だけだ」
ついでに言うと、おまえも信じてくれたら余計良かった──とは、口が裂けても言えない。
彼女はこの間のローラのように腕を組んで、ふんと鼻を鳴らした。
「本当にそれだけかしら。……まあいいわ、今ならあのお姉さんもいないことだし、直接あなたに聞きましょう」
一言一言発音するように、彼女はゆっくりと、だがはっきりと俺に訊く。
「本当に、付き合ってないのね」
「……ああ」
俺は、頷いた。
「付き合ってない。誓ってだ」
「……なら、いいわ」
彼女は、ほっとした表情になった。
「いえ、別にあたしは、今となってはあなたが他の誰かと付き合ってても構わないのよ。……ただ、この間嘘をつかれたんじゃないかと思うと、どうしても気になって」
……ああ、そうだった。
こいつは嘘をつかれるのを特に嫌っていたんだった。
全く、俺を欺くという任務についておいて、何自分勝手なことを──いや、そういう任務があったからこそ、嘘をつかれないかという恐怖があるのか。
虚偽の代償を受け取りはしないかと。
「……にしては、随分簡単に信じるんだな」
俺の疑問に、彼女はにっこりと笑った。
「昔愛した人ですもの。あなたを信じるわ」
「あ……そ、そうなのか」
……何故だろう、臆面もなくはっきりとそう言われると、こちらが赤面してしまう。
「じゃ、これから彼女できたら報告してねー。一緒に恋バナでも楽しみましょう。それではまた今度」
にこやかに片手を振ると、彼女は人ごみの中へと消えて行ってしまった。
恋バナって……俺は女子じゃないんだが……
(124.146.174.75)
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87 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:21:07 TsTNbbBIO
「みぃつけたぁー」
「う、うわっ!?」
不気味な声と共に突如背後から抱きつかれ、思わず俺は情けない声を上げてしまった。
「ロ、ローラ……悪ふざけはよせ……」
「あら、いーじゃないこれくらい。カップルだったら当たり前よー?」
「っ!?」
ぎくり、と体が硬直する。
「おまえ……俺みたいな年下は興味ないみたいなこと言ってなかったか……」
顔は見えなかったが、ローラがにんまり笑った雰囲気がした。
「あら、坊やだからこそ大人の魅力でめろめろにしてあげたいとか思うものよお姉さんは? うろちゃん可愛いし」
「やめろ! 絶対やめろ! 俺の意志を尊重しろ?」
「……あら、随分と拒否するのね」
すねたように言うと、ローラはするりと俺から離れた。
「いいわよ別に、うろちゃんは遊び要員だもの。こうやって遊んでる方が面白いわ」
「……ああ、そう……」
遊びでこんなことしないでくれ。心臓に悪いから。
「で、説得はできたの?」
説得? と俺の脳内は一時停止したが、すぐにその意味するところを理解した。
「ああ……見てたのか」
「今度は途中あたりからね。邪魔したらまずいかなと思って、割り込まなかったけど」
そうか。それはありがたい。
(124.146.174.75)
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88 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:22:00 TsTNbbBIO
「説得……できたよ。というか、説明したら納得してくれた」
「そ」
ローラは軽く頷いた。
「聖検死団の人間だからどうかとは思ってたけど、結構いい子じゃない。随分信用されてたのね、あんた」
「……みたいだな」
根はいい奴……なんだろうけどな。あいつも。
訣別した過去こそ、戻らないけど。
「さて……もう、用事ない?」
物思いにふけっていたのもあって、優しげな声音につい、頷いてしまう。
そして次の瞬間、激しく後悔した。
「よっし、今日はまた『フレーシュ』行くわよ! 今ならチーズケーキ一つにつき、紅茶一杯ついてくるんだから! あ、勿論うろちゃんの奢りね!」
「おい、また奢りかよ……」
「当たり前よ、この間あの検死官兄に信じこませるの、手伝ってあげたじゃない! 手伝ってって言うか、ほとんどあたしの手柄よね! そのお礼を返そうとは思わないの!?」
……ああ、俺は何故こいつに借りをつくってしまったのだろうか。
「だいたいあんたね、普通に玄関から出てきなさいよ! あたしとエリーに待ちぼうけくらわせて、なに、もしかして窓とかから脱出したの!? ほんとたち悪いわね!」
……玄関に陣取ってるおまえらの方がたち悪い。
あの女も、こんな家から近いところで会ったということは俺を待ち受けていたのだろうが、玄関にこいつらが陣取っていたもんで、ちょっと離れたところにいたのだろう。
つくづく迷惑な奴らだ。
(124.146.174.75)
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89 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:23:30 TsTNbbBIO
……そう思っているうちに、迷惑な奴第二号が到着した。
「あ、うろにー、やっとみつけたー!」
どんっ、とエリーが弾丸のように抱きついてくる。
「さいふよこせー!」
「ちょっ、待ておまえ! 財布さえあればいいのか! うわ、ポケットをまさぐるな! 手ェひっこめろ!」
「あ、さいふー!」
エリーが手をわたわたさせるが、流石に腕を高く伸ばした俺の手の内にある財布には届かない。が、背後からの刺客がそれを奪い取った。
「……あっ!」
「ひい、ふう、み……ま、これだけあったら一人二個は余裕ね。さ、行くわよ」
「うんー!」
呆然としている俺を尻目に、二人の盗賊はずんずん歩いていく。ああ、俺の財布……
と、ローラが足を止めて振り返った。
「なにぼーっとしてるのよ、うろちゃん。ほら、行くわよ」
「……俺も、行くのか?」
呆然としたまま訊く俺に、ローラも不思議そうな顔で答える。
「そりゃ一応うろちゃんのお金なんだから、一緒に行くでしょう。なに、チーズケーキ嫌い?」
「いや、嫌いじゃないが……」
なおも動かなかった俺の手を、エリーが引っ張る。
「うろにー、一緒にいこう?」
「……ああ、うん」
小さな手に引かれて、俺は一歩を踏み出す。その一歩は続いて行き、すぐに三人で並んで歩きだした。
「そういえば、『エトワール』に新しいメニューができたそうなのよ。『フレーシュ』を出たら寄ってみる?」
「うん、行きたい!」
「おまえら、次から次へとよくそれだけ食えるな……」
「甘いものはいくらでも入るのよ、特に美味しいものだとね」
「ねー!」
「……そいつは羨ましい限りで」
──ふと見上げると、雲一つない青空が広がっていた。色とりどりの屋根が青空を彩っていて、商店や大道芸人の周りでは人が活気づいている。街をぶらつくには、申し分ない一日だった。
青天の下、俺たちはにぎやかな街の中を、楽しみながら一緒に歩いていく。
【了】
(124.146.174.76)
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90 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/02 05:25:38 TsTNbbBIO
ようやく審問官小説、終了です。もう夜明けの時間になってしまっていますが(汗)
自分で予想していたよりも長くなってびっくりです。このスレの半分くらい使ってしまっている気が( ̄□ ̄;)
投稿期間もしょっちゅう間が空いてしまって、申し訳ありませんでした。
それでは、やたらと長い文章でしたが、最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました!
(124.146.174.75)
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91 :にぅ名無しさん
投稿日:11/03/02 19:12:51 4ZgGQdh+O
>◆Nq5PNg/rCwお疲れさまでした!大変楽しく読ませて頂きました!*
審問官SS、間の取り方も絶妙というか、わくわくしながら毎回主さまの投稿を待っておりましたw
期待通りどころか期待以上の、素敵な作品をありがとうございました!素敵な作品に触れまして、描きたい欲がうずうずしています。また審問官ズを描かせて頂くかもです^^*
と言うことで、次回作も大変楽しみにしry
(111.86.141.83)
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92 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/03 14:08:58 5oedG5vrO
>>91さん
ご完読、本当にありがとうございます!(*´∀`)
そして、ちょくちょくお待たせしてしまってすみませんでした(;・ω・)
以前は仲良し審問官ズを、ありがとうございました!こちらこそしょっちゅうイラストで楽しませて頂き妄想が尽きません今度は制服の審問官ズなども見てみた(ry
次回作、書き上がりましたらまた投下させて頂こうと思っています。いつになるかはわかりませんが……(^^;)
またご期待に添えられるような小説が書けたら、と思っています。そうできるよう、頑張ります(≧∀≦)
(124.146.174.18)
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93 :
鈴の小道◇番外編◆vLYx.hjvdE
投稿日:11/03/11 01:03:42 ???
>>90お疲れ様でした!トリオに兄妹、それからウロ兄の財布っぷりにニヤニヤしながら読ませていただいてました。また次回作を楽しみにしてます!ぜひお願いします!
一覧表の話もありましたので、前回の小説に「鈴の小道」と題名をつけました。そういえば題名つけてなかったんだな…。そして今回はそんな鈴の小道の番外編SSSです。超短い滅亡理論くんと黒猫幾何ちゃんの会話文ですが、よろしければお付き合いを。
◆◇
「おいコズミ、ジュース奢ってやるから選べ」
「コーラ」
「了解…お?当たった。やったねーもういっぽーん」
「…当たった?」
「ああ。何か欲しいもんあるか?」
「サイレン、が、選んだらいいよ…」
「お前ので当たったんだからお前が選べばいーの。無いならいいけど」
「…じゃ、あ、ココア…が」
「ココア?お前嫌いじゃなかった?」
「…いいの」
「まあ好き嫌いはよくないからな。ほれ」
「…ありがとう」
「いいえー」
「(…これどうしよう)」
◆◇
またベタベタで自分の発想力の無さに失望しました^^
読んでくださった方、ありがとうございました!
(121.111.231.102)
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94 :
◆0gE85SI5tw
投稿日:11/03/11 22:00:00 ???
久々の投下だ…
団長「君も彼の異常性を目の当たりにしたはずだ」
団長「…驚異的な身体能力、運ばれてきた時には殆んど塞がっていた傷、著しい体力の消耗…」
センチタソ「…はい、しかし私にはわかりません…」
団長「…いいや、君は知っているはずだ。」
センチタソ「…結局、団長は何を仰りたいのでしょうか?」
団長「わたしは…わたしは君に考えて欲しいだけだ。」
センチタソ「…なにを」
団長「彼と君自信の事を、だ」
(123.108.237.28)
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95 :
◆0gE85SI5tw
投稿日:11/03/11 22:04:01 ???
団長「……君は…なぜここにいる?」
センチタソ「…?団長がお呼びになったからでは?」
団長「そうではない…なぜ彼のところへ戻らない」
団長「違うな…なぜ彼は君を呼ばない」
センチタソ「…?」
バンっ!!
団長「…ふぅ、部屋に入る前はノックをするのが礼儀だぞ?」
男「人の能力を連れてく時には一言断るのが礼儀ですよ?」
センチタソ「マスター!」
団長「すまなかったね」
男「その話しはまた後程、貴方には他にも聞きたいことがありますしね…帰るよ!センチタソ!」
センチタソ「は…はい!」
センチタソ(なぜ呼ばない…)
(123.108.237.29)
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96 :
◆0gE85SI5tw
投稿日:11/03/11 22:08:58 ???
スタスタスタ
センチタソ「あの…マスター…」
男「ん?なんだいセンチタソ?」
センチタソ「…あの……目を覚ましてよかったですね!」
男「うん、看病ありがとねセンチタソ…ところで」
センチタソ「はい」
男「…団長となにを話したの?」
センチタソ「…その…なぜ、なぜマスターは…」
団員「おっ!男!団長には会えたか?」
センチタソ「黒さん!」
黒「やあセンチタソ、男の目が覚めてよかったね」
男「さっきはありがとな」
黒「うむ…あ、そうだ!桃姉が、「用が終わったら医務室に来なさい」だってさ」
男「そうか、わかった。行くよセンチタソ」
黒「あ、俺も行くよ。用事あるんだ」
スタスタスタ
医務室前
男「桃さん、入りますよ?」
ガラッ
桃「ようやく来たわね、まだ治療終わってないんだから。」
男「すみません」
黒「あ、僕は今度の任務の件で話したいことが…」
桃「あら、黒ちゃん…そうね、じゃあ男くんの仕上げが終わってから聞こうかしら。」
黒「それで構いませんよ」
桃「じゃあ男くん、入ってちょうだい。…あ、ドールちゃん達は外で待っててね?」
センチタソ「え…」
桃「あら?それとも男くんの裸が見たいのかしら?」
センチタソ「!外で待ってます!////」
桃「あらあら、可愛いわねぇ…」
(123.108.237.3)
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97 :
◆0gE85SI5tw
投稿日:11/03/11 22:11:09 ???
桃「…で、様子はどうだったの?」
男「まだ…なんとも、一体どこまで話されたのかも…」
桃「そう、…あまり彼を責めないであげてね…」
男「…」
桃「先日…新たな『シックス』が確認されたの…」
男「!!…」
桃「…だから彼も必死なのよ…」
男「でも!」
桃「そうね、確かに今回のはちょっと暴走気味だと思うわ…でも彼の気持ちも汲んであげて…」
男「…桃さんがいうのでしたら…」
桃「さて…と」
(123.108.237.29)
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98 :
◆0gE85SI5tw
投稿日:11/03/11 22:13:27 ???
桃「…二人を呼ぶ前に大事な話を2つ程しましょうか」
男「…そうですね」
桃「まずは貴方のこと…身体の傷の方は相変わらず驚異的な回復力ね、すでに痕すら残ってないわ」
男「…まあ、元々丈夫ですから」
桃「もう片方は…」
男「…そろそろ限界…ですかね?」
桃「そうね…いえ、どちらかと言えば『既に限界』かしら…」
桃「はっきり言いましょう。あと二回がデッドラインよ、それ以上は…保証出来ないわ。」
男「そうですか…」
桃「もう…私の能力でも補いきれないわ…ごめんなさい」
男「謝らないで下さい、桃さんが居なかったらもうとっくに限界突破してますからね」
桃「…それと彼女のこと」
男「はい…」
桃「彼の…団長のやり方は確かに頂けないわ…ただ」
男「わかってます…時間がないことも」
男「彼女の記憶…意識は徐々に戻りつつあります…最近は特に」
とりあえずここまで
(123.108.237.30)
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99 :
◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/18 16:21:56 ???
小説スレが更新されていたことに全く気づかなかった\(^o^)/
お久し振りです、審問官小説の奴です。
>◆vLYx.hjvdEさん労いのお言葉、ありがとうございます! 光栄です!(*´∀`)
次回作は……実はもう考えてはいます、SSSでシリーズ物を予定してます。そしてグダグダ感満載です\(^o^)/
あと私の考えている黒猫幾何ちゃんが何故か電波娘です、なんで◆vLYx.hjvdEさんのような大人し可愛い子を思いつかなかったんだろう私は\(^o^)/
タイトルありがとうございます! また編集しておきます(`・ω・)ゞ
サイレンさんがいい人過ぎて好きだ。てか◆vLYx.hjvdEさんの大人組ってみんな人情味溢れてて(・∀・)イイ!
>◆0gE85SI5twさんこちらではお久し振りです! またご覧頂けるようになって良かったです(*^□^*)
そしてセンチタソの続きが相変わらず気になりすぎて夜しか眠れない!
さて、このスレもとうとう終わりということで、僭越ながら最後は審問官小説の番外編を投下して締めくくらさせて頂きたいと思います。そういえば私も自分で頼んでおきながら、『審問官小説』ってタイトルつけてない……(汗)
因みに番外編は、まだ付き合っていた頃のうろにーとクシーです。豆田さんのクシーにインスパイアされたんだぜ。
あと、らぶらぶなうろにーとクシーが書きたかった。反省はしているが後悔はしていな(ry
(202.229.178.1)
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100 :
◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/18 16:22:53 ???
いつものように彼女と街を歩いていた時、たまたま新しくできた服屋を目にした。俺自身は、特に着てみたいというものはなかったのだが、ふとショーウインドーでマネキンが着ている服に目が吸い寄せられ、立ち止まってしまった。
「ん、どうしたの? 可愛い店員さんでもいた?」
歩みを止めた俺に、彼女──クシーが、冗談混じりに囁く。いや、と首を横に振って、俺は目が止まった服を指さした。
「あれ、いいなと思って」
そう言うと、何故かクシーは嘆かわしいと言わんばかりに空を仰いだ。
「ああ……まさかマネキンに負ける日が来るなんて……」
「違うわ!」
「……女装癖なんてあったの?」
「それも断じて違う!」
なんで普通の思考ができないんだおまえは!
……俺は深呼吸して気を落ち着かせてから、彼女に説明した。
「おまえ、いつも衛生服ばかりだろ。たまには違う服とか来てみたらどうだ?」
んー、とクシーは少し考える。
「急患とかあった時、いちいち着替えてる暇ないでしょ。そりゃ衛生的には白の方が、病院に保管してるから清潔なんだけど、普段着にしてる桃色の方も毎日洗濯してるから、めちゃくちゃ汚れてるってわけじゃないし。それに、街で事故ったり倒れてる人のところに駆けつけたら、この服で衛生兵ってすぐわかってもらえて、それだけで安心してもらえる、ってのもあるのよ」
……なるほど、衛生兵としての意識の高さから来てるのか。なら、文句は言えないな。
ただ、少し残念だ、という俺の気持ちがそのまま表情に出てしまったのか、クシーは俺の顔を見てくすりと笑った。
「そんなに見たかった? あたしあの服着てるとこ」
「うん。だって似合うだろ、絶対」
俺がそう答えると、何故かクシーは固まってしまった。
「……? どうした、クシー?」
「あ、あなた……」
顔を真っ赤に火照らせた彼女は、ようやく言葉を絞り出す。だが、そこから先は立て板に水の如くだった。
「そんな台詞恥ずかしげもなくよくいけしゃあしゃあと言えるわね!? なんでそんなことさらっと言えるのよ聞いてるあたしが恥ずかしいわ! もしかして他の女の子にも言ってんじゃないでしょうね口説いてないでしょうねこの女たらしーっ!」
「え、えぇー……」
……褒めたつもりなのに、何故俺はここまでボロカスに言われなければならないんだろうか……
というか、この状況からの回復方法が思いつかない……
うーとかあーとか言いながら俺がまごついていると、クシーは口を閉じてふんっとそっぽを向いた。
「もういいわ、あなたがあたしにでれでれってことはよくわかりました! ええよくわかりましたとも!」
「……すみませんでした」
「なんで謝るのよ!」
なんでっておまえ……どう聞いても怒ってるようにしか聞こえなかったから……
しかし、一層怒ったような表情になって、彼女は俺の左腕に自分の右腕を絡める。いや、絡めると言うより最早締め上げるの方が近い。血が止まりそう。
「そこまで何か買ってくれたいんだったら、『メイズ』の鞄を買ってくれるといいわ! 鞄も服装の一部みたいなものだから問題ないし! あそこの鞄、耐久性高いし機能的みたいだし!」
「わかったわかった、買ってやるから落ち着け」
『メイズ』は確かブランド物で、値が張る品ばかりだったはずだ。……が、まあ、いいだろう。よく考えたら、付き合い始めてから食事を奢るとかはともかく、何か品物を買ってやるということはしていなかったのだ。これくらいはしてやらないとな。
クシーはむすっとしたまま、俺の腕をぐいぐい引っ張る。その頬にはまだ赤みが差していた。そんな彼女がなんだか可愛くて、俺は少し笑って彼女と歩調を合わせた。
【了】
(202.229.178.1)
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101:Over 100 Thread
このスレッドは100を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
あなたの来るのが遅すぎたのよ…このスレッドはもう100を超えたわ…
゚/⌒⌒丶
( _ノヾ) ☆。.:*・゚
O ・_・ノ)
/^ ¥ ^\ ☆。.:*・゚
7 ヽノ ∧_∧
`~~~`☆。.(・∀・ )
UU ⊂ ⊂ )
☆。.:*・゚ (_(_つ
。・
☆・゚新スレを立てればいいじゃないか
にぅ板vip
http://mbb.whocares.jp/mbb/u/niuvip/
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